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かわいそうなくらい、げっそりしてる将軍と並んで、あたしは宿舎に戻ってる。
あの数値があったら、あたしの正確な立体像ができそう。そのくらい細かく測ったのって、何か理由があるんだろうけど……今の将軍には、何となく聞けない。エレンさんなら知ってると思うけど、行くまでに迷子になるから無理。
うーん……男の人でも、下着姿見られるのって嫌なのかな? 将軍って、あたしには、結構眼福だったんだけどなぁ。
やっぱ強い人って、ちゃんと鍛えてるよね。父さんもお兄ちゃんたちも、イハル兄も、がっちり筋肉ついてるし。
将軍も、普段は鎧でよくわかんなかったけど、見たらなかなかだったよ。父さんほどじゃないけど。でも、お兄ちゃんたちやイハル兄とだと、勝敗に悩むくらいにはしっかり。
ってか、あたしがジロジロ見てたら、最後にはドリスまでため息ついてたんだけど……どういうこと?
ホントは、腕でいいからちょこっと触ってみたかったけど、すっごく頑張って我慢したんだよ? 街に行った時は、ちょこっと触ったけど、全然覚えてないし。
あれがイハル兄だったら、きっと触ったんだろうけど……将軍だから。他人だし。
ふと思いついて、パチン、と手甲の留め金を外して、あたしは自分の左腕をジッと見てみる。ついでに、ぷにっと腕をつまんでみた。もひとつついでに、手首もキュッと握ってみる。
うん。グレースのが、あたしより絶対細い!
「……何を、しているのですか?」
何か、将軍にすっごい呆れられてる。そんな声。
「んー? グレースとかリディとかシーラに比べたら、やっぱあたしのが体がしっかりしてるし、ちゃんと筋肉あるよね? って思って。エレンさんと比べたら、さすがに負けそうだけど」
重い槍ブンブン振り回したり、将軍の顎つかんで片手で向き変えるとか、あたしには無理。まあ、そもそも、将軍の顔に手が届いたとして、そこまで力入んないけどね。
「エレンは、根性と年季が違いますからね。女性の細腕であそこまで鍛えるには、相当の努力と執念があったと思いますよ」
……今、褒め言葉っぽくない単語が混じってなかった? あー、でも、エレンさんだと褒め言葉に……なるかなぁ?
それにさぁ、あたしがこれから四年頑張っても、多分、エレンさんと同じくらいにはなれないと思うんだよね。そういう意味では、エレンさんは尊敬に値するよ。
「今度、エレンさんの腕、触らせてもらおうっと。ホントは、将軍の腕も触っておきたかったけど」
で、父さんとかイハル兄とかと比べてみたいんだよね。
ちなみにあたしは、カノ姉よりは筋肉あるよ。リノ姉には負けるし、シノ姉にはもっと負けるけど。
「……触ってみますか?」
「へ?」
えっと、あたしの聞き違い? 幻聴?
バッと将軍を見上げたら、ニッコリ笑ってた。で、もう一回同じこと言った! やった! あたしの聞き違いとか、幻聴じゃなかったんだ!
「いいなら、触る! 触らせて!」
とりあえず、服の上から、将軍の右腕をそっとつつく。
うん、硬い! いい硬さだね!
つつくのはやめといて、今度は両手でガッとつかんでみる。ガシガシつかみながら、肩から手首を行ったり来たりしてみた。
全体的に硬いね! うーん、この感じだと、イハル兄と同じくらい? 将軍、強いわけだよねぇ。
リアムとかベネットでも、ここまでじゃなかったはず。
「騎士様に見えない将軍でも、こうだもんねぇ……」
やっぱ、男女の違いって大きいのかな? いやでも、シノ姉とかエレンさんみたいに、超越しちゃう人もいるし……うーん。
「……騎士に、見えませんか?」
「戦場ではちゃんと騎士様だけどね。そうじゃないとこだと、鎧着てなきゃわかんないかも。パッと見、ふつーの爽やかでカッコイイ男の人って感じだし」
ちょっと沈んだ声の将軍に聞かれて、あたしは素直に答えてみる。
「イハル兄は、どこにいても、どんな恰好でも、傭兵だなって思うけどね」
何だろ……眼光とか、雰囲気とか、まとってる空気っていうのかな? そういうのが、もう全然違う。
そういえば、将軍と街に行った時、イハル兄みたいにあれこれ疑われなかったっけ。
あれ? ひょっとして、あたしとイハル兄だと、おかしく見えるってこと? 同じ色の髪と目なのに? っていうか、イハル兄ってば、何にもしてなくてもそんだけ殺気出てるってこと?
「うーん……」
ぷにっとしたとこのない、ガッチガチの将軍の腕を、あたしはひたすらもんでみる。
さっき見た時思ったけど、将軍、お腹も胸もすごかったんだよ。ホント、眼福。ちょっと触ってみたかったけど、さすがに、胸とかお腹は無理だよね。
しょうがないから、宿舎に戻ったら、ユウガ兄のを触らせてもらおうっと。
解放軍に参加する前は、ユウガ兄、ちょこっと無駄肉ついてたからさぁ。この一年弱で変わったのかなって、気になるじゃん?




