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マーハルニーファから帝国兵がいなくなって、数日。
昨日は、王女様が女王様になった。
今までの王様は、メッチャ派手な戴冠式をやったんだって。でも、王女様は、これからお金がかかるからって、とことん地味な戴冠式だった。
街もお城もボロボロだし、簡単にササッと終わらせるのがいいのかもね。
で、今日は、ガイルファラから、皇帝の名前で和平の申し入れがあったんだって。
あたし、将軍に、何回も「ホント?」って聞いちゃったよ。だって、あの帝国だよ? 和平ってだまして呼び出して、王女様……っと、女王様だっけ。女王様を殺しちゃうかも、って思ったんだもん。
んでも、ホントなんだって。それも、皇帝がこっちに来るんだって。
調印式? っていうの? 何か、和平の条件とか紙に書いて、お互いにサインして、それぞれに保管するんだって。それを、今やってるとこ。
父さんとイハル兄とグレースと将軍は、護衛ってことで、その調印式ってのを見てるはず。
終わったら、どんなだったか教えてもらうんだ。
……そういえば、何で王女様は、王女様だってわかったんだろ? ま、いっか。後でまとめて聞いてみよっと。
グレースかイハル兄を探してたんだけど、最初に見つけたのは将軍だった。
この際、将軍でもいいや。
「ねね、将軍。調印式? って、どうだった?」
「ごくありきたりに進みましたよ。条件としては、こちらが大いに有利なものですが……現皇帝が在位の間のみ、ということになりそうですね」
む、それは、そうかも。
ガイルファラってのは、玉座を簒奪する国だもんね。一度は落としたマーハルニーファを、さっくり取り返された。そんな皇帝が、長々と帝位を維持できるとは思えないし。
だけどさ、やっと、安心して暮らせるわけでしょ? 短くても、平和なんでしょ? それはそれとして、素直に喜ぶべきじゃん?
「まあ、皇帝が変わって、また攻めてきたら、もっかい追い出せばいいっしょ」
父さん、マーハルニーファ宮廷騎士団の、歩兵部隊長になるんだって。つまりあたしも、同じとこに所属するわけ。
イハル兄はまだ返事してないらしいけど、残るって決めたら、グレースやリディとも、しばらく一緒。
ちなみに、将軍は騎馬部隊長で、宮廷騎士団の総大将。これからも、将軍のまんまなんだって。父さんも、隊長って呼ばれるままかな? それとも、何か違う呼び名になるのかな?
あ、母さんとユウガ兄は残るんだって。んでも、トウガ兄はよそに行くんだって。カノ姉は、まだ聞いてない。多分、残ると思うけど。
これからは、あたしも宮廷騎士団の一員。だから、この国がピンチになった時、守るために戦うんだから!
「何度でも追っ払ってやれば、そのうち諦めるっしょ。戦う人間は、湧き出てくる水とは違うんだしさぁ」
まあ、それは、こっち側にも言えることなんだけどね。
「そうですね。ですが、その前に、生活を安定させる必要がありますよ」
「あー、うん、そうだね。不安があると、やっぱ前向きになれないし。食べ物に困んないで、毎日元気に生きてけなきゃ、やる気もでないよね」
特に、食べ物って大事だよ? お腹空いてたら、戦えないもん。
「あなたは、本当に食べることが好きなんですね」
「当ったり前じゃん! しっかり食べてたくさん寝なきゃ、元気でいられないっしょ?」
ふふっ、って感じで、将軍に笑われた。ちょっとだけ、笑い方がエレンさんに似てる。
でもさぁ、最初の仏頂面に比べたら、今の将軍のが断然親しみやすい。笑われようが怒られようが、全然気になんないし。
あ、でも、女の子扱いされるのは、ちょこっと苦手。そういうの、あたしの柄じゃないし。何か、体中がもぞもぞしてかゆくって、恥ずかしいから。
……だから、たまーに出てくる騎士様っぽくない将軍も、ちょっとだけ、苦手。
あ、そうだ。
「ねね、将軍。将軍は、王女様が何で王女様だってわかったか、知ってる?」
「……聞いていないのですか?」
「うん。父さんがあーだこーだ言ってた時、あたし、ドナを見てて聞いてなかったんだよね」
将軍に、すっごい微妙な顔で、メッチャ乾いた笑いをこぼされた。
しょうがないじゃん。あの時、初めて間近で竜を見たんだから。ついでに、エレンさんにプロポーズされて、鼻血だ何だって言われてさぁ。王女様の話なんて、全っ然これっぽっちも聞いてなかったんだもん。
ってか、あの時、父さんも王女様もアルヴィン様も、エレンさんを止めてくれなかったんだけど……どういうこと?
「陛下に直接尋ねれば、教えてくださると思いますよ。知っている人間が多い方が、陛下も安心されるでしょうし」
「へー。んじゃあ、今度聞いてみるね」
将軍の口振りだと、割と簡単にわかるっぽいね。何だろ? みーんな同じ場所にほくろがあるとか、そういう感じかな?
「あ、じゃあさ、将軍は、見分け方知ってんの?」
「知っています」
「へぇ……あたしでも、すぐわかって覚えられるかな?」
「誰が見てもはっきりわかりますし、大変覚えやすいと思いますよ」
爽やかにニコッて笑って、将軍は太鼓判を押してくれた。
相変わらず、将軍って、鎧がないと騎士様だって思えないよね。イハル兄は、革鎧がなくっても傭兵だって思うけど。
何ていうか、雰囲気が、戦う人って感じしないんだよね。あ、もちろん、戦場だとちゃんと騎士様だよ? でも、こうしてると、顔がカッコイイだけの普通の男の人が、鎧着てるみたい。




