表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/128

41

 闇の魔法がドンと落ちて、そこに他の魔道士(プラエカンタートル)たちが、風とか炎とか(いかずち)を叩き込む。

 ぶっちゃけ単調作業だけど、城郭の上の敵は、ほとんどいなくなった。

 何となーく、何となくだけど、エミールがかなりやっちゃった気がしてる。多分、魔力空っぽで帰ってくるよ、あの子。

 で、空から魔法が降ってこなくなったら、あたしたちの出番。ふっとい丸太で、門の閂を力任せに壊すって寸法。

 最初は、魔道士にやってもらうってのも、考えてたんだって。んでもさ、魔道士には、上の敵に集中して欲しいじゃん? 余力があったら、街ん中でも頑張って欲しいってのが、やっぱあるし。

 ってことで、門は魔道士以外で頑張るってことになってる。……ううん、なってた。

 いざ、壊そうってとこに、上からドスンとドナが下りてきて。そこから、エレンさんに抱えられたグレースが、ふわっと下りて。

「グレース!」

 イハル(にぃ)が呼んだら、グレースはちょこっと振り向いて、ふんわり笑った。

 すぐにグレースは門を向いて、右肘を軽く曲げて、手のひらを空に向ける。一度キュッと握った手を開いて、ジッと見つめて。

すべてを包む炎よ(テル フラムマ)!」

 うっそ、上級!? いつの間に!?

 グレースの顔と変わんない大きさの炎が、ブワッて出てきた。それを、ひょいって感じで、門に向かって滑らせてく。

 今度は右手を肩にグッと寄せた。

 あたし、知ってる。あれ、風の魔法を使うための、準備なんだよ。いっつもエミールが、やってるから。

すべてを切り裂く風よ(テル ウェントゥス)!」

 こっちも、上級なの? グレース、すごすぎ。

 肩に寄せてた手を、グレースは門に向かって勢いよく振り払う。

 先に門に向かってた炎に、足の速い風が追いついてぶつかって。

 どっかーん!

 ちょうど門の近くで、炎と風が混ざって大爆発。

「うっわ……すっごいね……」

 門は粉々。木っ端微塵。煙だか埃だかの中に、チラチラ木片が飛んでるのが見えてる。

 かろうじて残ってる蝶番は、結構大きい。その辺の門扉もちょこっと残ってて、やっぱ門扉はかなり分厚かったのがわかった。

 あたしの人差し指と、どっちが長いかな? ってくらい、分厚そう。

 ……あんなのを、一撃でやっちゃうって……ホント、グレースって、すごいけど怖い。エミールとどっちが、って悩むくらい、メッチャ怖い。

 あ、うん、普段のグレースは、可愛いよ? 怖くないよ?

 でも今は、グレースのすごさに、敵も味方も、みんな固まってる。

「かかれ!」

 父さんの声で、何かシャキッと目が覚めた気分になって。背筋が勝手にピンと伸びて。気がついたら、剣を抜いてて、足が前に出てた。

 一番に街へ駆け込んだ父さんに、ちょっと遅れてあたしも飛び込む。

 あたしの斜め後ろに、将軍。

 他の隊とか騎士(エクエス)様たちも、どんどん流れ込んでくる。

 シャラガラの街には、石造りの家がズラッと並ぶ。窓は大きくて、通りは整然としてて。でも、三角屋根の王都と違って、屋根がぺたんこ。その辺は、多分ガイルファラの影響。

 ここは、両方が混ざった、独特な街並みなんだって。

「闇夜を切り裂く、月のごとく!」

 いびつな三日月が、キラッと光って消えた。前にいた帝国兵が五人くらい、いっぺんに吹っ飛んだ。

 さっすが、父さんの奥義だね。

 でも、帝国兵は怯まない。吹っ飛んだ仲間をギュッと踏みつけて、こっちに来る。

 あたしの左から、フラッと一人。

「夜空に瞬く、星のごとくぅ!」

 軽く剣を握り直して、そいつに向かって剣を何度も突き出す。最後の一撃で、吹き飛ばして終了!

 すぐ後ろで、将軍も槍を振り回してる。奥の方の敵には、まだ魔力が残ってる魔道士が、竜に乗って攻撃してるっぽい。

 そういえば、帝国側の魔道士って、どうしてるのかな? ひょっとして、みんな城郭にいて、死んじゃったの? それとも、国に引き上げてるとか? んー……これで負けたら終わりってわかってるし、引き上げるなんて選択肢、ないよね? やっぱ、片づけられちゃったのかな?

「夜空に瞬く、星のごとくぅ!」

 上の方で剣のきらめきが見えたから、とっさに奥義を使ってみた。

 うー、鎧って、やっぱ硬いよね。ちょっと、手が痛くなってきたんだけど。

「無理はしないようにしてくださいね」

 左手で剣を持って、ブンブン手を振ってたからかな? 将軍が心配してくれた。

「へーきへーき。鎧が硬くって、ちょこっと手が痛くなっただけだから」

「手を痛めないよう、気をつけてください」

 将軍に少し強い口調で言われるの、初めてかも。

 そりゃあ、ちょっとくらいはびっくりするけど、嫌ってことはないね。何でだろ? 将軍だからかな?

 フッと、敵が見えた。あたしの剣は、左手のまんま。

 さすがにヤバいって焦った。で、持ち替えようとして、うっかり剣を落っことして。ますます慌ててたんだけど。

 ガキン、ってすごい音がして、将軍の槍が相手の剣を叩き折ってた。そこに、父さんが奥義突っ込んできた。

「将軍、父さん、ありがと!」

「油断するな!」

 父さんに叱られて、将軍には微笑まれて。……ってか、将軍って、こういう時に何で笑うんだろうね。やっぱ、二重に叱ってもしょうがないから、なごませるためとか?

 ……あたしってば、ひょっとして、メッチャ子供扱いされてる?

 そんな調子で助けてもらいながら、バンバン奥義を使って、あたしは帝国兵を吹っ飛ばしてく。父さんも将軍も、すごい勢いでなぎ払ってる。

 気がついたら、立ってる帝国兵はいなくなってた。

 こっちにも、やっぱり被害は出てる。僧侶(クレールス)たちが一生懸命、ケガの治療してる人は無事。でも、そうじゃない人もいる。

「片がついたようですね」

「だね。まあ、完全無傷ってわけにはいかなかったけど……勝ったんだよね?」

「潜んでいる帝国兵がいないかを確認し、それからの勝利宣言でしょうね」

 あ、そっか。まだ、確認しなきゃいけないんだっけ。

 残兵処理して、死体を全部追い出して。それでやっと、勝ったって言えるんだね。



 シャラガラの街の中を、隅々まで見て歩く。それこそ、絨毯をはがして地下室がないかとか、壁を叩いて隠し部屋はないかとか。埃だらけの天井裏まで、きっちり調べてみた。

 そんだけやって、ホントに帝国兵がどこにもいないってわかって、やっと。誰からってわけじゃなくって、ワッて歓声が上がった。

 そんでも、帝国側の城郭は、ボロボロでほとんど残ってない。国境の川と、帝国領へ続く石橋、それに、向こう岸に集まってる帝国兵が見える。

 防衛って意味では、全然意味がないけど。

 んでも、マーハルニーファから、一人残らず帝国兵を追い出した。それは、多分、すっごく大きい。

 これから、王女様が女王として即位して、ここと王都の復興を最初にやるんだろうなぁ。んで、その後、国全体の復興。

 父さんは、これからどうするんだろ。報酬もらって、またどっか行くのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ