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「今すぐ出陣の準備をしろ。昼刻には出撃するぞ」

 昨日の今日で、父さんにそう言われた。

 ってことはだよ? グレース、魔法使うって決めたんだよね。……大丈夫なのかな? あーでも、吹っ切れてないと、多分グレースは無理だろうし。

 戦い方、見つけたのかな?

 急いで準備をして、あたしは天幕から飛び出す。

 グレースはエレンさんとドナに、エミールは、ベネットと竜に乗るんだって。あたしは下でそれを見てる。んで、上があらかた片づいたら、みんなで門を壊して中に入るって寸法。

 そこまでは、作戦として聞いてる。

 中に入ったら、きっと混戦になるよね。魔道士(プラエカンタートル)は、上からの攻撃でほとんど魔力残ってないだろうし。あたしも、ぜーんぶ終わった瞬間に力尽きるくらい、全力で頑張らないと!

 もう、後のことなんて考えないで、奥義使っていいしね!

 ふと見上げた空は、どんより曇ってる。空気も、何となく湿っぽくてベタッとしてて。最後って気分になる、嫌な感じだね。

 バサッて羽音に目を向けたら、ドナだった。

 ドナって、他とちょっとだけ色が違うから、ひと目でわかるんだよね。お腹の色が、他よりかなり薄いから。見た感じ、ドナが一番高いとこにいるっぽい。

 戦いが始まって、すっごい風がビュンって飛んでく竜がいたら、それがベネットの竜じゃないかな? 乗ってるの、エミールだし。

 風の上級使えるの、エミールだけだから。

 魔道士たちには、開始の合図が知られてるみたい。でも、あたしたちにはわからない。

 みーんな、ぽかーんって口開けて、ぼんやり空を……ううん、十数匹の竜たちを見てる。それは、シャラガラの帝国兵も同じ。

 いきなり、ドナの上で、ピカッて光った。太陽何個分? ってくらい、眩しい光。まぶしくって目がクラクラするー。

 きっとあれが、グレースの魔法だ。んでもって、開始の合図じゃないかな?

 敵はほとんど、上を見てたはず。嫌でも、今の光、見ちゃっただろうし。くらんでるうちに攻撃すれば、当てるのなんて簡単じゃん?

 ……あー、あれ、ベネットの竜だ。すっごい風が、ビュンって飛んでったから。割と低いとこにいるんだね。ギリギリ、敵が狙えない微妙なとこにいるみたい。

 ホント、向こう側に攻撃するんで助かったよね。逆だったら、とんでもない死体が、こっちにゴロッて落っこちてくるかもしんないじゃん? エミールなら、平気でやりかねないし。

「始まりましたね」

 思わず、ビクッてなった。

 いや、だって、今まで気配なかったし。ってかさ、将軍、いつの間にそこに来たの?

 目の端っこで、黒いものがヒューって落ちた。

「あ……」

 巨大な黒いもやもやの固まりが、もう一回、ドンって落ちてくる。

 初めて見たけど、あれが多分、闇の魔法。ってことは、グレースかな? 王女様は竜に乗ってないはずだし。

 範囲にいた敵の姿、見えなくなっちゃった。端っこの、色が薄そうなとこでも、向こう側がよく見えない。中心の、色が濃いとこ。あんな場所にいたら、真っ暗すぎて、怖くて泣くかも。

 ……敵が混乱してる悲鳴が、メッチャ聞こえるんだけど。

「闇の魔法ってさ、何か、くるね」

 最初は、将軍にちっとも伝わってなかった。うん、これで伝わるの、家族とイハル(にぃ)くらいだし。

 でも、頭のいい人だから、すぐに察してくれたよ。

「ああ、あの中に閉じ込められるので、精神的な苦痛を受けますよね。何でも、自分の目の前に手を持っていっても、ほとんど見えないほどの深い闇だそうです。王女殿下も、どちらかと言えば、闇での攻撃を好んでいるようですから」

「……うん、まあ、目がくらむだけの光よりは、闇のがダメージおっきいよね……」

 あたしには特に、闇が効くかも。

 うんとチビの頃から、暗いとこ、メッチャ苦手なんだよねー。ほら、何か、変なの出てきそうじゃん?

 シノ(ねぇ)とかカノ姉が、寝る時にいっつも怖い絵本読み聞かせてくれたからさぁ。リノ姉とお兄ちゃんたちは、普通の絵本だったんだけど。シノ姉とカノ姉がさぁ……。

「……緊急事態でない限り、人を傷つけない。それを条件に、参加を承諾したそうです」

「──っ!」

 将軍は名前を出さなかったけど、誰のことか、すぐわかった。

 そっか。グレースはちゃーんと、自分なりの戦い方、見つけたんだね。

 人を傷つけない、なーんて、全部の魔法が使える、グレースらしい戦い方じゃん。

「そうだよね。あたしとかイハル兄とか、エミールとか、代わりにやれる人間がいっぱいいるし!」

 適材適所、ってやつだよね!

 まあ、帝国兵相手だと、あたしはやっぱ力不足なんだけど。

「……突入後は、私か、セイガ隊長の近くに、なるべくいてくださいね」

「ん、わかってるよ」

 一人でいたら、バンバン狙われるだけだもんねー。そのくらいは、さすがにわかってるよ?

 強い人の近くで、ちょこちょこ奥義使ってるのが、あたしにとっては一番安全だから。

 いつかは、シノ姉みたいに、一人で敵の中に突っ込んでって帰ってこれるようになれるかなぁ? ……やっぱ、無理。大剣振り回すのって、あたしじゃ絶対無理!

 だって、シノ姉の大剣ってさ、あたしの背と変わんないくらい長いんだよ? そんなの、持ち上げるのも大変だし、ブンブン振り回すって、まず無理じゃん?

 うん、まあ、あたしよりちょっと背の高いシノ姉は、平然とやってんだけどね。

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