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元々、シャラガラの城郭ってのは、とにかく分厚い。そりゃあ、国境を守ってんだから、当然なんだけどさ。
……ひょっとしたら、王都のより、頑丈で分厚いかも。
実際に見たら、そう思った。
あんなもん、のんきに壊してる暇も、人手も、心の余裕も。こっちには、これっぽっちもないって。
んでも、何か対策はしないとね。門を壊す間に、上から槍とか矢とか降ってきて、一方的にやられるだけだし。
だから、あたしでも、上から攻撃できて敵を減らせるなら。そんな方法が使えるなら、それが最善だと思うよ。そういう点では、王女さまやエレンさんを、責めらんない。
その辺は、イハル兄もちゃんとわかってるはず。
ただ、ちょーっと間が悪かったっていうか。
「まだ、その魔道士は承知しないのか?」
「王都で活躍したんだろ? 何が嫌だってんだろうな」
「そーそー。ここを解放したら全部終わるってのにさぁ」
聞こえてきたのは、何も知らないで、好き勝手言ってるやつらの声。
正直言ってさ、ホント、ムカつくんだけど。でも、知らないからこそ、言えることってのもあるわけで。
みんながみんな、王都のことをきちっと知ってたら。それこそ、グレースが立ち直れなくなるってのも、わかる。
だけどさぁ。グレースの表情、どんどん死んでくの。
陰口も聞こえるし。多分、王女様に毎日、作戦に参加するよう説得されてるはず。
最近のグレースは、笑ってるけど笑ってない。目が、全然生きてるって感じじゃなくって。触ったらあったかいけど、まるで、人形か何かみたい。
ちなみにグレースは、こんな状況でも、イハル兄に頼ってないっぽいんだよね。イハル兄が、すっごくイライラしてるから。
イハル兄は、グレースが頼ってくれたら、すぐにでも助けるつもりだろうし。自分が矢面に立ってでも、絶対、グレースを助ける。
もう、いつもの気まぐれとかじゃなくって、本気で。どんなものからも守るって、ちゃんとした気概を持って、しっかり守るつもり。
今のあたしにできることは、ホントに少ないんだけど。でも、やれることはやっときたいじゃん?
「ねね、将軍。ちょこっとでいいから、暇、ある?」
「今でしたら、少し空いていますが……」
「じゃ、ちょっとつき合って」
将軍が変な顔してるけど、この際目をつぶっとく。多分、この間街に行った時みたいな目に遭うとか、思ってんだろうし。今日は違うんだけど。
そんなわけで、将軍をちょっと連れ出してみた。
イハル兄に文句を言うのは筋違い。でも、グレースに、イハル兄に頼ってみたら、なーんて、あたしが言うことじゃない。
だけど、これ以上、グレースに傷ついて欲しくない。
あたしだって、グレースを守りたいんだから!
人が全然いない場所って、それこそ陣営の端っこになる。そこまで歩いて、あたしは適当なとこにちょんと座った。
「将軍も座ったら? 見上げてると、あたしの首が疲れるし」
「……あ、はい」
あたしから微妙に距離を取って、将軍も座る。
でもさぁ、何で間に人間が半分だったら入りそうなくらい、空けてるわけ? まあ、話が聞こえない距離とかじゃないから、別にいいけど。
「みんなの、グレースに対する言葉、聞いてる?」
将軍は忙しい人だから、あんま時間ないだろうし。あたしはズバッと聞いてみた。だいたい、あたしじゃ、回りくどいことできる頭もないし。
「知ってはいます。ですが、彼らに苦言を呈すれば、嫌でも王都の件に触れることになります。それは、私にはできません」
あー、将軍もあたしと同じ考えみたい。
じゃあ、あたしがしたいこと、わかってくれるかも。
「あたし、王女様に言いたい。あの時、何があって、どうなったのかってこと」
王女様が毎日呼び出して、説得してるから、周りも嫌な目で見るんだよ。グレースがわがまま言ってる、ってふうに見えるんじゃん。んでも、王女様なら、知ったら考えてくれるはず。
そういう人だって、信じてるから。
「あたしが見たもの、聞いたこと、ぜーんぶ。王女様に、伝えたい!」
そう言ったとたん、将軍がふわって笑った。
……だからさぁ、そういうの、卑怯だってば。
嬉しいって意味しかないの、わかってる。でも、何か、ちょっと違う意味があんのかな? って思うような、微妙な優しさっての? そういうあったかさがあって。
心臓が、変になるから。
「私も、考えていました。それから、イハル隊長も同じ意見のようですよ」
「……へ?」
イハル兄も?
「私と入れ違いに、一人で王女殿下に会いに来ていました。ずいぶんと硬い表情でしたから……恐らく、直談判でしょう」
「そっか……」
イハル兄、グレースのこと、すっごく心配してたもん。きっと、頼られるの待ってないで、さっさと片つけて安心させたかったんだよね。
だけど、イハル兄が行ったなら、あたしが出しゃばっちゃダメ。
王女様がプレッシャーかけないで、グレースが納得できる戦い方が見つかれば。多分、いい方に転がってくはず!
これからあたしは、いつもどおりにグレースと接しよう。うん。
そう決めて、ひょいっと立ち上がる。
もやもやは吹き飛んだし、将軍をあんまり引き止めても悪いしね。
「将軍はこれから見回り?」
「え……? あ、ええ、その予定ですが……」
む。たまに出る、歯切れの悪い方の将軍だ。んでも、結局、何も言わないでどっか行っちゃうけど。




