↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/128

38

 元々、シャラガラの城郭ってのは、とにかく分厚い。そりゃあ、国境を守ってんだから、当然なんだけどさ。

 ……ひょっとしたら、王都のより、頑丈で分厚いかも。

 実際に見たら、そう思った。

 あんなもん、のんきに壊してる暇も、人手も、心の余裕も。こっちには、これっぽっちもないって。

 んでも、何か対策はしないとね。門を壊す間に、上から槍とか矢とか降ってきて、一方的にやられるだけだし。

 だから、あたしでも、上から攻撃できて敵を減らせるなら。そんな方法が使えるなら、それが最善だと思うよ。そういう点では、王女さまやエレンさんを、責めらんない。

 その辺は、イハル兄(にぃ)もちゃんとわかってるはず。

 ただ、ちょーっと間が悪かったっていうか。

「まだ、その魔道士(プラエカンタートル)は承知しないのか?」

「王都で活躍したんだろ? 何が嫌だってんだろうな」

「そーそー。ここを解放したら全部終わるってのにさぁ」

 聞こえてきたのは、何も知らないで、好き勝手言ってるやつらの声。

 正直言ってさ、ホント、ムカつくんだけど。でも、知らないからこそ、言えることってのもあるわけで。

 みんながみんな、王都のことをきちっと知ってたら。それこそ、グレースが立ち直れなくなるってのも、わかる。

 だけどさぁ。グレースの表情、どんどん死んでくの。

 陰口も聞こえるし。多分、王女様に毎日、作戦に参加するよう説得されてるはず。

 最近のグレースは、笑ってるけど笑ってない。目が、全然生きてるって感じじゃなくって。触ったらあったかいけど、まるで、人形か何かみたい。

 ちなみにグレースは、こんな状況でも、イハル兄に頼ってないっぽいんだよね。イハル兄が、すっごくイライラしてるから。

 イハル兄は、グレースが頼ってくれたら、すぐにでも助けるつもりだろうし。自分が矢面に立ってでも、絶対、グレースを助ける。

 もう、いつもの気まぐれとかじゃなくって、本気で。どんなものからも守るって、ちゃんとした気概を持って、しっかり守るつもり。

 今のあたしにできることは、ホントに少ないんだけど。でも、やれることはやっときたいじゃん?

「ねね、将軍。ちょこっとでいいから、暇、ある?」

「今でしたら、少し空いていますが……」

「じゃ、ちょっとつき合って」

 将軍が変な顔してるけど、この際目をつぶっとく。多分、この間街に行った時みたいな目に遭うとか、思ってんだろうし。今日は違うんだけど。

 そんなわけで、将軍をちょっと連れ出してみた。

 イハル兄に文句を言うのは筋違い。でも、グレースに、イハル兄に頼ってみたら、なーんて、あたしが言うことじゃない。

 だけど、これ以上、グレースに傷ついて欲しくない。

 あたしだって、グレースを守りたいんだから!

 人が全然いない場所って、それこそ陣営の端っこになる。そこまで歩いて、あたしは適当なとこにちょんと座った。

「将軍も座ったら? 見上げてると、あたしの首が疲れるし」

「……あ、はい」

 あたしから微妙に距離を取って、将軍も座る。

 でもさぁ、何で間に人間が半分だったら入りそうなくらい、空けてるわけ? まあ、話が聞こえない距離とかじゃないから、別にいいけど。

「みんなの、グレースに対する言葉、聞いてる?」

 将軍は忙しい人だから、あんま時間ないだろうし。あたしはズバッと聞いてみた。だいたい、あたしじゃ、回りくどいことできる頭もないし。

「知ってはいます。ですが、彼らに苦言を呈すれば、嫌でも王都の件に触れることになります。それは、私にはできません」

 あー、将軍もあたしと同じ考えみたい。

 じゃあ、あたしがしたいこと、わかってくれるかも。

「あたし、王女様に言いたい。あの時、何があって、どうなったのかってこと」

 王女様が毎日呼び出して、説得してるから、周りも嫌な目で見るんだよ。グレースがわがまま言ってる、ってふうに見えるんじゃん。んでも、王女様なら、知ったら考えてくれるはず。

 そういう人だって、信じてるから。

「あたしが見たもの、聞いたこと、ぜーんぶ。王女様に、伝えたい!」

 そう言ったとたん、将軍がふわって笑った。

 ……だからさぁ、そういうの、卑怯だってば。

 嬉しいって意味しかないの、わかってる。でも、何か、ちょっと違う意味があんのかな? って思うような、微妙な優しさっての? そういうあったかさがあって。

 心臓が、変になるから。

「私も、考えていました。それから、イハル隊長も同じ意見のようですよ」

「……へ?」

 イハル兄も?

「私と入れ違いに、一人で王女殿下に会いに来ていました。ずいぶんと硬い表情でしたから……恐らく、直談判でしょう」

「そっか……」

 イハル兄、グレースのこと、すっごく心配してたもん。きっと、頼られるの待ってないで、さっさと片つけて安心させたかったんだよね。

 だけど、イハル兄が行ったなら、あたしが出しゃばっちゃダメ。

 王女様がプレッシャーかけないで、グレースが納得できる戦い方が見つかれば。多分、いい方に転がってくはず!

 これからあたしは、いつもどおりにグレースと接しよう。うん。

 そう決めて、ひょいっと立ち上がる。

 もやもやは吹き飛んだし、将軍をあんまり引き止めても悪いしね。

「将軍はこれから見回り?」

「え……? あ、ええ、その予定ですが……」

 む。たまに出る、歯切れの悪い方の将軍だ。んでも、結局、何も言わないでどっか行っちゃうけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。