表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/128

32

 無事に陣営に戻って、あたしと将軍は、王女様に街で聞いた話を全部伝えた。

 公開処刑に関すること。やっぱり出てた、王女様が王女様じゃないって噂。ただ、不幸中の幸いってのかな? 解放軍が略奪とかしてるって話は、出てないみたい。

「……そう。公開処刑に関しては、これから会議をして手を打ちます。できれば、正確な日時が知りたいところだけれど……今度は、エレンが街へ行ってくれる? 女の子を片っ端からつかまえて、さりげなく聞いてちょうだい」

 ああ、それ、メッチャ適任だね。

 ってか、エレンさん、役得じゃない?

「でも、解放軍の悪い噂がないことは、素直に嬉しいわ」

 ニッコリ笑って、そう締めくくって。あたしはそこで、王女様の天幕から逃げた。何か、空気が変だったし。

「ユノ、王女殿下から聞いたぞ。よくやった!」

 一番の問題だった、父さんのゲンコツ。持って帰ってきた情報がかなりよかったらしくって、むしろ頭をグリグリなでられた。

 正直、そんなの初めてで、あたしは逆に顔が引きつったくらい。

 夕食も終わって、ちょっとの空き時間。日が暮れちゃう前は、グレースは魔法の練習をしてるんだって。んで、リディはかるーく哨戒してるっぽい。

 だから、暗くなってから、お土産持参でイハル(にぃ)の天幕に遊びに行った。

 イハル兄は、緊急招集の軍議だって。多分、公開処刑に関してだね。

 天幕を独占して、あたしは手土産をどーんと広げてみた。あの焼き菓子も、フワッフワのお菓子も。いろんな色のついた、甘ーい砂糖菓子も。ぜーんぶ残らず、天幕いっぱいに店開き。

「へぇ……いろいろあるのね」

「あ……これ、おいしそうですね」

 グレースは、色つきの砂糖菓子に興味があるみたい。

 それ、星みたいな形でおいしそうだよね! でも。

「あたしのおすすめはこれ。メッチャ甘いけど、フワッフワなんだよ!」

 十個買って、将軍が顔を引きつらせたあれ。

 一個ずつ、リディとグレースの手に載っけて。あたしも一個、そーっとつまむ。

「わぁ……本当にフワフワしてますね!」

「何コレ? こんなのがあるのね」

 グレースもリディも、バッチリ驚いてる! ふふっ、大成功!

 だけど、ホントの驚きは、これを食べてからだよね。

「ねね、食べてみて?」

 言いながら、あたしが真っ先にかじりつく。

 くーっ、この甘さ! 何か、癖になりそうだよ。

 恐る恐るって感じで、グレースがちょこっとかじる。リディは豪快に、ひと口で全部放り込んだ。……リディ、怖いもの知らずだなぁ。

「……とても、甘いですね。ああっ、リディさん、大丈夫ですか?」

 一気に食べ過ぎて、リディがゲホゴホむせてる。グレースはちょこっとだったから、そうでもなかったみたい。慌てて、リディの背中をさすってる。

 こういうの、性格出るよね。

 やっぱ、グレースって慎重なんだ。で、リディは割と考えなし。

 早く、イハル兄にも食べさせてみたいなぁ。どうやって食べるんだろ?

「甘いっしょ? あたしも最初食べた時、甘すぎて死ぬかと思ったんだー」

「……だったら、予告くらい、しておくべきじゃなぁい?」

 目の前がグラグラして、お菓子がグニャッて曲がってクネクネして見える。

 お菓子をつぶさないように、あたし頑張った! ちょーっとギリギリだったけど、頑張ったよ!

 グレースも、頑張ったっぽい。バタッて倒れてるけど、お菓子から離れてるし。

「まったく。喉が渇いちゃったわ」

 けろっとした顔で、リディは水筒を出して飲んでる。

 重たいもんがなくなったけど、すぐには立ち直れないんだよ、これ! ホント、はた迷惑な特技なんだから!

 あーあ。この状況でイハル兄が来たら、あたしとリディ、どっちがお説教されるんだろ……。

「でも、本当に甘くて、おいしいですよね。この辺りにしかないものなのでしょうか?」

「さあ、どうだろ……エレンさんとかだったら、案外知ってるかもね。あたしは、街の売りもんには、そんなに興味なかったし」

 まずくなきゃ、別に苦痛じゃないし。食べられれば、お腹空いて死ぬこともないし。

 そんでいいじゃん?

 そりゃあ、もちろん、おいしい方がいいけどね!

「気に入ったならさ、エレンさんに買ってきてって頼んだら? 今度、同じ街、行くみたいだし」

 王女様公認で、ナンパしに行くみたいなもんだけど。

 んでも、ま、グレースの頼みだったら、多分喜んで聞いてくれるっしょ。

「エレンさんっていえば、この間のあれ。意外なんだけど、噂にはなってないわね」

「あれって?」

 まーた何かやったのかな?

「王女殿下と居残り騎士(エクエス)の前で、グレースに堂々とプロポーズしたの」

「……あー。それはむしろ、噂になんない。つーかそれ、王女様や父さんたちの前で、あたしもやられたし」

 でも、その話、聞いた人以外、きっと知らないんじゃないかな? 将軍、同じ時に言われた鼻血のことも、全然知らなかったみたいだし。

「ほら、エレンさんだからさ。本気なんだか、社交辞令なんだか、煽ってんだか、よくわかんないじゃん?」

「……まあ、そうね。ちなみに隊長は、煽られたみたいよ」

「へー……よかったね、イハル兄は煽られた方で。あたし、どう見ても、超本気で言われたんだけど」

 うっかり頷いてたら、その足でメッチャ高そうな婚約指輪買ってきて、渡されそうな勢いだったもん。

 ハッて気がついたら、いつの間にか、ドナに乗って優雅な新婚旅行の計画を語られてたし。

 とにかく軽くって、冗談だよー、みたいなノリの言い方だけど。目は、本気だった。

「あ、でも、エレンさんのお気持ちは何となくわかります。ユノさん、可愛らしくて、そばにいるだけで元気になれそうで、私も、ユノさんが大好きです」

 胸の前で、左の拳に右手を重ねて、ちょこっと首傾けて。ちょびっと顔を赤くして、そんなこと言われるとさぁ。

「あたしも、グレース大好き! 綺麗で可愛くって、胸とか女の子らしくって、メッチャ羨ましい!」

 本音、ぶちまけたくなるじゃん?

 思わず、グレースをギュッとしてみた。そしたら、ギュッて返してくれた。追加で、リディがあたしたちをギューッてしてきて。

 あー、何か、すっごく平和でいいよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ