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 二度目は、運悪く眠りが浅かったみたいで、誰かの変な叫び声で叩き起こされた。強いて言うなら、生き物を思いっきり、容赦なく踏みつぶしたっぽい感じの。

「んー……うっさいなぁ……」

 何か、フワッフワした、すっごくいい夢見てた気がするのに。

「あ、ああ……申し訳、ありません……」

 なーんだ、将軍かぁ。ずいぶんお酒飲まされてたし、寝ぼけたのかな? 何て言うか、かわいそうなくらい、げっそりしてる。

 反対側の父さんは、まだ寝てる。ってか、いびきうっさい。

「別にいいよ。今度は眠くないし」

 目が開いたし、すっきりしてるし、もう寝なくていっかな。

 グレースがもう起きてたら、イハル(にぃ)が何杯飲んでたか、聞いてみたいし。

「あ、あの……なぜ……」

「んー? 将軍が何で、ここで寝てるかってこと? 昨日、酔っ払った父さんがつかまえて、強引にお酒飲ませてたから、つぶされたんじゃない? どーせ父さん、起きても覚えてないし、迎え酒とか言い出すし、今のうちに逃げた方がいいと思うけど?」

「ああ、いえ、あの、そうでは…………はい、そうします」

 ヨロヨロ立ち上がって、将軍はどこかにフラフラ歩いてく。

 将軍ってば、やけに落ち込んでたなー。

 そういえば、騎士(エクエス)様って自制が基本って言ってたっけ。酔いつぶされたなんて、やっぱ恥ずかしいのかな?

 セイライの人間って、酔うと調子に乗るからね。しかも強引。イハル兄くらい、他人なんか知るか、って人じゃないと、断り切れないっぽいし。つーか、セイライの人間だったら、あっさり乗っちゃうからね。

「よーし、せっかく目が覚めたことだし、グレースがいるか、探してみよっかな」

 寝てたら、起こさないように見守って。起きてたら、イハル兄が何杯飲んだか聞いてみたいし。

 そう決めて、あたしはぴょんと跳んで立ち上がる。

 昨日、グレースといた辺りはっと……いない。っていうか、イハル兄も見当たんない。ついでにリディが消えた場所も確かめたけど、誰もいなかった。

 イハル兄がいなくなったらガタガタ震えるらしいし、案外、天幕に戻ってるかも。

 もう、ここまできたら、ついでもついで。ってことで、あたしはイハル兄の天幕へ向かう。

 本来は、あたしのいる天幕と、イハル兄の天幕って、王女様の天幕を挟んでる。行き来すんの面倒なくらい、遠いんだよね。んでも、昨日は、王女様の天幕の近くで宴会してたから、イハル兄んとこまで行くのはちょっと楽。

 端っこも端っこの、イハル兄の天幕。そこから、イハル兄が出てきた。

 あの顔は、寝てない。メッチャ涼しげな顔してるけど。ひと眠りしてすっきりしてます、って顔だけど。

 絶対、寝てない。

「イハル兄!」

「ユノ? どうした?」

「グレース、いる?」

「いるが……」

 なーんか、歯切れ悪いなぁ。イハル兄の態度からしたら、寝てるって感じじゃなさそうだし……。

「……まさかと思うけど、イハル兄、手ぇ出したわけじゃないよね?」

「するか!」

 即答された。メッチャ安心するー。

 これで即答しないとか、ゴニャゴニャごまかそうとしたら、間違いなく危ない。嘘つけない人だから、言えないことしちゃった可能性、高くなるし。

 まあ、イハル兄って、そーゆーこと、できる人じゃないけどね。

「うん、わかってるけどさ。念のために確認しといただけ」

「まったく……お前といい、王女殿下といい、リディといい……俺をどういう目で見てるんだ?」

 っていうか、王女様とかリディにまで、何かしでかすとか思われてんの?

 ついつい、思わず、イハル兄をジッと見ちゃうよね。万一、目ぇ逸らしたら、『セイ』をお見舞いするとこだけどさ。

「……グレースなら中だ。俺はその辺で寝てくる」

「ん、わかった」

 じゃあ、イハル兄が起きるまで、あたしがグレースを守んなきゃね!

「おっじゃましまーす!」

 ちゃーんと声をかけてから、遠慮なく天幕の中に入る。

 一瞬、グレースがどこにいんのか、わかんなかった。

 よーく見たら、隅っこで、天幕の方向いて。頭の上にどんよりした雲を連れてる雰囲気で、膝を抱えて座ってて。

 正直言っちゃうと、お化けかと思って、メッチャびっくりした。

 えっと、うん、もちろん、お化けとか、信じてないよ? し、信じてないけどさ!

「……グ、グレース?」

 のっそりと、すっごくのっそりと、グレースが全身で振り返った。

 喉から出かかった悲鳴を、あたし、超頑張って飲み込んだよ! ホント、メッチャ頑張ったよ!

「ユノさん……?」

「あ、遊びに来たんだけど……来ない方がよかった?」

 泣きそうな顔で、グレースは首をブンブン横に振る。

 そんなに振ったら、首がビュンって飛ぶって。

「わ、私……ユノさんに、謝らなくては、いけないことが……」

 ああ、もう! そんな顔で、しかも涙声で、そんなこと言ったら、許さないわけないじゃん!

 ってか、何かされた覚えないし!

「グレース、あたしに何もしてないじゃん? 謝ること、ないっしょ」

「ち、違うんです……」

 ああ、だから、そんなに首振ったら、首飛んでっちゃうってば。

「今朝、エレンさんに、オーレリア様の天幕へ連れていかれまして……」

 あー、わかった。何か、わかった気がする。

「ん、何となくわかった。どーせ、王女様のわがままっしょ。あたしも一緒に、遊びに来いとか、そーゆー」

 涙のたまった目を、大きく見開いて。パチパチしながら、グレースはあたしをジッと見る。

 何か、心臓が変なふうにドキドキしてきた。


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