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陣営に戻ったら、渋々残ってた騎士様たちが泣いて喜んだ。捕虜の中に、顔見知りとか、いっぱいいたみたい。
あたしはというと、帰り道、ずっと将軍が隣だった。ちょっと拷問受けてた気分。
んで、この国じゃ一番たくさん捕虜が連れ込まれてたとこを襲撃して、無事に解放できて。今夜はメッチャお祭り騒ぎ。
父さんは、ガブガブお酒飲んでる。途中で、通りかかっただけの将軍がつかまっちゃって、がっつり飲まされてた。
ちなみに、あたしの持ってるグラスには、たっぷりのジュース。
十八になったら、お酒が飲めるんだよ。リディとかカノ姉とか、見当たんないけど、どっかで飲まされてるっぽい。
「なーんかさ、こーゆー雰囲気、いいよね」
まだ、何にも終わってないんだけどさ。
「そうですね。少しだけ、前に進んだ気がします」
年はそんなに変わんないと思うし、グレースには、敬語はやめて、って言ってみたんだけどね。元々こういうしゃべり方なんだって。しょーがないよね。
ってか、グレースってさ、まだ十八じゃないんだ……あたしと同じジュース持ってる。
今日は、王女様とエレンさん、アルヴィン様にはお酒はダメって言われてるけど、他の大人はみーんなお酒だから。まだ、十七以下なんだ……こんな、大人っぽいのに。出るとこちゃんと出てるのに。
何か、ちょっと、いろいろショック。
「そういや、イハル兄、結構飲むんだよ。何杯飲んでるか、こっそり数えてみたら? いっつもあたし、先に寝ちゃうから、最後まで数えたことないんだけどさ」
最高記録は、十二。んでもって、朝起きたら、イハル兄が「俺は今から寝る」とか言って、どっか行ったり。
セイライ国の人間って、お酒入るとメッチャ陽気になるんだよね。イハル兄、そーゆーとこないから、お父さん似なんだろうなぁ。
「ふふっ、そうなんですね。私も、起きていられたら、頑張って数えてみます」
はにかんでるグレースが、超可愛い! このままギュッて抱き締めて、一緒にその辺で寝たいくらい、可愛い!
あーでも、やったらまずいの、何となくわかる。酔っ払いたち、あたしじゃ対処できないし。
この、イハル兄からよく見える位置が大事。
ああ見えて、イハル兄、ちゃんと時々グレースを確認してるし。
「……んー、ダメだ。何か、眠くなってきた」
やっぱ、将軍の隣っていう、拷問みたいな緊張感がきつかったのかな?
共通の話題なんてないしさ。エレンさんのことは、将軍が好きじゃないのか、名前出すだけで怖い顔するし。
あーあ。せっかく、グレースとたっくさん話すチャンスだったのに。
「父さん探して、寝てくるー。あ、グレースは、イハル兄から離れちゃダメだよ?」
「はい、わかりました。ユノさん、お休みなさい」
ニコニコして、コクコク頷いて。可憐で素直な美少女って、いいね。
「ん、おやすみー」
油断したら閉じそうになる目を、ゴシゴシこすりながら。転がっていびきをかいてる父さんの足元に、あたしもゴロンと転がった。
眩しくて、目が開いた。別に、珍しくも何ともなくて、宴会の後なんかだと、割とよくあること。
んでも、これはない。あり得ない。
目ぇこすって起き上がったあたしの隣に、将軍がいるの。反対側には父さんがいるから、通りすがりに飲まされて、そのままつぶされちゃったんだろうな。それは、わかる。
でもさ、何であたし、この二人の間に寝てたわけ?
一応、鎧は着てる。剣も持ってる。ってことは、将軍には宴会に参加する気なんてなくって。んでも、父さんが強引にとっつかまえたってことで。
うわー、申し訳ない!
ホント、何で父さんって、こんなに酒癖悪いの? 多分、セイライ国でも、一、二を争うくらい悪いと思う。
……あたしも、酒癖悪かったりしない……よね? 何か、今から心配になっちゃうよ。
「あ……」
バサバサッて音がして見上げたら、竜が飛んでた。あれ、騎竜だ。
みーんな酔いつぶれてるこんな日に、朝から飛んでる騎竜の主なんて。絶対、エレンさん一人しかいないじゃん。
散歩って言うの? 夜明け前から空飛んで、帰ってきたとこかな? ってことは、結構いい時間だよね?
まあ、今日はみんな役に立ちそうにないし。
「あふぁ……」
まだまだ寝足りないらしくって、あくびが出た。まぶたも、ゆっくりだけど、ピタッとくっつこうとしてる。
みんな起き出してきたら、多分父さんが起こしてくれるよね、うん。あたしも、もうちょっと寝とこっと。




