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インティーヴァスの捕虜収容所からの帰り道は、行きよりうんとのんびりだった。まあ、ヨレヨレの捕虜ばっかだし、馬車なんて全っ然用意してなかったもんね。
騎士様たちが走って、近くの街で荷馬車の荷台だけ借りてきて、自分たちの馬に引っ張らせてるけど。そうじゃなかったら、さすがにしんどかったかも。
んで、何でか、あたしの隣を将軍が歩いてる。
「……あのさぁ、ヴァージル将軍」
呼びかけるけど、返事はない。んでも、ちゃんと聞いてくれてる。
「助けた捕虜さんたちに、ついてなくていいの?」
無言。メッチャ無言。
ひょっとしてこの人、しゃべんない人なの? いっくらあたしがおしゃべりでも、さすがに反応ない人とはしゃべりにくいんだけど……。
「……ひと通り、顔を見て声はかけました」
うわっ、びっくりした! 何か、テンポがズレててやりにくいなぁ……何て言うか、こう、ポンポンと返ってこないと、返事がしにくっていうか。
グレースでも、こんなひどくないと思うんだよね。
「でもさぁ、知ってる人たちなんでしょ? 一緒にいたくないの?」
「今は、できるだけゆっくり休めるべきです。話すだけならば、彼らが回復してからいくらでもできますので」
「そういうもん? あたしだったら、寝るのは邪魔したくないけど、ちょっとでもたくさん話したいけどなー。久々に会ったわけだし」
まあ、多分、うるさいとか言われて追い出されるけどね。
あたしさぁ、久しぶりにイハル兄と会った時、父さんにゲンコツ食らうくらい、思いっきり騒いだんだ。
だってさ、イハル兄、あたしが十の頃に出て行っちゃったから、実に六年ぶりくらい? 顔も性格もあんま変わってなかったけど、すっごく懐かしかったよ。
懐かしい人に会ったら、そういうもんじゃないのかな? それとも、騎士様だとやっぱ感覚が違うのかな?
「確かに、久しい再会ですが、これから話す時間はいくらでも取れますので」
うわー、すっごい頑固。
あたしが言うのも難だけど、将軍って、かなり頑固だよね?
「ひょっとして、ヴァージル将軍って、我慢強い方だったりする?」
「何をもって我慢強いとするかが、わかりかねますが……」
「だってさ、いろいろ屁理屈こねて、我慢してそうだもん。懐かしいとか、会えて嬉しいって気持ちに素直に行動したって、別に罰は当たんないっしょ?」
っていっても、将軍が感情的に行動するって、これっぽっちも想像できないけどさぁ。
「自制は騎士の基本です」
「うっそぉ……エレンさん、欲求にメッチャ正直だよ? ベネットだって、竜騎士だけどやりたい放題やってるし」
「……エレンと一緒にしないでもらえますか?」
うっわ、空気が冷ややか。
チラッと見上げてみたら、将軍、すっごく怖い無表情だった。
「……そっか、竜騎士と騎士様は別モンなんだね」
あたしには、何がどう違うって気がしないんだけどさ。そういうことにしとけば、とりあえずいいのかな?
「騎士と竜騎士が、というよりは、エレンだけが別物です」
「あー、うん。エレンさんがちょっと変なのは知ってるよ」
「そうですか……では、エレンにはなるべく近づかないようにしてください」
「へ? 初めて会った時から、ほとんど毎日向こうから来るし、今さら近づかないでって無理じゃん?」
「……なん、ですって?」
な、何? 何でいきなり、顔色変わってんの?
将軍ってさ、一応、見た目はいいからさ。そうやってすごまれると、さすがにちょっと怖いっていうか。エレンさんより、もっと近寄りがたいっていうか……。
……ホント、怖いんだけど。
「え、だって、エレンさん、あたしのとこも来るけど、他にもいろんなとこ行ってるっぽいよ? あたしにも、他の子のこと、いろいろ教えてくれるし。解放軍の女の子のこと、一番よく知ってんじゃない?」
誰が誰とつき合ってるとか、気になってるとか。何か、すっごく詳しすぎるけど。
実はさ、リアムが旦那にしたいナンバーワンってのも、エレンさんから聞いた話なんだよね。
他には、見てるだけでいい、とか、同じ隊になりたい、とか。何か、あたしにはよくわかんないことも聞いてるみたい。
戦場だと普段からの信頼関係とか、メッチャ大事だし。隊の顔がコロコロ変わってたら、まともな傭兵なんてやってらんないよ。
「……そう、ですか」
とことん重たいため息をついてから、将軍はボソッと呟いた。




