序章~7~
「時間のようだね。忘れていたけど、今の彼女はセミの抜け殻状態なんだ。
長い間、彼女の意識が戻らないと他の先生から不審がられるから――三ヶ月、いや半年までには戻る方法を見つけ出してくれないかな?」
「も、もし半年過ぎたら?」
「僕も医者だからね、彼女が遷延性意識障害――いわゆる植物状態であると病院側に報告しないといけなくなる」
『植物……人間かぁ……』「半年かぁ……」
お互いに着目するところこそ違ったが……
「早くしろっていってんでしょーがぁ!!!直人ぉー!!!!!」
いきなり、部屋に入ってきたさっきと同じ声をした別人のような看護師さんに驚いたことは確かだった。
「ゆ、由紀……!病院では名前は呼ばないって決めたろう?」
「後ろがつっかえてるのよ!……あら?学生さん?ごめんなさいね。これから診察があるから、ね?神・元・先・生!?」
「はい……」
こちらの看護師さんの胸元にある「神元」の名札を見るところ、奥さんで間違いないようだ。
「いえ、もう終わりましたんで……」
女の人って怖ぇーーー!
「だろ?家ではもっと酷――」
バシーン!
「いいかい、半年だよ。それまでなら何とかごまかせるから~……」
ある腫れた昼下がりでもない朝。頬を真っ赤にした先生は彼女の連れられて行ってしまった。ドナドナドーナドーナー……
取り残された俺(俺達)は複雑な気分で部屋を出る。
「どーすんだよ、一体何を元に調べりゃいいんだ?」
『奥さんを見るかぎりだとあの先生、当てにならないわね……』
途方に暮れた俺は、重い足乗りで出口へと続く廊下を歩く。
その時ふと病院の受付を見て、俺は気付いてしまったんだよー。だよー。ダヨー……
は、8:00!!!
「やべぇ!このままじゃ遅れちまう!!!」