序章~4~
病院に着いてから警察にあれこれと聴かれた。実際はついて来なくてもよかったらしいのだが、友達だと口実を言ってごまかした。なにせ、こいつがうるさかったし……
幸いにも大怪我には至らず、彼女は頭を数針縫う程度で済むらしい。警察からも解放されてやっと一息ついた俺は中田さんの「けど……」発言について問い詰めようと思ったが――また誰かに邪魔をされてしまった。
「君が中田さんのお友達かい?ちょっといいかな?」
後ろから声をかけてきたのは白衣を羽織った若い男性だった。「神元」とある名札を付けた彼が医者であることは間違いないだろう。
「はい、そうですが……まだ何かあるんですか?」
「心配せずとも大したことじゃないからすぐに終わるよ」
そういうと神元先生は俺を連れて「精神科」と表示された診察室に入っていった。
せ、精神科?まさか俺、さっきの誤解されてる?!促されるまま、俺は恐る恐る入室した。
「うん、患者も丁度いないみたいだし始めようか」
「あ、あの〜俺、頭のどこにも悪いところは無いんですが……」
「頭???何のことだい?ただ彼女について話がしたいだけだよ?」
すると、やり取りを聞いていた中田さんはどうやら堪え切れなかったらしい。
静寂から突如大爆笑。
『プッ、アハハハハハハハ!!!頭って……キミ、本当に診てもらった方がいいんじゃない?』
我慢しろオレ!我慢だ!!!ムカつくがここで言い返したら電波少年になっちまうぞ!
「さて……君は彼女とは違う高校みたいだけど、いつから友達だい?」
一瞬、俺は先生の質問に戸惑った。「実は今日が初対面なんです〜(笑)」…………なんて言えるはずがない。また適当に話して、受け答えすればいいか。
「ええと、同じ塾に通って…」
「彼女、塾なんて行ってないみたいだよ?」
ウソ!?だって、ベテルギウスの生徒の9割は行ってるって聞いたのに!
『キミって、頭悪いの?高校の内容なんて授業受けてれば十分じゃない』
ベテルギウスってAランク進学校だろ?!マジかよこいつ……
「やっぱり本当は知らないみたいだね」
ウソがばれた俺は思わずビクッと体を強張らせてしまう。
「まぁ、大体の察しは付いてたけどね。本題に入る前に一様確認しておくよ」
友達じゃないと分かった奴にこれ以上何を聞くってんだ。まっすぐ俺を見た先生はゆっくり口を開いた。
「単刀直入に聞くけど……君の中にいるのは中田佳奈さん、だね?」