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15話 最弱、捕獲される




「それでいい加減に助けて欲しいんですけど」


 眼が覚めた時には俺の身体は元いた部屋のテーブルの椅子に括りつけられていた。そのテーブルの周りには俺以外の面々も座っていた。俺の右隣りにリミル、左隣りには自称俺の命の恩人さん、右斜め前にはアリアナ、そして左斜め前にはミサナが人間の状態でいる。


「どうのようにして? 別にあなたは今困っているようには見えませんわよ。わたくし達も今のところは殺すつもりはないですし」


 今のところはな。こいつらなら何時でも俺のことを殺せるし、殺そうとするから怖い。と言うか、この状況で困っていないように見えないのならこいつの眼は節穴なんだな。直接言ったらおそらく100%殺されるけど。


「とりあえず縄を解け。そして理由と状況を説明してくれ」


「縄を解くのは却下ですわ。あなた解いたらすぐに逃げるでしょ。後、理由と状況については一体何のことを説明すればいいのかしら?」


 どうやら俺に説明するのはリミルの担当らしい。他の三人は何も言うつもりはないらしい。アリアナは黙ってこっちを睨んでいるし、ミサナはニタニタしながらこっちを見ているだけだし、残り一人もこっちを見てオロオロしているだけだし。


「俺のことを捕まえた理由とお前たち三人が協力し合っている現状に対する説明だ」


 無意識のうちに若干ながら語尾を強めていた。どうやら相当怒って、苛立っているようだ。まあ、当たり前と言えば当たり前だ。でもここでブチギレる訳にもいかない。あくまでも冷静な態度で話す。


「まあその事でしょうね。あなたが他に聞きたがる事も無いですし」


 わかってんならわざわざ聞くんじゃねえよ! そう思いっ切り怒鳴って言いたいけど必死でツッコミを我慢する。


「それでいい加減答えてくれるか。それとも答える気がないのか」


 答える気がないのなら答えさせるまで。まあそんなこと出来ないけど。聞きだす相手はこいつじゃなくてもいいんだから。アリアナの方が聞きだし易そうだけど、それが分かっているからリミルが答えているんだろう。


「いいでしょう、答えてあげましょう。あなたが其処から飛び降りてからわたくしたち三人は多少冷静になり、話し合うことになりました。それでことの原因はすべてあなたであることを知りました。だからあなた捕縛または殺害してこの一件に片をつけようと思ったんですよ」


 うわー、マジでこいつらいい加減にして欲しいわ。俺のことを何だと思っているんだよ。そんな簡単に人を殺すだの捕まえるだの何がしたいんだよ。


「それで俺を捕まえてどうする気だよ? 殺すのか? それとも拷問でもして憂さばらしでもするのか?」


 もうどうでもいいけど。と言うか、こいつらそんな事やる気ならすぐにでもやれるだろうし、それをしなかったってことは何かあるってことだろ。まあ純粋に俺の悲鳴が聞きたかったとかそう言うドS趣味をこいつらが持っていたって可能性もあるけど。


「まあそれはそれで楽しそうだけど今はそんな事をしている余裕はないのよ。あなたにききたいことがあるんで」


リミルの台詞は最後まで聞くことができなかった。話の途中でテーブルが大きく宙を舞い、リミルとミサナは跳び退いて俺の後ろの壁にまで逃げ、テーブルを投げた張本人のアリアナは自称命の恩人の手を掴み、そのまま俺の後ろに逃げる。


 なぜこんなことになったのか全く分からなかった。でも次の瞬間には全てを理解した。俺が逃げ出す時に使った窓が、外に繋がっている窓が、周りの壁ごと吹き飛んだ。


 何が起きたのかはわからなかったけど、椅子に括りつけられたままの俺の身体はそのまま壁を吹き飛ばした衝撃に巻き込まれ後ろの壁まで椅子ごと転がっていく。


「なあ、気付いていたんなら俺も助けてくれよ」


 我ながら図太くなったモノだ。この世界に来たばかりだったら、すぐにこんな文句を言えなかっただろう。それがいいことなのかはわからないけど。


「自分の身一つ守れない奴は戦場では生き残れない。当たり前のことだ」


 アリアナの厳しい一言。まあ俺は戦場に立つ気はないんだけどな。


「まあ、そうだけどさあ。はあ、何かもういいや。それじゃあ説明してくれ。今度は何が起きたのか。何でこんなことになったのか。誰がこんなことをやったのかを」


 面倒事は終わらない。この世界に来てから心から休まる時はない。


 そう本当に疲れて、溜息をつきながらそう思った。




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