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13話 最弱、地獄に巻き込まれる



 カオスだ。今の状況を置かれたら誰だってそう思うだろう。俺はテーブルに座っているメンツを見て、改めて溜息を吐きながらそう思う。


 俺の右隣りに座っているアリアナは殺気を籠めた視線をこっちに向けてくる。挙句、レイピアの柄に手をずっと掛けている。俺が少しでも動こうとすれば、その度にレイピアを持つ手に力が入っている。


 左隣にいるリミルは明らかに不快そうにしてこっちを見ようともせずに、前だけ見ている。


 そして一番の問題なのは俺の眼の前に居るこいつだ。どう対応にしていいのか全く分からないし、何も言わずにただ座っているだけだ。


 そんな状況に立たされて、俺はどうすればいい。誰でも良いから助けてくれ。神様でも悪魔でもいいから助けてくれ。ヤバい、相当テンパってきた。


 とりあえず落ち着け。落ち着くんだ、俺!!! 冷静に考えるんだ。現状の根本的な問題は二つある。


一つは俺が寝室に入ったこと。これはもうどうにもできない。後で土下座でもするしかない。今はもう一つの問題であるこの理解不能意味不明の女を如何にかしなければ。


 今の停滞した状況を如何にかするにはこれしかないか? 頭の中で一つだけ策が思いつく。けど、これをしたらたぶん状況は停滞から抜けるが下手したら今よりも状況が悪化する気がする。


 でもこれしかいま思いつくのはだからこれに賭けるしかない。


俺は大きく息を吸い込み、覚悟を決める。両腕に力を籠めて、テーブルを掴む。


「うぉりゃァあああああああ!!!!!」


 秘技ちゃぶ台返し、別名星一徹クラッシュ。


 全身全霊を力でテーブルを投げ飛ばす。空中にテーブルの上にあったティーカップが宙を舞う。テーブルが放物線を描きながら、そのまま女の方へと飛んで行く。


 さて、どうなるのかな。これで如何にかなると良いんだが。


「まったく、面倒な奴じゃな。凍れ」


「「!!!!!」」


 床から氷の樹が生まれた。テーブルもティーカップも俺が空中に放ったモノは全て凍った。


 それを見た俺の両隣が一斉に動き出した。リミルは後ろに跳び距離をとりながら魔術を発動させ、アリアナは逆に前に出てレイピアを振るう。近距離と遠距離の時間差攻撃。


 二人ともあそこまで連携がとれるほど、仲が良いのか。それともただ単に純粋にこいつらの才能か。まあどっちにしてもこっちにまで飛び火しないと良いけど。


 飛び火する気がしてならないけどな。


「邪魔じゃな。うぬを人質にすれば静かになるかのう」


 二人の攻撃が当たる事はなく、女は俺の前に瞬間移動でもした可能ように現れた。驚く暇は無い。まあ、元々驚くような出来事ではないが、むしろこれではっきりしたぐらいだ。


 女は俺の頭を掴み、そのまま自分に引き寄せて俺を二人に対しての楯のようにしてくる。


「うぬらがそれ以上動くようならこやつを殺すはそれでもよいのか」」


 二人は当然躊躇してくれると思った。でも、世の中は甘くない。いや、世の中が甘くても、この二人は優しくなかった。


「「二人纏めて死ね」」


 本当にこの二人酷い。鬼だろ、こいつら。


「うぬは本当に人望がないのう。まあ諦めろ、命を」


「えッ???」


 女は同情するような声色でそう言って俺の事を二人向かって突き飛ばした。


前からはアリアナが目視出来るギリギリの速さでレイピアを振るい。その後ろからリミルが魔術で空気で出来た細い槍みたいなモノを数発アリアナに当たらないようにしながらこちらに向かってくる。 


そして後ろからは女が氷柱を生みだして、それを放ちながら、後ろから量手から氷の爪を生みだし襲い掛かってくる。


 前門の虎後門の狼。意味は違うが状況は一緒だろう。まさに前も後ろも地獄。どっちに進んでも死しかない気がする。やべぇ。本当に洒落じゃなくて死にそう。唯一の逃げ道は外に繋がる窓。でも此処は三階だ。普通に死ねる高さだ。


「でもここよりはマシだァあああああああ!!!!!」


 思いっ切り跳んで、そのまま窓を突き破り外に跳ぶ。全身に重力がかかり、俺の身体は緩やかに加速しながら地面に向かって落ちて行く。


 空中で体勢を立て直しながら、死なないようにする。この状態で上手く着地できれば脚の骨は傷めるが何とか死なないですむ。そう地面にさえ着地できれば。


「ぶぶぶぅぅうううああああああしゃぁああああああああ」


地面と俺との間には馬車があった。


 そのまま俺の身体は馬車の荷台のホロの上に落ちて行き、ホロの布に脚を取られ身体のバランスが崩れていく。


 時間が酷くゆっくりと流れていく気がした。そのまま俺の身体は馬車の荷台に叩きつけられる。口の中に最近よく感じる味が広がっていく。傷口がまた開いたみたいだ。背中と肩に激しい痛みが再度生まれる。


 最悪だ。ホロのおかげで速度が緩和されたから生きてはいるが、下手したらこのまま死ぬかもしれない。


にしてもこの世界に来てからずっとこんな感じだな。怪我をしてない時はないぐらいだ。まあ、それでも生きてるだけマシか。上に居たら、死んでたからな。あいつら少しは躊躇してくれよ。


 心の中で愚痴っても誰かが助けてくれる訳でもないし、少しは自分でどうにかしなきゃな。このままだとマジで出血多量で死ぬかもしれないし。


「きゃぁあああああああああ!!!!! 何で! 何で! 何で! わたしの馬車が壊れてて中で血まみれになった男の子がいるわけぇええ!!!」


 人が来てくれたのは嬉しいがやたらとテンパっていた。まあ、確かにいきなりこんな血まみれの男が自分の馬車の中に居たら驚くだろうけどさあ。もう少し落ち着いてくれよ。じゃないとこっちも説明しようがないだろ。


「そうか!!! これは夢なのね! だからどんなあり得ないことでも起きるのね!!!」


 うわ、こいつバカか。お願いだから少しで良いから落ち着いてくれ。そのでかい声が傷口に響くんだよ。とりあえず立ち上がって、説明しなきゃな。全身に力を籠めて立ち上がる。


「……頼…むから……話を……聞い…て…くれ」


「むぎゃぁあああああああ!!!!! ゾンビぃいいいいいい!!!」


「誰がゾンビだ!!! 誰が!」


 突っ込んだ。全力で突っ込んだ。幾ら血みどろでもゾンビは酷いだろ。ゾンビは。まあ、おかげで完全に力持ってれた。ヤバい、意識まで朦朧としてきた。


 俺は力が抜けて、また荷台の上に倒れ込む。


「あれ? ゾンビ、また死んだ?」


「だから誰がゾンビだァああああああ!!!」


 俺の残った力を全て使った突っ込みを終えて、そのまま俺は意識を失った。




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