嫌いあってる相手と、初めての共同作業
ある日、父親が我が家に彼を連れてきた。
かれとは……
初めて出会った時から
そりが、あわなかった
人間、たまに相性が悪い相手に巡り合う事がある。
でも、よりにもよって親の意向で、私は、そんな相手と無理矢理パートナーを組まされることになった。
私のパートナーは、とてもわがまま。
普通に女の子していた私。
男の子の……と言うか野生児。雄の考えてる事なんてわからなかった。
あの男は、まず私の両親にすり寄った。
両親に媚をうる。
次に両親の心を奪いとる。
図々しくも私の家に入り込んだ。
あの男、私の両親の目の前では
私と、さも
「仲良しですよ」
と仲良しアピールをする。
しかし彼は、両親がいない所では傍若無人に振る舞った。
私が
「近寄らないで!」
と彼を拒絶すると、
「そんな事を言わなくても良いじゃないか」 と両親は彼を庇う。
ある日、私の部屋に彼が侵入した。
さんざ私の部屋で遊んだらしく
部屋はメチャクチャにされた。
当然、怒る私。
私が彼を追いかける。
彼は逃げる。
狭い場所をグルグルと逃げる彼。
追いかける私。
グルグルと回る追いかけっこ。
私は真剣だが、私の両親は、私達が
「まるで二人がダンスを踊っている様だ」と喜んだ。
当然私は怒る。
「もう、許せない。家から叩き出してやる」
「待て待て、彼はまだ家に来たばかりで、家のルールを知らないんだ」
と、やっぱり彼を庇う両親。
彼は我感せずと知らんぷり。
私は両親の愛情を彼に奪われてしまった。
それだけでは無い。
私は彼と仲良くする事を両親から強制されている。
夕食時の会話の中で
どうやら彼はゆうしょ正しい一族の出身。
王族の紹介。
それで我が家に来た。らしい。
そんな事がわかった。
しかし彼のテーブルマナーは最悪だった。
彼は一番初めに食事を初める。
食い散らかし、食べ終わるとアクビ。
椅子に座ってくつろいでいる。
私達の事などお構いなしだ。
両親は彼を私にしきりにすすめる。
「このまま彼をオマエのパートナーに、どうだろう? お似合いだと思う」
などと的はずれなことを言う。
(お断りだ)
「絶対に嫌。私のパートナーは既に決めていますからね!」
「ほう、それは初耳だ。何処の子だい? 今度お父さんに紹介しなさい」
「伯爵家に今度産まれる子供です。男の子なら、私のモノにします」
「まだ、産まれて無い子をパートナーに!」
「はい。アチラの両親とも伯爵家とも既に約束しています」
父は私の言葉と行動力に絶句していた。
父と私のやり取りを、彼は興味無いよ。と言う感じで椅子でくつろぎ聞いていた。
父が連れてきた彼。
彼のセンスが嫌いだった。
彼は黒いモノを好み、暗い場所を好む。
ファッションセンスも真っ黒だった。
陰気臭い。
私に嫌われてる事を悟ったのか、彼のほうでも私をさけるようになったもんです。
でも……彼は私を見ている。
ジッと見ている。
真黒い装いで見ている。
ある日、私は農業に目覚めた。
大根の葉っぱ料理が食べたい。
しかし最近、町に売られている大根には、葉っぱがついていなかった。
「葉っぱが無ければ自分で作れば良いじゃないか」と庭師を巻きこんで小さな畑を作る。
そこに葉大根の種を植えた。
『葉大根』葉っぱが大きく育ち、根っこの大根部分が大きくならない大根。
私は毎朝お水をあげるのが日課になった。
そこに、いつもの真黒い姿で彼が現れ邪魔をする。
彼は私が水をまくのをジッと見ている。
私が彼を無視して水撒きを終えて去ろうとする。
すると!
何と!
彼は畑の隅っこでオシッコを初めた……
「な……!」
私はワナワナと震え、
怒りで声が出なかった。
が……彼は用を足すと、何事も無かったかのようにスタスタと立ち去っていく。
「信じられない!」
「どうしましたお嬢様!」
わたしが大声で叫ぶと、庭師が駆け寄ってきた。
「ア、アイツ。アイツがアソコの大根にオシッコをかけた!」
「え! 立ちションですか?」
「そうよ! アイツ信じられない。私の顔を見ながら……嫌がらせよ!」
「……まさか」
「絶対にワザとよ!」
私はそう主張したが、庭師も両親も「偶然だろう」とか「悪意は無かった」とか、私の言う事を信じてくれなかった。
しかし皆も否応なく私を信じる事になる
何故なら彼は毎日続けたから。
私が毎朝大根に水をあげ終わると、何処からか彼が見ている。
そして私が去ろうとすると、最後に毎日同じ場所、畑の隅でオシッコをする。
庭師も両親もソレを目撃して私の言い分を信じてくれた。
けども彼を強くは叱らなかった。
彼も嫌がらせをやめなかった。
私は絶望したが庭師は
「まぁまぁお嬢様。彼も毎日同じ場所にしかオシッコをしないですし、アノ場所の大根だけ食べなきゃ良いんですよ」
確かに彼は一番隅でしかオシッコをしない
被害に合ってる大根は、ごく一部だ。
「でも……」
「衛生的に汚い様に思えますか?」
「うん」
「野菜なんて、肥料が無きゃ育ちません。肥料って動物の糞尿ですよ」
「げ……!」
下品な事を知ってしまった。
例えそれが真理でも、気持ちの良いものじゃない。
ましてや、肥料の製造元が真黒い彼とか耐えられない。
結局、
彼が毎日粗相をするゾーンを隔離した。
その場所付近の大根は諦める。
そのうち異変に気がついた。
私が世話をする大根と、彼が世話?
をする大根にわかれてしまった。
いつの間にか大根畑の一部を、彼に占拠されている気分だった。
私は基本、全ての大根に水をあげる。
彼は一部の大根に粗相をする。
私はその一部の畑には近づきにくくなる。
畑の一部が彼に占拠されている。
私の家と同じ様に。
父親に苦情を言うと、父親は笑っていた。
頭にきた。
更に腹が立つのは、明らかに私の育てた大根よりも、彼が育てた? 粗相をしてる?
大根のほうが発育が良い。
ひと目見ただけでわかる。
彼の育てた?
大根のほうが大きい。
彼の最悪な行為が、結果的に肥料を毎日あげる形になっている。
それで彼の大根が大きくなっていた。
何だかむしゃくしゃした。
その頃には私の育てた安全エリアの葉大根は収穫出来る様になっていた。
彼のエリアの葉大根はイロイロ危険なので収穫されない。
それどころか、彼のエリアの葉大根は彼の肥料のせいか、スクスク育つ。
普通の大根よりも大きな、立派な大根になっていた。
葉大根って、肥料を沢山あげると普通の大根になるか。と感心した。
が……(誰が食べるんだコレ?)
毎日彼がオシッコを、かけつづけた大根。
スクスク大きく育った大根。
私は当然食べない。
彼は、そもそも大根がキライ。
食べてる所を見た事が無いよ。
私が作った葉大根も食べない。
彼の大根。処置に……困った。
ある日、
彼がふらっと屋敷からいなくなる。
それきり帰ってこなかった。
両親は私に何も言わない。
私が彼をパートナーに選ばなかったから、彼は別の家に引き取られたのかも知れない。
他の理由があったのかも知れない。
まだ小さな私には、両親は全てを教えてくれない。
いなくなって、彼の事が少し気になった。
私の家から彼は去った。
しかし、彼の大根は残った。
とても大きな立派な大根。
思えば、この大根。
(私と大嫌いな彼の、初めての共同作業。
その結果だったなぁ。)
とぼんやり思う。
本来小さな葉大根。
それが、ここ迄大きく育つとは……
普通の大根よりも遥かに立派な大根。
大嫌いな相手との共同作業は、中々たいしたものじゃないか?
私は彼の代わりに、伯爵家から予定通りパートナーを向い入れた。
今度の子は大嫌いな真っ黒い相手とは似ても似つかぬ【真っ白い子猫】
私は、この子を可愛がる。
私に全く、なつかなかった真っ黒い猫。
彼には散々嫌がらせをされた。
猫は大好きだけど、彼の事は嫌いだった。
それでも黒猫を見る度に彼の事を思い出す
彼と私の初めての共同作業
その結果、育った大きな大根の処置には頭を抱えた。
私ら一族は猫が好きだ。
家の家紋も【猫】な程。
それでも私と黒猫の共同作業で出来た大根。アレを食べる勇気は誰にも無かった。
猫の紋章の猫好き貴族。
私が住むのは猫屋敷。
それが我が家。
それでも彼、猫が毎日作った猫印の肥料。
そんな物で育った大根を、食べる事は誰にも出来なかった。
かと言って無下に捨てる事もはばかられた
結局大きな大根はそのまま育てる。
種を取ることにしたのだ。
大嫌いな黒猫と私の初めての共同作業。
その結果。
その種から出来た大根の子孫が、今後我が家の食卓に並ぶ事になる。
数年後、大量に取れるようになった大根を
我が家の特産品として売り出した。
我が家の猫の家紋と共に好評を博す。
プライベートブランド名
【黒猫と私のダンス】
彼と再会する機会があったとしたら
彼は私と白猫の仲に嫉妬するだろうか?
それとも私が彼と彼のパートナーとの仲に嫉妬するのだろうか?
わからない?
大嫌いな相手でも……猫は猫
時間がたつと
彼に嫌われていたのかすら、
わからないのだから……
彼は私の農作業を邪魔していたのか?
それとも手伝う気で肥料を提供したのか?
わからない。
しまいには彼を嫌っていたのかすら、
ドンドン怪しくなって、
わからなくなって、懐かしく
ふと、共同作業で出来た初めの大根。
アレも今思うと、食べておけば良かった。
一瞬、そう思う。
(イヤイヤイヤ。無い無い)
それから即座に否定する。
人として、駄目はものは、やっぱりある。
駄目なものは、やっぱり駄目だ。
それでも……さぁ
ふと、悪い想い出を…補正したり…
妄想したり…
懐かしむくらいは良いだろう




