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この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
佐賀県武雄市。歴史ある街並みの中心に位置する県立第2SS学園は、放課後の穏やかな喧騒に包まれていた。校門を抜ける生徒たちの影が長く伸びる中、三年生の教室で七海和歌は一人、鞄を整えていた。彼女の一人称は「わたくし」。第2SS学園に通う生粋のツンデレお嬢様である彼女にとって、この学び舎は自らの気品を保つための聖域である。
和歌は窓の外を眺め、ふんと鼻を鳴らした。彼女には「武雄の英雄」という自負がある。自称ゲーマーライバルである山本マキに差をつけるため、今日の配信では新たな戦術を披露するつもりであった。だが、静寂を切り裂くように、校内のスピーカーが不気味なノイズを吐き出した。
「あ、テステス……。ええと、ここを押すと世界中に配信されるんですっけ? Sカンパニーの予算、計算合わないけど、とりあえず『ど田舎から世界を獲る!』って叫べばいいのかな」
スピーカーから流れてきたのは、教師でも生徒会役員でもない、どこか抜けた女性の声であった。和歌の顔が瞬時に赤く染まる。それは、MUⅡプロダクションのプロデューサー兼マネージャー、楠木こころの声だった。
「ちょっと、何を考えていらっしゃいますの……!」
和歌の叫びも虚しく、楠木こころの「うっかり」は止まらない。全校放送のスイッチと、全プラットフォームへの同時配信ボタンを押し間違えた彼女の声は、第2SS学園の全教室と、サーガ・サーガ(SAGASAGA)の全空域に同時に放流されていたのである。
サーガ・サーガに集う、混沌の種
仮想空間サーガ・サーガ(SAGASAGA)は、完成から二年目を迎え、異常なまでの発展を遂げていた。人類が夢見た「黄金黎明期」の最中、第3レイヤーに位置するMUⅡプロダクションの本社スタジオには、続々とアバターがログインしてくる。
「わあ。ログイン成功。わたし、楠木さんの声が空から聞こえてきたから、びっくりしてダイブしちゃったぉ」
鹿島市を拠点とする「癒やしと幸運の特異点」、鹿島幸来が、お祝いのふなっこデータを並べながら困惑した声を上げた。彼女の一人称は「わたし」だが、その穏やかな語尾は、今のカオスな状況すらも幸運へと変換しそうな不思議な力を持っていた。
「おいおいおい。あたいらのボス、初っ端からとんでもない誤爆をかましてくれたぜ。第2SS学園の全生徒に、あたいらの『バズり計画』が筒抜けだぜ」
超絶ゲーマー、山本マキが虹色に光るポーチを叩きながら毒舌を放つ。一人称は「あたい」。彼女はメタツッコミ担当として、この状況を「新規タイトル第一回にふさわしい導入」だと冷ややかに分析していた。
「あっち退くケロ! 三瀬峠から全力ダイブしたあたちが、この誤爆を逆手に取ってバズらせてやるケロ!」
三瀬峠の土着神の末裔を名乗る三瀬かえるが、幼いアバターを跳ねさせて乱入してきた。一人称は「あたち」。その背後には、フランスからの留学生エマ F. クサックが、慣れない日本語で必死にフォローに入っていた。
「わぉ! 放送事故は、あたし、三瀬村のPRチャンスだと思うデース! 幸来ちゃん、かえるちゃん、パニックはノーデース!」
「……誰もパニックになんてなってませんわ! わたくしの学園での立場が危ういだけですわ!」
顔を真っ赤にした和歌が合流し、スタジオの騒がしさは頂点に達した。フランスのクサック村にいるアイリス F. クサックや、杠みよも、画面越しにこの惨状を見守っている。杠みよ(ゆずりは みよ)は、フランスと日本の文化の違いに興味津々な様子で、「これが日本の『放送事故』という文化なのかな」とノートにメモを取っていた。
MUⅡプロダクションの事務所では、楠木こころが真っ青になっていた。彼女は基本的に一生懸命な女性だが、その熱意が空回りすることが多い。
「あ、あわわ……っ。マイクを切ったつもりが、ボリュームを最大にしてました。しかも、本日の予算を計算していたシートまで、画面共有で全世界に公開してしまって……。あれ、でも、なぜか視聴者数が一気に一万人を超えています?」
楠木こころは、タブレットを上下逆さまに持ちながら、信じられないものを見るような目でモニターを見つめた。計算がどんぶり勘定な彼女にとって、予期せぬ「数字」は恐怖よりも困惑を運んでくる。
「楠木さん……。あたいらのデビュー前の予算が、一円単位まで世界中にバレたぜ。これ、Sカンパニーに怒られるだけじゃ済まないぜ」
マキの容赦ないツッコミに、楠木こころはさらに椅子から転げ落ちそうになった。彼女は決して悪気があるわけではなく、ただ「今日こそは完璧にこなそう」と意気込みすぎたのである。
「も、申し訳ございません! すぐに削除します! あ、間違えて『ふなっこ増量キャンペーン』の広告をトップページに固定しちゃいました! まあ、これでお客さんが増えるなら、結果オーライですよね……?」
地方ののんびりした日常が、プロデューサーのドジという名のスパイスによって、一瞬にして世界規模のバズへと変貌しようとしていた。ど田舎VTuberたちが、この混沌としたサーガ・サーガ(SAGASAGA)の海をどう泳ぎ切るのか。それは、楠木こころの次の「うっかり」がどこに向かうかにかかっている。
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【MUⅡプロダクション 運営日誌より】
①本日の進捗:
・七海和歌、放送事故のショックで一時的にログイン速度が神速に達する。
・三瀬かえる、スタジオの壁をフナの昆布巻き柄に書き換える暴挙に出る。
・鹿島幸来の並べたふなっこ、なぜか高値で取引され始める。
②本日のアクシデント:
・楠木プロデューサー、全校放送と全世界配信を「勘」で同時に行う。
・第2SS学園の放課後が、一瞬でMUⅡプロの宣伝会場に変わる。
③楠木プロデューサーの一言:
「間違えて押したボタンから、新しい世界が開けることもあるんですよ!」
この物語は完全にフィクションであり、実在するVtuberの知っていただく目的で執筆したコメディーラノベです(笑)「#鹿島幸来」「#やまもとゆき」「#vtuber」で検索してみてください。良かったら、応援してあげてください。
ですが読者の皆さま、数多ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。




