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仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


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黄金の邂逅

北風が穏やかに吹く中、天童ナオヤとその一行は、ヴェルマリアの王宮の門をくぐった。

白い大理石の床には、黄金の太陽の紋章が一枚一枚に刻まれ、

その輝きはまるで太陽そのものが呼吸しているかのように反射していた。


左右の柱には光を吸うようなクリスタルが装飾され、

衛兵の姿はない。

そこにいたのは――

僧侶、職人、そして子供たち。

皆、彼らが通り過ぎるたびに静かに頭を下げた。

恐れからではない。

敬意からだった。


最初にその違和感に気づいたのはリンだった。

「……誰の目にも、憎しみがない。」彼女はささやいた。

ナオヤは拳を握りしめる。

「……それが一番、怖い。」


隣で歩くミヤビは沈黙していた。

空気は香と切りたての花の香りで満ちていた。

ここは戦場ではない。

まるで――聖堂だった。


彼らの前を歩くのは、金のマントを纏った忍――モモチ。

一言も発さず、ただ静かに先導していた。

「主は、“エクリプスの間”でお待ちです。」


扉が、ため息のような音を立てて開かれた。


内部――

天井は遥か彼方、闇に溶けて見えないほど高く、

中央には円形の大窓があり、朝日の光が差し込み、

玉座の上に完全な光輪を描いていた。


だが、その玉座は金でも宝石でもなかった。

石と木でできた、ただの椅子だった。


そこに座っていたのは――相沢ハルト。


黒い長衣に金の縁取り。

胸には「剣で裂かれた太陽」の紋章。

その眼差しは穏やかだが、軍隊よりも重い威圧を放っていた。


右手には、下を向き静かに微笑むカオリ・ミナセ。

左手には、水銀のような銀髪を光らせる竜人――オーレリア。


ハルトは一言も発さなかった。

名前も、過去も、裏切りも呼ばなかった。

ただ手を一つ、前に差し出した。


――語れ、と。


最初に沈黙を破ったのはユウトだった。

「……何をやったんだ、ハルト。」

その声は怒りに震えていた。

「三つの国を焼いて、人々を殺して……それが“救い”だとでも?」


ハルトは静かに答えた。

「――“偽らない”救い、だ。」


リンが前に出た。

「貴族を処刑して、王を替えて、人の心まで操作して……それが正義か!?」


「違う。」

ハルトは穏やかに言った。

「それは、“修正”だ。」


カオリが初めて口を開いた。

その声は優しく、しかし迷いなきものだった。

「あなたたちには理解できない。

彼は快楽で殺してるんじゃない。

私たちは、この世界の腐敗を見た。そして、それを浄化した。」


ナオヤが一歩、前に出た。

二人の視線が、何年ぶりかに交差した。

教室での嘲笑、森での墜落、助けを求める声――裏切りの記憶。


「なぜ、こんなことを……」

ナオヤの声は、苦しげだった。

「……ここまで壊す必要が、本当にあったのか?」


ハルトの答えは、ささやきにも似ていた。

「――この世界は、“壊れない限り”、耳を貸さないからだ。」


沈黙。


ハルトは玉座を立ち、階段をゆっくりと降りた。

その一歩一歩が、心臓の鼓動のように響く。


「俺たちがこの世界に来た時、選択があった。

“英雄”になるか、“人間”でいるか。

お前たちは拍手を選んだ。

……俺は“代償”を選んだ。」


ミヤビは一歩、後ずさった。

その瞳には涙が浮かんでいた。

「……こんなの、あなたじゃない……」


ハルトは彼女の前で立ち止まり、

憐れむような、柔らかな声で言った。

「何が?

約束を果たす人間?

君は、制度が生んだ傷を癒して、またその制度に仕えた。

――俺は、それを壊した。

……それでも俺が“怪物”か?」


ホールの空気が止まった。

響きさえも、息を潜めたようだった。


黙っていたカガミが、ようやく口を開いた。

「……俺たちに何を望む? ハルト。」


ハルトは静かに答えた。

「何も。」


「ただ、“見てほしい”。」


彼は手を差し出した。


「――七日間与える。

私の民と共に過ごし、彼らのパンを食べ、歌を聴き、学び舎を見てくれ。

それでも俺が“暴君”に見えるなら……

その時は、殺しに来い。」


カオリが一歩前に出て、深く頭を下げた。

「主は偽らない。

もし七日後、あなたたちが死を望むなら――

私がその剣へ、案内します。」


ナオヤは言葉を失って見つめていた。

かつて見捨てた男が、

今、彼らに“生きる道”を差し出していた。


ハルトは、かすかに微笑んだ。

「裁きは、剣で勝ち取るものではない。

――“真実”で勝ち取るものだ。」


彼らは鎖もなく、監視もなく、

そのまま広間を後にした。


歩きながら、リンがささやいた。

「……なぜ、殺さなかったの?」


カガミは静かに答えた。

「もう、その必要がないんだ。」


バルコニーから、ハルトはその背を見送っていた。

カオリが近づく。


「……誰か、あなたの側につくと思う?」


ハルトは目を閉じた。


「――関係ないさ。

たとえ彼らが俺を憎んでも……

“太陽が昇った”ことだけは、否定できない。」


黄金の風が、王宮の上を吹き抜けた。


そして世界は、長き時を経て――

ついに二つの“真実”の間に立たされた。


ひとつは、炎から生まれた正義。

もうひとつは、光を恐れる心が生んだもの。


――つづく。

読んでいただきありがとうございます。ぜひ他のストーリーも読んでみてください。よろしければ、良いか悪いか、感想などコメントを残してください。

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