「沈黙の射手たち」
一行は森の光の道を辿りながら前進した。
ルシアンは好奇心旺盛に辺りを見回した。セレーネはオーレリアの髪を弄んだ。
突然、エリンドールが鋭く腕を上げた。
「止まれ!」
しかし、遅すぎた。
シーッ、シーッ、シーッ…
木々の梢から矢の雨が降り注いだ。
香織はオーレリアを庇った。マグノリアはチェーンガンを構えた。アストラは影の結界を張った。
矢は…
そして、まるで見えない壁にぶつかったかのように、ほんの数センチのところで止まった。
ハルトは指を立てた。
「結界解除:暁の壁」
矢は役に立たず地面に落ちた。
香織は顔を上げた。
「奴らが我々を包囲している!」
そして、彼らは奴らを見つけた。
枝の間に隠れた、12人の細身の人影。
緑色の目が輝いていた。
弓は骨のように白く、
仮面は水晶から彫り出されたようだった。
彼らはサイレントアーチャー、エルフ王国の精鋭だった。
一人が冷たい声で言った。
「人間ども、止まれ。聖域に踏み込んでいる。」
マグノリアは舌打ちした。
「ええ、何の前触れもなく撃たれた時、いかに『神聖』か分かりますね…」
エリンドールは一歩前に出た。
「待って!私はエリン…」
彼女が言い終わる前に、二本の矢が彼女の耳をかすめた。
先頭の射手は軽蔑を込めて唾を吐いた。
「お前には名前はない。裏切り者め。」
感情的な打撃は目に見えていた。
エリンドールは視線を落とした。
セレネを抱きかかえたオーレリアは、静かに言った。
「悪意を持って来たのではない。子供たちもいるし…」
もう一人の弓兵が弓を引いた。
「人間というものは、常に悪意を持っているものだ。嘘つきとは交渉しない。」
香織は憤慨して前に出た。
「おい!俺たちは…」
彼女が言い終わる前に…
シュンッ
矢がかすめ、彼女の髪を一房切り落とした。
香織は歯を食いしばった。
「…もう終わりだ。」
先頭の弓兵が手を挙げた。
「撤退しろ。あと一歩でも踏み出せば、子供たちも含めて皆殺しにする。」
ハルトは自分の内側で何かが燃え上がるのを感じた。
それは怒りではなかった。
それは暁の帝王の本能だった。
周囲の光の色が変化した。
森全体が息を呑んだようだった。
ハルトは死に至る静寂の中で言った。
「次に放つ矢…
千倍返ししてやる。」
弓兵たちは即座に弓を引いた。
リーダーは答えた。
「人間はいつも自慢ばかりだ。…するな。」
ハルトは片手だけを挙げた。
そして、それは起こった。
✔ 森の光が彼に向かって曲がった。
✔ 空気が熱い液体のように震えた。
✔ 根が震えた。
✔ 木々自体がわずかに頭を下げた。
弓兵たちは驚きで目を見開いた。
ハルトは叫ばなかった。
爆発魔法を放たなかった。
攻撃もしなかった。
力のほんの一部を見せただけだった。
しかし、そのほんの一部でも森を反応させるには十分だった。
「私は戦いに来たのではない」ハルトは冷静に言った。
「だが、家族を脅かすような真剣な態度は許さない」
香織は寒気を覚えた。
マグノリアは歯を食いしばり、微笑んだ。
「ああ…皇帝陛下がいらっしゃるわね」
オーレリアは赤ん坊たちを抱きしめた。
アストラは真剣な表情のまま、皆の反応を一つ一つ観察していた。
空気は緊張で重苦しくなった。
弓兵たちの手の中で、矢が震え始めた。
先頭の弓兵は一歩下がった。
「あれは…あの力は…人間の力なの?」
エリンドールは力強く言った。
「よく聞け!この男は森の敵ではない!」
弓兵たちはためらった。
しかし、一人が呟いた。
「もし彼が本当のことを言っているのなら…」
先頭の弓兵はゆっくりと弓を下ろした。
「子供たちを見せてくれ」
ハルトは頷いた。
オーレリアは前に出て、セレネを抱き上げた。
マグノリアはルシアンを無事に運んだ。
弓兵たちが赤ん坊の目を見た時…
森は反応した。
✔ 葉がきらめいた。
✔ 風が止んだ。
✔ 柔らかな旋律が枝の間を流れた。
✔ 近くの木の幹に古代のルーン文字が輝いた。
弓兵たちは凍りついた。
一人が呟いた。
「壊れた光…」
もう一人が弓を落とした。
「予言は…現実だ。」
リーダーはひざまずいた。
「…我々は間違っていた。許してくれ。森が語ったのだ。」
リーダーはハルトを見上げた。
「人間の皇帝…エルフの国の女教皇が、すぐに会いたがっているでしょう。」
香織は唾を飲み込んだ。
マグノリアは呟いた。
「事態は複雑になってきた。」
オーレリアはハルトの手を握った。
ハルトは冷静に答えた。
「先導してくれ。準備はできている。」
弓兵たちは静かに木々の間を降りてきた。
森が裂け…
緑色の光の道が現れた。
エリンドールは恐怖と憧憬が入り混じった眼差しでその道を見つめながら、その後ろをついてきた。
「ハルト…覚悟しろ。女教皇は…私も恐れていた人物だ。」
一行は前進した。
背後の枝が閉じた。
そしてエルフの国は目覚め始めた。




