「世界から消えた王国」
その朝、帝国議会が開かれた。
ハルトは妻たちと共に座り、アストラ・ノクスは彼の右隣にいた。
テーブルの上には大陸の地図が置かれていた。
広大な地図で、山々、砂漠、海が描かれていた…
しかし、そこには空白があった。標識も、都市も、道路もない、隙間があった。
香織は眉をひそめた。
「あの空間はずっとそこにあった…でも、私は疑問に思わなかった。」
出産の余韻の残るオーレリアは、赤ん坊の一人を胸に抱きしめた。
「まるで誰かがあの場所を消してしまったかのよう…」
アストラ・ノクスは重々しく言った。
「消されたんじゃない。
孤立していたんだ。」
皆が彼を見た。
「エルフ王国は」と彼は続けた。「500年間、人間の地図には載っていない。
彼らは領土を霊的なベールで封印し、許可なく立ち入ることは不可能にした。」
マグノリアは苛立ちに拳をテーブルに叩きつけた。
「で、どうやって中に入るの?」
アストラはスクリーン越しに古代の本を滑らせた。
表紙は石化した樹皮でできていた。
「直接入る必要はないから。
まず…彼らを見つけなければならない。」
アストラは本を開いた。
ページには古代の、まるで生きているかのような文字がびっしりと書かれていた。
「500年前、エルフは人間とのあらゆる接触を断ち切った。
ルートを封鎖し、ポータルを破壊し、集合記憶から自分たちの居場所を消し去った。」
ハルトは眉を上げた。
「なぜ王国がそんな極端なことをするんだ?」
アストラは尊敬と懸念が入り混じった目で彼を見た。
「エルフは人間が破滅をもたらすと信じているから…
そして神々はもっと悪いと信じている。」
カオリは腕を組んだ。
「だから、たとえ太陽の光が当たっても、彼らは私たちを見たくないのよ。」
アストラは首を横に振った。
「それが矛盾なのよ、香織。」人間を見たくないからこそ…
我々の言うことに耳を傾ける理由を与えなければならない。
ハルトはすぐに理解した。
「つまり…ルシアンとセレーネの力のこと?」
アストラ・ノックスは頷いた。
「その通り。エルフたちはあの痕跡に気づくでしょう。
そして、沈黙は…
続けられないと気づくでしょう。」
オーレリアはセレーネを抱きながらゆっくりと立ち上がった。
赤ん坊は微笑んだが、彼女の瞳は再び柔らかな白い光を放っていた。
オーレリアは寒気を覚えた。
「ハルト…もし彼らの力が脅威を引き寄せるなら…
傍観するわけにはいかないわ。」
マグノリアは地面にブーツを踏み鳴らした。
「じゃあ、行こう!エルフが隠れているなんて、誰が怖がるの?」
アストラは冷静に彼女を見た。
「エルフは森の弓使いだけじゃない。
彼らは記憶と光と魂を操る存在なんだ。」もしちゃんと入らなければ…
邪魔をする者の存在を消し去ってしまうかもしれない。
香織は唸り声を上げた。
「存在を…消すって?」
アストラ:
「文字通りよ。まるで生まれてこなかったかのように。」
重苦しい沈黙が訪れた。
ハルトは深呼吸をした。
「では、無理やり入るのはやめよう。
目的を持って入ろう。」
彼は妻たちの方を向いた。
「子供たちのために、エルフを探し出す。
たとえ彼らが世界から消え去ったとしても…必ず連れ戻す。」




