「魂喰らいの印」
アストラ・ノックスはレアンドロスの遺体の胴体から砕けた氷を取り除いた。何も見つからないだろうと思っていた。傷一つない死体だった。
しかし、彼女はそれを目にした。
亡き王の胸には、アストラが地下洞窟で見たものと全く同じ、暗い紋章が刻まれていた。
不完全な円。
爪のような三本の線。
中央に、閉じた目のような点。
アストラは古代のエネルギーの脈動を感じた。
「まさか…この紋章はまさにそれだ。
覚醒に関係している。」
彼女は封印を発動させ、ハルトに連絡を取った。
「ハルト。遺体に何かがある。自分の目で確かめるべきだ。」
数時間後、ハルトはアガメントス帝国に到着し、アストラと会った。
二人は古代の知識の図書館へと足を踏み入れた。そこは皇帝と守護者だけが立ち入りを許された場所だった。
ハルトが手を伸ばすと、棚がひとりでに動き始めた。
「あの印は…
神々よりも古い存在に関係しているのよ」とアストラは言った。
ハルトは眉を上げた。
「世界の創造主よりも古い?」
アストラは黒い石の書物に手を伸ばし、一つを選んだ。
「ソウルイーター」
絶滅した種族…そう思っていた。
ハルトは本を開いた。
中央のページに、そのシンボルのイラストがあった。
全く同じだ。
「…同じものだ。」
アストラは続けた。
「物語によると、あの生き物は人を殺すのではない。
魂を吸い尽くし、命なき器と化させるのだ…
レアンドロスのように。」
ハルトは本を勢いよく閉じた。
「ということは、事故ではなかったということだ。
何者かが、あるいは何かが、強大な存在を狩っている。」
アストラは頷いた。
――そして原稿によると…
次の標的は「精神的成長の大きな可能性」を持つ者らしい。
二人は黙り込んだ。
二人は同じことを考えていた。
双子だ。
ハルトは歯を食いしばった。
「アストラ、あらゆる暗黒の痕跡、忘れられた神殿、そして騒動に目を光らせておくんだ。私の子供たちに近づく者はいない。」
アストラは頭を下げた。
「私も参加させて。」
その夜、ハルトは太陽帝国に戻った。辺りは温かみのある雰囲気だった。天空の松明が廊下を照らし、花茶の香りが漂っていた。
部屋に入ると、香織がバルコニーに座り、星空を眺めていた。
月明かりに照らされた彼女の顔は、穏やかながらも、どこか不安げな表情を浮かべていた。
「もっと時間がかかると思っていたよ」と彼女は振り返らずに言った。
ハルトが彼女に近づいた。
「すぐに解決したけど…小さな問題じゃないけどね」
香織はため息をついた。
「分かってるよ」 「君が入ってきた瞬間から、君のオーラにそれが見えたよ。
何か暗いものが動いているみたいだね?」
ハルトは彼女の隣に座った。
「ああ…もしかしたら、僕たちを狙っているかもしれない」
香織は彼の肩に頭を預けた。
「ハルト…僕はオーレリアほど強くもないし、マグノリアほど冷酷でもない。
でも、君に知っておいてほしいことがあるんだ」
彼は彼女を見た。
香織は顔を上げた。その表情は優しく、愛と脆さに満ちていた。
「敵が来ても、影が来ても、神が来ても… 君と赤ちゃんたちのために戦う。
たとえそれが僕を壊すことになったとしても。
たとえ負けたとしても。
だってここは僕の家族だから。
君は僕の世界なんだ。」
ハルトは深呼吸をした。
彼は彼女の手を握った。
「香織…君はいつも僕の最大の支えだった。
君の心はどんな武器よりも価値がある。
君に一人でこの危険を冒させたくない。
僕はずっと君と一緒にいる。」
彼女は微笑んだ。目に涙が浮かんでいた。
「じゃあ、何か約束して。」
「何でもいい。」
「この闇に一人で立ち向かわないこと。
必ず家に帰ってきてくれること。
僕たちのところに。」
ハルトは優しく彼女を抱きしめた。
「約束する。」
香織は彼の胸に額を寄せた…そして数日ぶりに、二人は心からの安らぎのひとときを分かち合った。




