「暁と月の到来」
早朝、オーレリアは腹部の鋭い痛みで目を覚ました。
「あ…ハルト…!」
彼はすぐに目を開けた。
「どうしたの?まさか…?」
オーレリアは息を呑んだ。
「たぶん…陣痛が始まったと思う…」
近くの椅子で眠っていた香織が、ハッとして起き上がった。
「陣痛?オーレリア、深呼吸して!」
マグノリアが髪を振り乱して入ってきた。
「もう?!でも、今日予定だったんじゃないのよ!」
オーレリアは顔をしかめた。
「赤ちゃん…日程なんて待たないで、マグノリア…」
香織はオーレリアに寄りかかった。
「ハルト、オーレリアを宮廷病院に連れて行って。お医者さんを呼ぶわ。」
ハルトはためらうことなくオーレリアを抱き上げた。
「大丈夫、ここにいるよ」
彼女は震えながら、ハルトの胸に頭を預けた。
「怖い…」
ハルトは彼女の頬を撫でた。
「分かってる。でも、一人じゃないんだ」
宮殿の病院は明るく照らされていた。
天使の医師セラフィエルは、神々しくも、人間の出産をするときの普通の医師のように、落ち着いて、プロフェッショナルで、温かく振る舞っていた。
「オーレリア様、落ち着いてください。子宮口が開いています…これは正常です」
香織は彼女の手を取った。
マグノリアは水と毛布を持ってきて、廊下にいる好奇心旺盛な警備員を追い払った。
ハルトはオーレリアの傍らにいて、陣痛で緊張するたびに髪を撫でていた。
オーレリアはハルトの手を強く握りしめた。
「あぁ…痛い…すごく痛い!」
ハルトは彼女を抱きしめた。
「僕も一緒だ。離さない。」
マグノリアが隅から呟いた。
「皇帝陛下がこんなに青ざめているとは思わなかった。」
香織が答えた。
「静かにして、タオルをもう一枚渡して。」
セラフィエルはもう一度確認した。
「もうすぐだ…オーレリア、私の声を聞いて。呼吸を…しっかりして…次の陣痛を感じたら…いきんで。」
オーレリアは緊張と痛みで泣きじゃくった。
ハルトは彼女の額にキスをした。
「完璧だ。
すごいね。」
香織は彼女の肩を抱いた。
マグノリアは彼女の背中を撫でた。
オーレリアは叫び声を上げた。
そして…
赤ちゃんの泣き声が部屋に響き渡った。
セラフィエルは微笑んだ。
「男の子よ!」
オーレリアは安堵の涙を流した。
ハルトは震える手で顔を覆った。
「息子よ…」
しかし、セラフィエルの言葉は終わらなかった。
「まだ一人いるわ、オーレリア。息をして。」
オーレリアは息を呑んだ。
「女の子…?」
「そうみたいね」とセラフィエルは答えた。「二人いるわ、予想通りね。」
オーレリアはハルトの手を握りしめた。
「ハルト…僕を置いて行かないで…」
「絶対に」と彼は囁いた。
また陣痛が始まった。
また泣き声。
そして、男の子の泣き声に、また別の泣き声が加わった。
セラフィエルは女の子をそっと抱き上げた。
「可愛い女の子だ。おめでとう。」
ハルトはまるで世界が止まったかのようだった。
オーレリアは純粋な安堵と感動で泣き始めた。
セラフィエルは赤ちゃんたちを自分の胸に抱いた。
二人の小さな子。
ピンク色。
泣いている。
生きている。
オーレリアは頬に涙を流しながら、二人を抱きしめた。
ハルトは自分の手でオーレリアの手を覆った。
「オーレリア…二人は完璧だ。」
香織は目を拭った。
マグノリアはただ「目にゴミが入った」と偽った。
疲れ切ったオーレリアは、双子を腕に抱きながら微笑んだ。
「男の子は…ルシアンと名付けたい。」
ハルトは優しく微笑んで頷いた。
「ルシアン・アイザワ。力強い名前だね。」
オーレリアは小さな女の子を見た。
「そして…セレーネになる。」
香織が近づいた。
「ルシアンとセレーネ…光と月。二人は完璧にお似合いよ。」
マグノリアは二人に身を乗り出した。
「美しいわ。
でも…セレネがもう、今にも戦いたそうな目で私を見ているのよ!」
オーレリアは疲れたように小さく笑った。
ハルトは彼女の隣に座り、3人を抱きしめた。
「ありがとう…家族をくれて。」
オーレリアは目を閉じた。何日かぶりに穏やかな気持ちだった。
香織は毛布をかけてあげた。
マグノリアはベッドの端に座り、微笑んだ。
「私たちは奇妙な帝国だけど…
こうして見ることができるのは、本当に美しいわ。」
皆が休んでいる間…
病院の外で影が動いた。
声が囁いた。
「後継者が生まれた。
さあ…次の動きが始まる。」
そして消えた。




