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仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


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『女王と太陽の影』

城壁都市は、完全な沈黙に包まれていた。


兵士も、民も、貴族も――

すべての視線が、処刑台に跪き、震える女王へと向けられていた。


アガメントス王は立ち上がり、神剣を高く掲げた。


「城壁の女王ヘレナよ。

お前は夫を裏切った。

王国を裏切った。

そして、その行いによって――数千の命が失われた」


ヘレナは涙に濡れた顔を上げ、叫んだ。


「違う……お願い……!

私は……そんなつもりじゃ……!

私は騙されただけなの……!」


群衆がざわめいた。


死を望む声。

迷いの声。

だが――裁きは、すでに決していた。


アガメントスは歯を食いしばる。


「今日、正義は下される」


剣を振り下ろそうとした、その瞬間――


王の背後に、音もなくハルトが現れた。


そして、囁く。


「……やれ」


アガメントスは剣を振り下ろした。


女王の首が落ちる。


群衆が悲鳴と歓声を上げた。


王国は、血によって刻まれた。


王は一切振り返らず、命じた。


「遺体を火葬にせよ。

裏切り者に、墓は不要だ」


兵士たちは、顔を失った遺体を運び去った。


だが――

誰一人として、知らなかった。


その身体が、本物の女王ではなかったことを。


処刑の数分前――


崩れた宮殿の裏、隠された路地で。


ハルトは手を伸ばし、白く輝くガチャ陣を展開した。


「神創術《完全複製》」


その前に現れたのは――

女王と寸分違わぬ存在。


同じ顔。

同じ涙。

同じ声。

同じ衣装。


本物の女王は、その背後で眠りの魔法により拘束されていた。


ハルトは憎しみも、慈悲もなく彼女を見下ろす。


「まだ殺さない。

お前の罰は……別だ。

そして、もっと重い」


眠る女王は震えながら呼吸していた。

迫る運命を、何も知らずに。


複製体の女王が、無表情で尋ねる。


「ご命令を、マスター」


ハルトは淡々と答えた。


「処刑台へ上がれ。

彼女の代わりに死ね。

抵抗はするな。

完璧に演じろ」


複製体は静かに頷いた。


「……はい、マスター」


そうして、処刑へと歩いていった。


その場にいたカオリは、唾を飲み込む。


「ハルト……本当に、そこまでする必要があるの?」


ハルトは振り返らずに答えた。


「アガメントスには正義が必要だ。

王国には象徴的な裁きが必要だ。

だが――彼女は」


眠る女王へ視線を向ける。


「まだ役目が残っている。

誰にも知られてはならない役目がな」


カオリは彼の腕に触れた。


「……あなた、こういう時、本当に怖いわ」


ハルトは目を閉じた。


「弱いよりは、マシだ」


処刑を終え、アガメントスは怒りを押し殺すように息を吐いた。


そこに、ハルトが待っていた。


王は率直に言う。


「ハルト。

支えてくれて感謝する。

これは……必要なことだった」


ハルトは短く答える。


「分かっている」


アガメントスは声を落とした。


「だが……

なぜ力を使って尋問しなかった?

なぜ他の道を示さなかった?

何か裏があると言っていたはずだろう?」


ハルトは、静かで危険な笑みを浮かべた。


「時には――

血を見なければ、人は正義を感じられない。

そして、あなたには

この傷を閉じる覚悟が必要だった」


アガメントスは拳を握る。


「……ハルト、ありがとう」


だが、ハルトは心の中で呟いた。


(感謝するな。

まだ……真実を知らない)


ハルトは次元扉を開き、カオリと共に進んだ。


そこには、魔法で作られた小さな牢獄。


本物の女王が、眠っていた。


ハルトは彼女を見下ろす。


「お前の罪は、恋をしたことじゃない。

気まぐれで、国を滅ぼしたことだ」


「そして今から――

違う形で、償ってもらう」


カオリが尋ねる。


「……彼女を、どうするの?」


ハルトは答えた。


「まず、目覚めさせる。

次に――

彼女抜きで世界が再建される様を見せる。

そして最後に」


「彼女の記憶を使い、

この争いを本当に引き起こしたものを暴く」


カオリは身震いした。


「……それ、死より残酷よ」


ハルトは頷く。


「だからだ」


女王は、ゆっくりと目を開いた。


混乱。

恐怖。


「……こ、ここは……?」


ハルトは一歩前に出た。


「お前の人生は、もうお前のものじゃない。

今から――

俺のものだ」


女王の悲鳴が響いた。


扉は、静かに閉ざされた。

ハルトが、征服された都市へと戻ろうとしていた、その時――


宇宙規模の震動が、海を揺るがした。


夜空に、巨大な眼が開く。


それは――神ではない。

怪物でもない。


それは……


原初存在プライモーディアル


あらゆる宗教が生まれる以前から存在していた者。

世界の「外側」に立つ、根源の意思。


その声は――

ハルトの魂の奥深くに、直接響いた。


『――今だ……

復讐の時だ』


ハルトは、歯を強く食いしばる。


カオリの身体が、恐怖で震えた。


世界は今――

かつて誰も見たことのない戦争の段階へと、堕ちようとしていた。

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