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仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


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「黄金の太陽、初めての血」

カオリ × ハルト


空が、赤く染まった。


エリンドロスの戦士王子が戦場へ降り立った瞬間、

その神装武器は眩いほどに輝き――

ハルトでさえ、胸を締めつけられるような圧迫感を覚えた。


ハルトは、笑った。


「……どれほどのものか、見せてもらおう」


だが――

甘かった。


いや、正確には……

あの神装武器が、異常だった。


槍が、振り下ろされる。


ハルトは剣で受け止めた。


CRACK


刃に走る亀裂。

黒い閃光。

そして――


SHUNK


ハルトの胸を、深い斬撃が貫いた。


血。


この世界に来てから――

初めて流した、本物の血。


衝撃に耐えきれず、

ハルトは膝をついた。


兵士たちは、凍りついた。


王子が、嗤う。


「なるほど……

“無敵”も、血は流すらしいな」


ハルトは歯を食いしばる。


痛みは……

違った。


肉体の痛みではない。

神槍に宿る何かが、

内側から燃え上がり、

心臓を喰らおうとしている。


大地が、震えた。


――その時。


「ハルト!!」


カオリが、

雷のように飛び込んできた。


裂けた軍服。

埃にまみれた身体。

荒い呼吸。


いつも強く、冷静だったその瞳が――

今は、激しく揺れていた。


彼女は膝をつき、

必死に彼を抱きしめる。


「いや……いや……

こんなの、嘘よ……」

「ハルト……見て……私を見て……」


ハルトは、

無理に笑おうとした。


だが――

血が、唇を伝う。


「カオリ……大丈夫だ……」


「違う!!」


戦場のどんな咆哮よりも大きな叫び。


「そんなこと言わないで!」

「嘘をつかないで!」

「その毒が……あなたを殺してる!」


声が、

震えて、砕けた。


涙が止まらず、

彼女が守ると誓った男の、

血に染まった胸へ落ちていく。


王子が、

とどめを刺すために槍を掲げた。


「死ね――黄金の太陽」


カオリは、

一瞬の迷いもなく立ち上がった。


剣先を、

真っ直ぐ敵へ向ける。


「――触れたら」

「殺す」


王子は、

思わず一歩退いた。


冷酷で計算高いカオリは、

そこにはいない。


いたのは――

崩れかけた心のまま、

殺す覚悟も、死ぬ覚悟も持った女だった。


ハルトが、

震える手を上げる。


「……カオリ……

泣かないで……」


彼女は、

はっと振り向き――


両手で彼の顔を掴み、

唇を重ねた。


優しいキスではない。

慎重なキスでもない。


恐怖と怒り、

長年押し殺してきた想いが溢れ出す、

必死で、震えるキス。


その温もりは、

神槍の毒よりも、

強くハルトの胸を打った。


唇が離れた後、

カオリは額を彼に預ける。


「ハルト……

愛してる」


「失いたくない……」

「あなたがここで死ぬなら……

私は、あなたと一緒に死ぬ」


ハルトは、

目を見開いた。


その告白は、

雷のように胸を打ち――


彼の内側で、

何かが沸騰し始めた。


滴る血が――

光を帯び始める。


カオリは、

さらに強く彼を抱きしめる。


「お願い……

一緒に戻って……!」

「……あなたが、必要なの!」

神槍が、再び燃え上がった。


王子は、

戦いを終わらせるために突進する。


「――死ね!!」


カオリが叫んだ。


「ハルト!!」


――その瞬間。


空気が、爆ぜた。


傷ついたハルトの身体から、

黄金のオーラが噴き上がり、

彼とカオリを包み込む。


毒は、霧のように蒸発し。

傷口は、血を止め。

足元の大地は、砕け散った。


ハルトが、目を開く。


――その瞳は、

夜明けに昇る二つの太陽のように輝いていた。


彼は、ゆっくりと立ち上がる。


「……カオリ」


彼女は、涙に濡れたまま見つめ返す。


「……うん……?」


ハルトは、

彼女の手を、しっかりと握った。


「俺も……愛してる」

「ありがとう……」

「俺を、連れ戻してくれて」


王子は、

顔面を蒼白にし、後退する。


「な……何者だ……お前は……?」


ハルトは、

ほとんど神に近い静けさで立ち上がり、

微笑んだ。


「――お前の、

最悪の悪夢だ」


黄金のオーラが、燃え上がる。


黄金の太陽は――

ついに、本当の目覚めを迎えた。


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