「エリンドロスの神子たち、降臨」
その大広間は、あまりにも広大だった。
金の紋様が刻まれた白い柱が並び、
天井には――生きているかのように、星座がゆっくりと巡っている。
王レアンドロスは、厳しい表情で
跪く二人の息子を見下ろしていた。
**第一王子 アステリオン
――《神星槍》**
目を閉じ、深く呼吸を整える。
淡い蒼の鎧が、松明の光を静かに反射していた。
高潔、規律、民に敬愛される存在。
誰もが認める、正統なる後継者。
王が口を開く。
「アステリオン、我が子よ……
お前の兄は、弱き心によってこの戦を招いた。
だが――終わらせるのは、お前だ」
アステリオンは頭を垂れた。
「御意に従います、父上。
我が国を守ります。
誇りのためではなく……義務として」
彼の傍らには、神装兵器が静かに横たわっていた。
《ステラリス・アイギス》
――刃の内部に、完全な星図を宿す神槍。
**第二王子 ノクサンダー
――《黄昏の影》**
もう一人の王子は、無言のまま座していた。
黒紫の髪が赤い瞳を覆い、
そこには常に、嘲りの光が宿っている。
身に纏う闇の外套は、
まるで意思を持つかのように、ゆっくりと蠢いていた。
王が鋭い視線を向ける。
「ノクサンダー」
「……ふん」
彼は顔を上げない。
「単独行動は許さん。
無意味な混乱もだ。
求めるのは制御と規律だ。聞いているな?」
ノクサンダーは、片側だけ口角を上げた。
「聞いたさ。
だが――従うとは約束しない」
重臣たちが息を呑む。
アステリオンは眉をひそめた。
「兄上……」
「何だ?」
ノクサンダーは顔を向ける。
「ネリシアでハルトが壊したものは、侮辱だ。
“黄金の太陽皇帝”が、戦争を盤上遊戯みたいに扱うのを
黙って見ていられるかよ」
王が杖を打ち鳴らす。
「黙れ!
お前たちは共に出る。
アステリオン、お前が指揮を執れ。
ノクサンダー、お前は――実行役だ。
エリンドロスの運命は、お前たち二人に託す」
二人は一礼した。
だが背を向けた瞬間、
アステリオンが小声で言う。
「ノクサンダー……憎しみで動くな」
返ってきたのは、刃のような笑み。
「憎しみじゃない。
――娯楽だ」
指を鳴らすと同時に、
神装兵器が
生きた影のように、歪んだ大鎌の姿で現れた。
二人の王子は、神殿の転送台へと歩み出す。
神光が降り注ぐ。
光と闇が爆ぜる中――
彼らの姿は消えた。
海岸は、なおも揺れていた。
レヴィアス・アルゲントゥスはゴーレムを海中へ沈め、
カオリが前線を指揮し、
モモチとリラが残敵を刈り取る。
ハルトは、冷静に戦場を分析していた。
オドリアスが近づく。
「島は、ほぼ制圧できる。
だが……王子は、そう簡単に諦めんだろう」
ハルトは空を仰いだ。
――感じたのだ。
最初は、微かな振動。
次に、眩い光……そして、同時に訪れる闇。
カオリが叫ぶ。
「ハルト! 何か来る!」
空が――裂けた。
降り注ぐ二本の柱。
一つは、小さな太陽のように輝く黄金。
もう一つは、光を呑み込む紫黒。
周囲の風が、渦を巻く。
兵士たちは震え上がった。
ミティは鰭のある手で顔を覆う。
ミラージュが舌打ちする。
「……見えるわ。
二つの神性反応。
強い……非常に強い」
フロストベインがライフルを構えた。
「味方?」
ハルトは息を吐く。
「いや。
王レアンドロスの息子たちだ」
BOOOOM
先に降り立ったのは、アステリオン。
片膝をつき、神槍を砂浜に突き立てる。
光の衝撃が、海岸全体を揺らした。
「黄金の太陽軍よ」
穏やかな声が響く。
「我はアステリオン・エリンドロス。
聖壁の守護者。
貴様らを止めに来た」
白いオーラが彼を包み、
まるで光の翼のように広がる。
カオリが歯を食いしばる。
「……こいつ、相当よ」
――その時。
BOOM
二つ目の影が落ちた。
優雅さなどなく、
砂浜が歪み、エネルギーが吸い込まれる。
ノクサンダーは立ち上がり、
無造作に砂を払った。
「退屈な場所だな。
まあいい……何人か殺してやる」
赤い瞳が、ハルトを射抜く。
「お前だ。
ネリシアのゴーレムを壊した奴。
ずっと顔を見たかった」
ハルトは自信に満ちて笑った。
「随分と、仕事が早い王国だな」
アステリオンが槍を掲げる。
「ハルト・アイザワ。
我らは永劫の戦を望まぬ。
今すぐ退け。
無益な虐殺は避けたい」
ノクサンダーが、闇の笑い声を上げた。
「そうそう、逃げろよ。
俺が飽きて、全部壊す前にな」
カオリが剣を抜く。
リラがライフルに魔力を込める。
モモチは影へと溶けた。
ミティは水を集め始める。
大気が、純粋な力で震えた。
ハルトは一歩、前に出る。
「エリンドロスの王子たちよ……
戦場へ、ようこそ」
海岸は、なおも震えていた。
レヴィアス・アルゲントゥスはゴーレムを海中へ沈め、
カオリが前線を指揮し、
モモチとリラが逃げ遅れた敵を確実に仕留めていく。
ハルトは静かに地形を観察していた。
そこへオドリアスが歩み寄る。
「島は、ほぼ我々のものだ。
だが……王子は、そう簡単には引かんだろう」
ハルトは空を仰いだ。
――感じたのだ。
最初は、微かな振動。
次に、閃光……そして、同時に訪れる闇。
カオリが叫ぶ。
「ハルト! 何か来る!」
空が――まるで引き裂かれるかのように、開いた。
降り注ぐ二本の光柱。
一つは、小さな太陽のように輝く黄金。
もう一つは、光を呑み込む紫黒。
周囲の風は、瞬く間に渦を巻き始める。
兵士たちは震え上がった。
ミティは鰭のある手で顔を覆う。
ミラージュが舌打ちする。
「……見えるわ。
二つの神性反応。
強い……とても強い」
フロストベインがライフルを構えた。
「味方?」
ハルトは静かに息を吐いた。
「いや。
王レアンドロスの息子たちだ」
BOOOOM
先に降り立ったのは、アステリオン。
片膝をつき、神槍を砂浜に突き立てる。
眩い衝撃波が、海岸全体を揺るがした。
「黄金の太陽軍よ」
穏やかな声が響く。
「我はアステリオン・エリンドロス。
聖壁の守護者。
貴様らを止めに来た」
白きオーラが彼を包み、
それはまるで、光の翼のようだった。
カオリが歯を食いしばる。
「……こいつ、強い」
――その瞬間。
BOOM
二つ目の影が落下した。
優雅さなどなく、
砂浜が歪み、エネルギーが吸い込まれる。
ノクサンダーは立ち上がり、
無関心そうに砂を払った。
「つまらない場所だな。
まあいい……何人か殺してやる」
赤い瞳が、ハルトを射抜く。
「お前だ。
ネリシアのゴーレムを破壊した奴。
ずっと顔を見たかった」
ハルトは自信に満ちた笑みを浮かべる。
「随分と、仕事が早い王国だな」
アステリオンが槍を掲げた。
「ハルト・アイザワ。
我らは永遠の戦を望まぬ。
今すぐ退け。
無益な虐殺は避けたい」
ノクサンダーが、闇の笑い声を上げる。
「そうそう、逃げろよ。
俺が飽きて、全部壊す前にな」
カオリが剣を抜く。
リラがライフルに魔力を装填する。
モモチは影へと溶けた。
ミティは水を集め始める。
大気が、純粋な力で震えた。
ハルトは一歩、前へ出る。
「エリンドロスの王子たちよ……
戦場へ、ようこそ」
つづく
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