「黄金の太陽による初撃と、禁断の海洋召喚」
夜明けが海を赤く染めていた。
まるで太陽そのものが、血を予告しているかのように。
ハルト、アガメトス、オドリアスは断崖の上から海岸を見下ろしていた。
ネリシア島は一見、平穏そのものだった。
白い家々、肥沃な丘、漁船が静かに揺れている。
だが、その静けさは真実を隠していた。
「この島は《城壁都市》の主要な食料供給地だ」
オドリアスが言った。
「ここを失えば、エリンドロスが持つ食料は二週間分しかない」
ハルトは静かにうなずいた。
「……なら、ここから始める」
彼の周囲には精鋭たちが揃っていた。
軍装に身を包んだ女隊長、カオリ。
沈黙を保ち、いつでも動けるモモチ。
鏡面の仮面を纏うレディ・ミラージュ。
海を注視するリリー・フロストベインと妹のセナ。
魔導ライフルを肩に担ぐリラ・フロストベイン。
そして、以前召喚された人魚ミティ――水の泡に浮かびながら。
さらにハルトの背後には、
新たに編成された――
帝国竜騎兵団。
アウレリアによって召喚された小型竜に騎乗する兵士たち。
すべては整っていた。
――その時。
KA-THOOOM
巨大な岩が浜辺から撃ち出され、断崖すれすれを通過した。
兵士たちが悲鳴を上げる。
アガメトスが歯を食いしばった。
「……ゴーレムか! あの忌々しい王子のゴーレムめ!」
敵は、ハルトが来ることを知っていた。
島はすでに強化されていたのだ。
ハルトは目を細める。
「ここでゴーレムを使うということは……
相当な力を持つ者が、直接操作しているな」
モモチが前に跳び出た。
「ハルト様。岩の投擲に一定のリズムがあります。
巨大ゴーレムが少なくとも三体。
一体は砂中に埋伏しています」
カオリが口元を吊り上げた。
「悪くない。肩慣らしにはちょうどいい」
だが――
ハルトは手を上げた。
まだ、攻めない。
まずは軍の機動力を確保する必要があった。
ハルトが右手を伸ばす。
黄金の魔法陣が現れ、光の渦として回転を始める。
「海での制海権が必要だ」
「……ミティだけでは足りない」
全員が後退した。
オドリアスは目を見開く。
「ま、まさか……ここで召喚する気か?」
ハルトは笑った。
「なぜダメなんだ?
海もまた、戦場だ」
封印が青白い光となって爆ぜた。
まるで星が砕け散るかのように。
深海から轟音が響く。
「GROOOOOOOOH!!」
水面が裂け――
巨大な武装海洋生物が姿を現した。
① レヴィアス・アルゲントゥス
――《海洋ダイヤモンドの巨神》
青い核を宿す、透明なダイヤモンドの巨体。
その姿は灯台のように光を反射していた。
能力:絶対潮汐
→ 船やゴーレムすら持ち上げる水柱を生成。
② オルフィエル
――《潮のヴァイオリニスト》
水のエルフ。
水晶のヴァイオリンを奏で、水圧を操る。
能力:潮流組曲
→ 音の波動で魔法防御を破壊する。
③ ドラカリオン
――《幼き海騎士》
気まぐれで子供っぽいが、忠誠心は絶対。
天青色の鱗の鎧と、輝くトライデントを携える。
能力:海洋共鳴
→ 水中の味方を強化し、敵を弱体化。
誰も言葉を失った。
ミティがぱちぱちと拍手する。
「ハルト様って、
かわいくて大きい召喚獣を同時に出せるんですね!」
カオリはため息をついた。
「……本当に、毎回やりすぎ」
ミラージュが仮面の奥で微笑む。
「これで……もう隠れる場所はないわね」
ハルトは浜辺――ゴーレムたちを指差した。
「レヴィアス・アルゲントゥス」
巨神が静かにうなずく。
「――奴らを、海へ押し込め」
巨大ゴーレムたちは再び岩を構えた。
だが――投擲する前に。
¡¡BOOOOOOOOOOM!!
城壁のような大津波が浜辺を飲み込んだ。
レヴィアスが両手で押し進める。
ゴーレムたちは水中に沈み、混乱する。
リラ・フロストベインがライフルを構えた。
「――標的、確認」
PAM—! PAM—! PAM—!
衝撃魔弾がゴーレムの核を撃ち抜く。
すでに変身を終えたフロストレインが、
氷嵐を操り、水中で敵を拘束した。
カオリが叫ぶ。
「前進!
城壁都市が援軍を送る前に浜辺を制圧しろ!」
モモチは消え、
次の瞬間、敵兵の背後に現れ――静かに喉を裂いた。
ミティが尾を振り、
水の触手で敵船を絡め取る。
言葉を発しないセナは、
隠れた動きを指差し、全員を導いていた。
ハルトは冷静に戦場を見渡す。
――すべて、完璧だった。
だが、その時……
魔法の鴉が、ハルトの前に舞い降りた。
その足には――
王家の封印が結ばれていた。
ハルトは封を破り、文を読む。
……表情が変わった。
それに気づいたアガメトスが問いかける。
「どうした?」
ハルトは低く答えた。
「王子が……
下位神に救援を要請した」
オドリアスが目を見開く。
「それなら……城壁が変化する可能性がある。
神の加護が――強化されるぞ」
ハルトは拳を強く握りしめた。
「……想定より、厳しい戦いになるな」
だが――
カオリは不敵に笑った。
「いいじゃない。
その分、私たちの“得点”も増えるでしょ?」
リラがウインクする。
「読者はね、
こういう“伝説級の逆境”が大好物なのよ」
つづく




