「黄金の太陽の憤怒と〈竜翼部隊〉誕生」
フロストベイン姉妹の冷徹な射撃と、ミラ・ミラージュの幻影が兵士たちを次々と倒していくのを見て、
プリンス・セロンは後ずさりした。
—ば、ばかな……! 怪物か、貴様ら……!
ローザが一歩前へ踏み出す。
その意味を悟ったセロンは――
逃げた。
霧の中へ駆け込み、倒れていく自分の兵を振り返りもせず。
—抵抗しろ! 時間を稼げ、愚か者どもォッ!
リリィは兵を二人撃ち抜いたが、王子はすでに姿を消していた。
—臆病者め…… リリィが唇を歪めた。
ローザは素早い手話で伝える。
「問題ない。ハルトはすでに察している」
ミラが頷いた。
—そうね……もう彼は“感じ取って”いるわ。
ハルトは突如、立ち上がった。
黄金のオーラが爆ぜ、床に亀裂が走る。
—……始まった。
中立島で裏切りだ。
カオリが即座に立ち上がる。
—リリィたちは!? 無事なの!?
—生きている。
だが――追われている。
マグノリアが鞭を鳴らす。
—場所を言って、王よ。あの島ごと踊らせてやるわ。
アウレリアが前に出た。
—それは必要ありません。
今回は……空から行きます。
ハルトは目を見開く。
—空……だと?
アウレリアは青く輝く魔法陣を展開した。
—この日のために、密かに準備していました。
大地が震えた。
風が吠えた。
そして――巨大な影が宮殿の上を横切った。
—アウレリア……お前……何をした?
帝国ハンガーの扉が開く。
ハルトは息を飲んだ。
金属製のドラゴンたち。
5体……10体……いや、15体。
赤い目、装甲翼、ガチャ魔力で強化された鱗。
その背に跨るのは――
帝国が密かに鍛えた精鋭兵たち。
アウレリアは胸を張る。
—彼らを〈天空の后たち(ヴァスタゴス・オブ・スカイ)〉と呼んでいます。
帝国初の航空竜騎部隊です。
竜たちは一斉に咆哮した。
カオリは後ずさる。
—いつ……いつの間にこんなものを!?
アウレリアは照れくさそうに尾を揺らした。
—暇なときに……です。
ハルト様が忙しい間、私は……あなたのための軍を造っていました。
ハルトは近づき、頬に手を当てた。
—アウレリア……
これは……
これはもう“戦力”を超えている。
アウレリアはうつむき、しかし嬉しそうに笑った。
—私は……
あなたの隣に立つにふさわしい者になりたかったのです。
ハルトは柔らかく答えた。
—もう十分だ。
これで今日、彼女たちの命が救われる。
ハルトは手を掲げた。
黄金のオーラが昇る太陽のように爆ぜた。
—天空の后よ!
中立島へ飛べ!
我が参謀たちを守り、邪魔するものはすべて砕け!
竜騎兵たちは胸に拳を当て、力強く応えた。
アウレリアは翼を広げ、咆哮した。
—航空部隊、発進――!
ドラゴンたちは次々と空へ舞い上がり、
黄金の竜巻のような風圧を残して上昇していく。
アウレリアは振り返り、ハルトを見つめた。
—ハルト様……必ずあなたの参謀たちを連れ戻します。
ハルトは確信に満ちた声で答えた。
—ああ、分かっている。
この部隊を率いるのは、お前だからだ。
アウレリアは微笑み、
そのまま主竜――青き巨竜ゼフィロンの背へと飛び乗った。
ドラゴンの大群が空を覆い尽くす。
そして――
霧の島は、太陽帝国の咆哮を味わうことになる。
—つづく—




