「二十人の後継者と、獅子神を背負う武具たち」
夜が降りた。
要塞都市アウレオン――獅子王レアンドロスの王都。
青い焔を灯した城壁が燃え上がり、大陸戦争の幕開けを告げていた。
獅子神ドラク=テルを祀る大神殿では、深い太鼓の音が鳴り響く。
レアンドロス王は戦槍を背に、静寂を従えて堂々と歩みを進めた。
周囲の兵士たちは王の姿を見るなり、一斉に膝をつく。
「父上、お待ちしておりました。」
立ち上がったのは二十人の子供たち。
戦、戦略、信仰――それぞれの道で鍛え上げられた王子と王女。
レアンドロスはその全員を誇らしげに、しかし重々しく見渡した。
「時は来た。
お前たちは二十の領域に分かれて進軍する。
抵抗する王国をすべて屈服させ……
我らを侮辱した敵への道を切り開け。」
二十人は沈黙のまま頷いた。
しかし、残された“本題”を理解していた。
レアンドロスは巨大な獅子神像へと手を掲げる。
「天の獅子よ、ドラク=テル。
我らはそなたを呼ぶ。
炎の冠を掲げ、この戦を見届け給え。
その力を、我らに。」
二十人の後継者は武器で大地を叩きつけた。
「ドラク=テルよ、我らに加護を!」
神殿に熱風が巻き起こり、
白い炎が巨像を包み込む。
そして――
どこまでも古く、どこまでも力強い声が響き渡った。
『レアンドロス……そして我が子らよ。
その戦は破壊を呼ぶ。
だが、その理由は正しきもの。
我は、お前たちの召喚に応えよう。』
白炎は二十の柱となり、王子・王女へと降り注いだ。
続けて、神は告げた。
『お前たち一人ひとりに、我が力の欠片を授ける。
だが忘れるな。
神具は――裏切りも失敗も許さぬ。』
光の中から、二十本の武具が浮かび上がる。
◆ 神具一覧
① アルクリオン — “純吼の剣”
敵の意志そのものを断ち切る。
② イグニルクス — “燦光の槍”
いかなる障壁も貫通する。
③ ヴァストラム — “灼地の戦槌”
局所的な地震を呼び起こす。
④ ルナリス — “白月の弓”
放たれた矢は必ず心臓を射抜く。
⑤ クロンテス — “時の盾”
触れたものの時間を遅らせる。
⑥ ステラリス — “星辰の杖”
流星と星の線を喚び出す。
⑦ ドラヴェル — “獣王の斧”
敵を倒すほどに力が増す。
⑧ オンドロン — “永潮の鎖”
相手を海流のように絡め取る。
⑨ イグニヴァル — “獅炎の篭手”
拳を生きた炎へと変える。
⑩ レルマル — “赫暁の槍”
神ですら防ぐことはできない。
⑪〜⑳:その他の神具
幻影の双刃、二重弓、獣を従える魔導書、嵐の鞭、双剣――
名は少なくとも力は等しく致命的。
子供たちはそれぞれの神具に手を伸ばす。
神殿全体が揺れた。
レアンドロスは槍を高く掲げ、吼えるように言い放つ。
「我が子らよ……
お前たちは、今この瞬間から私の代行者だ。」
二十人が声を合わせた。
「はい、父上!」
「ハルトを見つけ出せ。
奴の勢力を突き止め、奴を支援する島々を全て陥落させよ。
そして必ず――」
黄金の瞳が燃え上がる。
「奴を我らの前に跪かせろ。
できぬのなら――死ぬまで戦え。」
白炎が神殿を満たした。
二十人の継承者は神具を地に叩きつけ、咆哮する。
「獅子神に捧ぐ!」
「アウレオンのために!」
「我らの復讐のために!」
太鼓が鳴り響く。
軍船が動き出す。
大陸は二十の戦区に分割され、
それぞれに“獅子王の子”が向かっていく。
ついに――
本当の戦争が始まっていく。
机の上には手描きで再現された、
二十本の神具の設計図、
獅子神の魔法図式、
神殿から写し取った祝福のルーン――
が雑然と並んでいた。
アカシの目の下には深い隈。
背中は丸まり、瞳だけが異様に輝いている。
「神具……
古代神の加護……
マナを必要としない“純粋な力”……」
アカシは机に両手をつき、震える息を吐いた。
「もし……このエネルギーを再現できれば……
“獅子天神”の力をたった一欠片でも盗めれば……」
彼はひとりで笑い始めた。
乾いていて、どこか狂気の色を帯びた笑い。
「ガチャ王すら滅ぼせるゴーレムを作り出せる……!」
その瞳が暗く沈む。
「レアンドロス王は、私が失敗すれば首を刎ねると言ったが……
私の創造物が完成した暁には……」
アカシは小さく呟く。
「王も、神も、英雄も――誰ひとり止められはしない。」
そのとき、金属音が響いた。
コピーした《イグニルクスのルーン》が、
まるで神の気配に応じるかのように勝手に赤く燃え上がる。
アカシは一瞬後ずさったが……
すぐに、恍惚したように笑った。
「……そうか。
分かったぞ……」
「獅子神の力は――“生命燃料式魔術”と、完全に適合する……!」
彼は視線を横へ向ける。
そこには透明なカプセル。
中で一人の女性が眠っていた。
魂に刻まれた印。
“生体コア候補”として選ばれた存在。
「王たちは、これは誇りのための戦いだと言う……」
アカシの声は低く、静かで……恐ろしく冷たい。
「だが――私にとっては違う。」
その目は、確信と狂気の光で満ちていた。
「これは、私が神へ至るための階段だ。」
再びルーンが輝く。
アカシは、ためらいもなく触れた。
「獅子神よ……」
細く笑う。
「お前の炎が――
機械の“心臓”を燃やせるかどうか……試してみようじゃないか。」
次の瞬間。
工房全体が、爆ぜるような光に包まれた。
――続く――




