『大量召喚:ガチャ王の唯一無二(イレペタブル)部隊』
◆ 決戦の日の夜明け
風は冷たく、残酷で、塩気と予兆を含んで吹きつけていた。
地平線の向こうでは、イカロス・オメガが赤い魔導紋を脈動させながら、
まるで“機械の月食”のように迫ってくる。
アウレリアが不安げに呟いた。
――ハルト…今回は、今までとは比べ物にならないわ。
カオリも頷く。
――すべてを使うわよ。温存なんてもうできない。
ハルトは召喚書を閉じた。
その瞳は双つの太陽のように輝いている。
――ああ、分かっている。
だから今日…援軍を呼ぶ。
マルガリータがニヤリと笑った。
――援軍って…パトロン級?
ハルトは召喚書を掲げる。
《ガチャ召喚:レジェンダリー10連》
唯一無二部隊、降臨せよ!
大地が揺れた。
空が光の亀裂で裂ける。
そして――最初の影が現れた。
◆◆① 天空の幼騎士 ――《ルビー・メイデンティーヌ》
桃色の雲が弾け、
煌びやかな鎧を着た小さな少女がドサッと落ちてきた。
金のツインテール。
大きな琥珀色の瞳。
そして、身体より大きな剣を片手でズルズル引きずっている。
――ハルトにぃ! 呼んでくれたのね!
もう退屈で死ぬかと思った! ねぇ戦っていい? お菓子ちょうだい!
カオリ(震え声):
――こ、これが…騎士…?
ルビーは巨大剣を片手で軽々と振り上げ――
地面に叩きつけてクレーターを作った。
アウレリア(小声):
――…どうしてこんなに可愛いのに、こんなに怖いの?
◆◆② 静寂の狩人 ――《フロスト・リリーベインII》
冷気が地面を這い、
真っ白な髪を持つ狩人が現れた。
黒い戦闘帽、魔導装置付きのコート。
リラとよく似た紫の瞳。
リラが息を呑む。
――…お姉…ちゃん?
少女は軽く手を挙げて挨拶したが、何も喋らない。
セレス:
――声が…出ないの?
リラ:
――違う。
話したくないだけ。
世界最高のスナイパーよ…
リリーベインIIは天を撃った。
音はなかった。
だが遥か上空の雲が、花のように裂けた。
カオリ:
――…撃音すら聞こえなかった…
リラ:
――ええ。だから私は、ずっと勝てなかった。
◆◆③ ダイヤの巨神 ――《アルマゾス:クリスタル・タイタン》
大地が割れ、青い光柱が立つ。
二十メートルを超える“結晶の巨人”が姿を現した。
――オウ、暁ノ皇帝ヨ…我ヲ呼ビ覚マシタカ?
ハルト:
――アルマゾス。
相手はイカロス・オメガだ。
――了承。久方ブリニ、砕ク相手ガ欲シカッタ。
アウレリア(小声):
――…前の時代って…どれだけ古いの?
モモチ:
――好奇心で聞くと、踏み潰されるぞ。
◆◆④ 戦う歌姫 ――《セラフィン・アルコ=ルキス》
柔らかな旋律が空気を満たし、
光のヴァイオリンを持つ少女が降り立つ。
――ハルト様、参りました。
この戦場の“調律”、お任せください。
ミティ:
――彼女の音……純粋な魔力そのもの…!
セラフィンが弓を引く。
《星界ソナタ:光鎖の楽章》
全員の武器が光り始めた。
カオリ:
――っ…! 力が…昂ぶる…!
ハルト:
――彼女の音は戦場そのものを味方に変える。
◆◆⑤ ラスベガスの大魔術師 ――《レディ・ミラ・ミラージュ》
夜空にネオンが爆ぜる。
カードが舞い、光の階段が降りる。
――☆ 皆さ~ん! お待たせしました~! ☆
派手さと破壊が売りの、ミラ・ミラージュで~す!
カオリ:
――な、何なのこの人…?
マルガリータ:
――HAHAHA! 最高! 私より奇抜なやつ初めて見た!
ミラがカードを投げる。
タレットに。
防壁に。
爆雷に。
――さぁ~て!
あの鉄くずロボット、私のショーの“尺”になってもらいましょうか♡
すべての仲間が、彼の背後に集結した。
セレス。
ライラ。
アウレリア。
カオリ。
ミティ。
モモチ。
マルガリータ。
アルマゾス。
ルビー・メイデンティーン。
リリーベインⅡ。
セラフィーン・アルコ=ルーシス。
ミラ・ミラージュ。
――二度と同じ結果は出ない、奇跡の寄せ集め。
世界に一つしかない「当たり」だけで編成された、不可思議なる部隊。
大地が震え、
遠くでイカロス・オメガが咆哮する。
巨大な機械の怪物が、まるで昼を呑み込むように迫っていた。
ハルトは片手で召喚書を掲げた。
黄金の魔力が、彼の背で昇る太陽のように燃え上がる。
「聞け。
お前たちは全員――
代わりのいない存在だ。」
瞬間、黄金の魔法陣が広がり、
彼の召喚たちをまるで星座のように結びつけた。
「そして今日は……
世界に思い知らせる。
“完璧なガチャ”が何を意味するのかを。」
ルビーは大剣を振り上げて跳ね回り、
リリーベインⅡは音もなく弾丸を装填し、
セラフィーンは勇気を灯す旋律を奏で、
アルマゾスは島を揺らすほどの一撃を地に叩きつけ、
ミラ・ミラージュは光のカードを撒き散らし、
ライラは微笑みながら照準を合わせ、
セレスは喉に輝く魔力を満たし、
アウレリアは蒼炎と金炎をまとい、
モモチは影へ溶けるように気配を消し、
カオリは純白の刃を抜いた。
ハルトは、迫り来る巨大な影――
イカロス・オメガへ指を向けた。
「敵が来る。
――準備しろ。」
そして全員が、
奇跡と運命で構成された軍勢が、
同時に吠えた。
――続く――




