「青炎ナウクリア:島民たちの最初の抵抗」
◆ ナウクリア島 ― タラシオスとの契約直後
空気には、潮、魔力、そして恐怖の匂いが漂っていた。
ハルト、アウレリア、カオリ、マルガリータ、ミティ、ライラ、モモチ――
そして仲間たちがナウクリアの街を進むと、
人々は沈黙したまま見つめていた。
聖なるタラシオスがハルトにひざまずいた今、
誰も逆らう勇気など持てなかった。
……しかし、島の全員が納得しているわけではなかった。
屋根の上――何かが動いた。
カオリがそれを察知する。
「ハルト……動きがある。
あちこちから視線が来てる。」
ハルトは歩みを止めない。
「分かっている。
島はまだ戦えると思っている。」
ミティが眉をひそめた。
「シリオンだけがこの島を治めているわけじゃない。
別の派閥があるの……もっと過激なね。」
アウレリアが首をかしげる。
「傲慢な支配者より過激って……?」
ミティは肩をすくめた。
「“青風の子ら”。
海の支配こそナウクリアの使命だと信じ込む狂信的な軍事宗派よ。
彼らは決して他国との契約を受け入れない。」
ライラが銃を構える。
「なら、すぐに来るわね。」
一行が広場へ差し掛かった時――
フオオオオッ!
風に包まれた槍が三本、屋根から降り注いだ。
ハルトは一閃でそれらを真っ二つに切り裂く。
キィン! キィン! キィン!
カオリが叫ぶ。
「上だ!」
屋根から二十名ほどの戦士たちが跳び降りてきた。
青い装束、白い顔紋、結い上げた髪――
ナウクリア最精鋭の衛士 “ヘロス・ナウクリア”。
羽根の仮面をつけた隊長が叫ぶ。
「裏切り者シリオンめ!
異国の王など、ナウクリアには不要!
ここで死ね、外来者ども!」
ハルトは深く息をついた。
「説明するのも飽きてきたな。」
マルガリータが鎖付き銃を構える。
「じゃあ、私が説明してあげるわ。
“力”でね。」
鎖が蛇のように舞い、
バキィッ!
敵が二人吹き飛ぶ。
アウレリアが翼を広げ、青い炎が渦を巻く。
「踊りたいなら――相手になるわ。」
ゴオオオッ!
三人が竜巻のように壁へ叩きつけられる。
カオリは雷のように駆け――
シュンッ
三人の喉元へ刃が突きつけられ、即座に沈んだ。
だが――
隊長が一度だけ手を叩いた。
パンッ。
地面が震えた。
ミティが叫ぶ。
「古代の封印術よ! 下がって!」
ハルトの足元が光り出す。
地面に浮かぶ円――
“海息封断の陣”。
隊長が嗤う。
「ナウクリアに属さぬ者から、空気を奪う結界だ。
ここが貴様の墓となる!」
ハルトの呼吸が重くなり、膝が沈む。
アウレリアが突入しようとするが――
バンッ!
見えない壁が彼女を弾き返した。
「何——この魔術!?」
ミティが歯を噛む。
「領域魔術……本来はタラシオスが守っていた“起源の魔法”。
それを、この狂信者たちが盗んだのよ!」
ハルトが苦しげに顔を上げる。
隊長が嘲笑する。
「太陽の王も大したことはないな!
さあ、そのまま窒息して――」
ハルトは突然、笑った。
黄金の瞳が燃える。
「空気を奪う魔術……か。」
隊長が後ずさる。
ハルトがゆっくり立ち上がる。
「俺には――
炎の妻がいる。
海の召喚がいる。
そして、止まらない帝国がある。」
手を掲げる。
カオリが微笑む。
「……来たわね。」
黄金のガチャ円陣が展開される。
ハルトが叫ぶ。
「召喚ガチャ——
元素ロット:〈暴嵐の核〉!!」
圧縮された竜巻が結界内に生成される。
ヴォオオオオオオッ!!
封印陣が悲鳴をあげる。
隊長が叫ぶ。
「な、何だその力は——!?」
ミティが囁く。
「これは魔術じゃない……
“原初の力”……!」
ドガアアアアアアアアンッ!!
竜巻が内側から結界を破壊し、
隊長は壁へ吹き飛ばされた。
砂煙の中、ハルトが静かに立ち上がる。
「この領域は……俺を縛らない。
俺が——領域を縛る。」
アウレリア、カオリ、マルガリータが彼の背後に歩み寄る。
ライラは倒れた隊長に銃口を向け、
モモチはいつの間にかその背後に立ち、首元に刃を当てていた。
「降伏しなさい……
さもなくば、あなたも祖先みたいに“風”に還してあげる。」
隊長は荒い息を吐きながら唸る。
「断じて……降伏など……!
ナウクリアは海のもの……
太陽の王などに従うものか……!」
ハルトは冷静に彼を見下ろした。
「ならばナウクリアに学ばせよう。
海も……太陽の下で生きられるということを。」
その瞬間——
背後の空が、黒く染まった。
地平線に、巨大な“影”が迫ってくる。
ミティの目が大きく見開かれる。
「ハルト!
あれは船じゃない……
イーカロスよ!!」
島が揺れた。
ナウクリアの人々が悲鳴を上げる。
ヘロスの戦士たちは動揺して散り散りになる。
アウレリアが叫ぶ。
「ハルト! こちらへ向かって来るわ!!」
ハルトは剣を掲げ、黄金の瞳に炎を宿す。
「なら見せてやろう……
ナウクリアに……
“太陽王”と呼ばれる理由を。」
——続く——




