「終末の素材:アカシの秘匠鍛」
アルゴシアの堅牢なる王宮の地下深く──
衛兵たちは巨大な木箱を慎重に運んでいた。
箱の中には、鉱石、金属、そして神殿から回収された聖遺物がぎっしりと詰め込まれている。
衛兵たちはひそひそ声で話した。
衛兵1
「本当に……陛下はこの全部を、あの外来の男に渡せと?」
衛兵2
「王立錬金師でも使い切れない量だぞ……」
衛兵3
「アカシ様は、アルゴシアを永遠に守る“兵器”を作るらしい。」
衛兵1
「……それか、アルゴシアを滅ぼす兵器か。」
三人が口を閉ざした瞬間──
金属を叩くような足音が廊下に響いた。
アカシが姿を見せた。
ゆっくりと歩き、背中に手を組んだまま微笑んでいる。
だが、その瞳の奥には人間ではない“何か”が宿っていた。
アカシ
「運び込みは終わったかな?」
衛兵たちは急いで頭を下げた。
衛兵
「はっ、アカシ様。ご所望の品はすべて揃っております。
・オーラト火山の黒炎石
・王家鉱山の蒼鋼
・古代神殿の聖なる木材
・そして、ハルトに破壊された巨像ゴーレムの残骸──」
アカシは満足げに指を鳴らした。
アカシ
「素晴らしい。
アルゴシア王は想像以上に気前がいい。」
箱の蓋が開く。
鉱石はありえない色を放っていた。
深紅、深碧、毒のような翠、病んだ金の輝き──。
アカシが手をかざすと、素材たちはまるで彼を“知っている”かのように震えた。
アカシ
「これでようやく……始められる。」
衛兵
「……始める、とは……何を、でございますか?」
アカシは幼い子に語りかけるように首を傾げた。
アカシ
「アルゴシアの『守護』をね。」
だが彼の目は別のことを語っていた。
──すべての破滅を。
◆ 禁じられた工房にて
アルゴシア王はヘランドラとエヴァンダーを連れて工房へ入った。
アルゴシア王
「アカシ。
材料は揃った。そろそろ成果を見せてもらおう。」
アカシは穏やかに頷いた。
アカシ
「もちろんです、陛下。
ですが今日お見せするものは……まだ“最終兵器”ではありません。」
布が外される。
ヘランドラは息を呑み、後退る。
エヴァンダーは思わず喉を鳴らした。
机の上には、巨大なゴーレムの部品が、骨と聖木、脈動する金属と混ざり合って並んでいた。
エヴァンダー
「こ、これは……安全なのか?」
アカシ
「安全?
この世に『本物の安全』など存在しませんよ、王子。」
アルゴシア王は腕を組んだ。
アルゴシア王
「レアンドロスを倒せる兵器を作れ。」
アカシは楽しげに笑った。
アカシ
「レアンドロス……
アガメトス……
それに、ハルトまでも……」
脈打つ金属片を持ち上げ、目を細める。
アカシ
「私の創造は、そのすべてを超えます。」
◆ 組成の儀
アカシが両腕を広げる。
素材たちが浮かび上がった。
衛兵たちはたじろぎ、
ヘランドラは口元を押さえ、
エヴァンダーは剣の柄を強く握りしめた。
鉱石が震える。
骨が軋む。
聖木が光を流し、まるで血のように滴らせる。
アカシ
「大丈夫ですよ──」
彼の微笑は、怪物のものだった。
アカシ
「……すぐに終わります。」
部品が不可視の力で吸い寄せられるように合体していく。
轟音。
黒い火花。
腐敗した魔力。
金属は融合し、
骨は装甲に埋め込まれ、
聖木はまるで“生き物”の肉のように脈打つ。
エヴァンダー
「こんな……これは一体……?」
アカシは笑みを保ったまま答えた。
アカシ
「『命令』を必要としないゴーレムです。」
ヘランドラ
「な……何ですって!?」
アカシ
「思考し、
感情を持ち、
自ら破壊を選択する存在です。」
アルゴシア王は激昂した。
アルゴシア王
「そんなもの、私は頼んでいない!!」
アカシは氷のような目で王を見下ろし──
顎を指先で軽く持ち上げた。
アカシ
「陛下。
“帝国を倒す兵器”を求めたのは、あなたですよ?」
──どんな王でも子供のように扱うその仕草に、
王は震えた。
ゴーレムが唸り声を上げた。
病的な光が血管のような金属溝を走る。
ヘランドラ
「エヴァンダー! 下がりなさい!」
巨大な影が目を開いた。
二つの紅玉のような眼光──
生きている瞳 が輝く。
アカシが腕を伸ばした。
アカシ
「目覚めよ。」
ゴーレムは震え、
そしてアカシへと頭を垂れた。
エヴァンダー
「こ……これはもう、ゴーレムじゃない……!」
アカシは微笑んだ。
アカシ
「いいえ。
これは……」
眼光が燃え上がった。
アカシ
「──永劫の巨神だ。」
アルゴシア王は、その威圧感だけで膝をついた。
アカシは静かに囁く。
アカシ
「これがあれば……
アルゴシアは世界に挑める。」
そして、口元だけが笑う。
アカシ
「……あるいは、自滅するかもしれませんね。」
外の工房を離れた塔の上──
ひとつの影が、闇の中からその光景を見下ろしていた。
アウレリア(小声)
「ハルト……
これは、私たちの想像をはるかに超えているわ。」
──続く──
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