『王は戦を分かち合わない』
黄金の太陽宮の作戦室で、
ハルトはアイリスとクララが持ち帰った報告書に目を通していた。
アウレリア、カオリ、マグノリア、モモチがその背後に控えている。
アガメトス軍の進軍。
レアンドロスの招集。
従属する十二王の総動員。
アルゴシアの籠城。
アカシの暗躍。
すべてが重く、冷たく、静かに世界を揺らしていた。
カオリが進み出た。
カオリ
「ハルト、どうするの?
これは大規模な戦争だよ。
今介入したら――」
ハルトは彼女を見ず、手を上げた。
ハルト
「呼べ。」
アウレリアがまばたきをした。
アウレリア
「……アガメトスを?」
ハルト
「そうだ。
話がある、と伝えろ。」
数分後、
通信鏡にアガメトスが映った。
怒りで濡れた目。
疲れ切った顔。
それでも王の威厳は崩れていなかった。
ハルトは静かに告げた。
ハルト
「アガメトス。
報告は受け取った。
望むなら……
私が戦に入る。」
爆発のような沈黙。
アウレリアは固まり、
マグノリアは微笑み、
モモチは息を呑み、
アヤネは唇を噛んだ。
だがアガメトスは、
叫んだ。
アガメトス
「いやだ!!」
部屋の空気が凍りついた。
ハルトは眉をわずかに上げた。
ハルト
「……いらないのか?」
アガメトスは歯を食いしばる。
アガメトス
「これは“俺の戦だ”。
俺の名誉が泥に落ちた。
俺の王妃が裏切った。
敵はアルゴシアであって……
お前ではない。」
ハルトは数秒沈黙し――
ハルト
「助けは要らない、と?」
アガメトス
「お前の助けは……
今は受けられん。」
緊張がさらに増した。
カオリが声を上げる。
カオリ
「太陽王国の援軍を断るなんて、正気?
相手はアルゴシアとアカシなのに?」
アガメトスは彼女を見もしない。
アガメトス
「これは……
俺の血と、俺の敵の問題だ。
お前の軍など借りたら、
“俺の勝利”にならん。」
ハルトは机に肘をつき、淡々と言う。
ハルト
「誇り、か。」
アガメトス
「……名誉だ。」
ハルト
「飾り方が違うだけで、同じだ。」
炎が揺れた。
その時――
アガメトスの背後から大きな手が肩に置かれる。
レアンドロスだった。
その圧倒的な存在感に、
アウレリアでさえ息を呑む。
レアンドロス
「お前が……ハルト・アイザワか。」
ハルトは黙って見つめ返す。
レアンドロス
「太陽王国はずいぶん勢力を伸ばした。
だがこの戦は、お前のものではない。」
ハルト
「アカシが動いている。
介入する理由にはなる。」
レアンドロスは手を上げて遮る。
レアンドロス
「ならん。」
ハルトの目が細くなる。
レアンドロス
「これは“家の戦”だ。
帝国でも、異世界の王でもない。」
ハルトは指先で机を軽く叩き、思考する。
マグノリアが叫ぶ。
マグノリア
「ちょっと! 何様の――!」
ハルトが止める。
ハルト
「いい。」
アウレリアは驚きの声を漏らす。
アウレリア
「ハルト……?」
ハルトは小さく微笑む。
ハルト
「両方が拒むのなら――」
レアンドロス
「お前を要らぬ。
来るなら“敵”として扱う。」
少女たちは一斉に叫んだ。
カオリ
「はぁ!? どういうつもりよ!」
レアンドロスは微動だにしない。
レアンドロス
「他国の王が、私の戦に口を挟むことは許さん。」
ハルトは書類を閉じ、
帝王の声で言い放つ。
ハルト
「了解した。」
アガメトスの表情が動く。
ハルト
「お前たちの戦だ。
名誉を取り戻せ。
私は……待とう。」
レアンドロス
「賢明な判断だ。」
しかしハルトは――
最後に微笑み、鋭い声で告げた。
ハルト
「ただし、覚えておけ。
もしアカシが“均衡”を壊すなら……
その時は、許可なく介入する。」
空気が震えた。
レアンドロスは初めて微笑む。
レアンドロス
「……それは、面白い。」
通信が切れた。
少女たちは騒然とする。
マグノリア
「本当に放っておくの!?」
カオリ
「信じられない……!」
アウレリア
「ハルト……戦わないの?」
ハルトはゆっくり振り返った。
ハルト
「戦わない。
今はな。」
アヤネ
「じゃあ……どう動くの?」
ハルトは地図に歩み寄り、
静かに指を置いた。
ハルト
「見守る。
学ぶ。
そして……敵の“隙”を待つ。」
少女たちは息を飲んだ。
ハルト
「その時が来れば――
太陽王国は、
神の如く介入する。」
一人の伝令が、汗を滴らせながら部屋へ飛び込んだ。
伝令
「ハルト様!!
予想外の――事態です!!」
ハルトはゆっくりと顔を上げる。
ハルト
「何が起こった?」
伝令は息を切らしながら報告した。
伝令
「アルゴシアが……
アカシが造り上げた“巨大ゴーレム”を起動しました!
これまでのどの機体とも異なる……未知の兵です!」
その言葉に、
ハルトの口元がわずかに歪む。
暗く、静かに、鋭く。
ハルト
「……思ったより早く、均衡が崩れたな。」
彼の瞳に、戦の気配が宿る。
――続く――
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