『従属王の評議会』
夜は、レアンドロスの野営地に静かに降りた。
だが、それは“ただの夜”ではなかった。
赤と金の巨大な天幕が立ち上がり、
その中央にはレアンドロス家の紋章――
黒い太陽を貫く一本の槍。
アガメトスは胸に渦巻く怒りを押し殺しながら、
兄レアンドロスの隣を歩いていた。
レアンドロス
「今夜、お前は知るだろう。
私の征服の裏で動く“真の力”を。」
◆天幕の内側
中へ入ると――
十二の石の玉座が円形に並んでいた。
そしてそのすべてに、かつてレアンドロスに敗れた王たちが座っていた。
擦り切れた冠。
砕けた誇り。
かつては挑む瞳。
だが今は――ただ従うだけ。
レアンドロスが入ると、
全員が即座に立ち上がった。
王たち
「レアンドロス王。」
レアンドロスは軽く手を上げた。
レアンドロス
「座れ。」
十二人の王は忠実に従う。
アガメトスは喉を鳴らした。
その“絶対の服従”が骨の髄まで震えさせた。
レアンドロスは最も高い中央の玉座に座る。
そして、重々しく口を開いた。
◆レアンドロスの宣告
レアンドロス
「“黒陽の下の大地”の諸王よ。
呼び寄せたのは……一つの侮辱があったからだ。」
十二人の王は一斉に身を固くした。
オルムス王
「一体…誰がそのような無礼を?」
ライリサ女王
「陛下の血統に盾突く者がいると?」
レアンドロスは槍を持ち上げ、
アガメトスを指した。
レアンドロス
「我が弟が――
アルゴシアの城壁都市に侮辱された。」
ざわめきが走る。
ザソール王
「アルゴシア……
“決して落ちなかった城”……?」
ライリサ女王
「南の帝国さえ破れなかった要塞です。」
レアンドロスは槍を床に突き立てた。
ゴッ……!
天幕全体が震えた。
レアンドロス
「だが――
私なら落とせる。」
沈黙。
重すぎる沈黙。
レアンドロス
「そしてお前たちが……
その腕となる。」
王たちは息を呑んだ。
ヴァールラン王
「アルゴシアへ進軍なさると……?」
オルムス王
「共同包囲戦……ですか?」
ライリサ女王
「殲滅戦を……?」
レアンドロスはゆっくりと笑った。
その笑みは、アガメトスでさえ背筋を冷やした。
レアンドロス
「戦ではない。」
身を乗り出し、低く告げた。
レアンドロス
「“戒め”だ。」
空気が張り詰めた。
レアンドロスは広げられた地図に歩み寄る。
レアンドロス
「アルゴシアは裏切り者ヘランドラを匿い、
第二王子エヴァンダーはアガメトスに牙を剥いた。
さらに……」
槍の柄で地図を叩く。
ドンッ!
レアンドロス
「あのアカシ――
ゴーレムの操り主を受け入れた。」
王たちは一斉に顔色を失う。
ザソール王
「奴が動けば……災厄が始まる。」
ライリサ女王
「協力など……正気とは思えません。」
レアンドロスは言い放つ。
レアンドロス
「ゆえに――
明朝、我らはアルゴシアへ進軍する。」
そして冷たく言い渡した。
レアンドロス
「お前たち全員、同行せよ。」
オルムス王
「も、もし……拒めば……?」
レアンドロスはゆっくりとその王を見た。
その目は“処刑台”より冷たい。
レアンドロス
「ならば再び征服する。
今度は――
ひとりも残さず。」
王は蒼白になり、膝を折った。
オルムス王
「無礼……お許しください……
全軍をもって従います……!」
レアンドロスはアガメトスの肩に手を置く。
レアンドロス
「弟よ。
十二の王が共に進めば――
お前の名誉は必ず取り戻される。」
アガメトスは震え、
涙をこらえながら頷いた。
アガメトス
「兄上……
ありがとう……本当に……」
レアンドロスは静かに微笑んだ。
レアンドロス
「これはお前のためだけではない。
我らの“血”のためだ。」
その瞬間、
十二人の王が槍を地に叩きつけた。
ガンッ! ガンッ! ガンッ!
従属の誓いだった。
一人の伝令が、息を切らしながら天幕へ飛び込んだ。
伝令
「レアンドロス王!!
重大な報せです!!」
レアンドロス
「申せ。」
伝令は喉を震わせながら言葉を続けた。
伝令
「アルゴシアが……
新型のゴーレムを起動させました。
我々の識別では……“不明な兵種”です。」
アガメトスの目が大きく見開かれる。
レアンドロスは、逆にゆっくりと微笑んだ。
レアンドロス
「……面白い。」
天幕の空気が凍る。
――続く――




