『アルゴシアの城壁とアガメトス王の怒り』
伝令は王アガメトスの前で膝をついた。
伝令
「陛下……!
女王ヘランドラは逃亡しました……
“城壁の王国”アルゴシアへ。」
アガメトスの拳が強く握られ、
額の血管が震える。
アガメトス
「……誰と逃げた?」
伝令
「アルゴシア第二王子……エヴァンダー殿下と共に。」
その瞬間、空気は鉄のように重くなった。
アガメトスは咆哮した。
アガメトス
「異国の王子風情が……
我が“王妃”を奪っただと!!」
兵士たちは恐怖で後ずさる。
震える声で、老参謀が進み出た。
参謀長
「陛下……
アルゴシアは並の敵ではありません。
七百年、あの城壁は一度も落ちておりませぬ。」
アガメトスは目を閉じ、深く息を吸い――
静かに呟いた。
アガメトス
「……ならば、助けを借りるしかない。」
将軍たちは困惑して互いを見合う。
アガメトス
「我が兄……
“西原征服王”レアンドロス。
奴と共に……アルゴシアを滅ぼす。」
◆ アルゴシアにて
巨大な城壁都市アルゴシアでは、
エヴァンダー王子と女王ヘランドラの到着を
数千の民が歓声で迎えていた。
アルゴシア王――
白髪で背の高い威厳ある王が、両腕を広げて迎える。
アルゴシア王
「よく来た。
我が家は、そなたらの“避難所”だ。」
ヘランドラは頬を赤らめて頭を下げる。
エヴァンダーは満足げに微笑んだ。
だが、その場を裂く怒号が響いた。
城の大扉が激しく開き――
怒りに燃える男が踏み込む。
アルゴシア第一王子。
エヴァンダーの兄である。
第一王子
「エヴァンダー!!
お前は……何をしでかした!!」
エヴァンダーは俯き、震える声で答えた。
エヴァンダー
「……彼女を助けたかっただけだ。」
第一王子
「助けた?
お前のせいで“戦争”が始まる!
敵国の王妃を攫うとは……正気か!!」
ヘランドラの顔が強張る。
第一王子
「アガメトスは恐れられた王だ。
そして奴の兄レアンドロスは……
“交渉”などしない。」
その時――
ひっそりと、しかし圧倒的な存在感を放ちながら
一人の男が入ってきた。
アカシ。
アカシ
「アルゴシア王よ。
私は……“守り”を提供しに来た。」
アルゴシア王の眉がひそむ。
アルゴシア王
「誰から守れと言うのだ?」
アカシは薄く笑う。
アカシ
「アガメトスから。
レアンドロスから。
……そしてハルト・アイザワから。」
エヴァンダーは息を呑んだ。
第一王子
「信じるな!
こいつは危険だ!」
アカシ
「アルゴシアは確かに落ちていない。
だが、その城壁は……
これから来る“力”を防げない。」
全員の背筋に冷たいものが走る。
アカシは光る羊皮紙を取り出した。
アカシ
「だが……私を迎えるなら、
“ゴーレム”を提供しよう。
あれらがあれば――誰もこの城には触れられぬ。」
アルゴシア王は を受け取る。
静かに宣言する。
アルゴシア王
「今日より、アカシはアルゴシアの“同盟者”である。」
第一王子は絶叫した。
第一王子
「……今、我らは死刑判決に署名したんだぞ!!」
アカシはただ、妖しく微笑んだ。
一人の護衛が、汗だくのまま大広間へ飛び込んだ。
護衛
「し、至急の伝令です!」
アルゴシア王
「申せ。」
護衛は震える手で巻物を差し出す。
護衛
「アガメトス王軍からの書状……
内容は……」
護衛はごくりと唾を飲み込んだ。
護衛
「『ヘランドラを返還し、
エヴァンダーを差し出せ。
応じぬなら――アルゴシアを滅ぼす。』
……と。」
大広間は、一瞬で凍りついた。
誰もが言葉を失う。
そして――
アカシだけが、
その目に氷のような笑みを浮かべた。
――つづく――




