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仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


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「ヘランドラと第二王子――城壁都市に落ちる影」

ハルトがオリスロスへ向かい、

アガメトスが山を下っていたその頃――


城壁都市テルマリスでは、

別の物語が静かに動き出していた。


黒い統率のマントをまとった王妃ヘランドラは、

高いバルコニーをゆっくり歩いていた。

そこからは、何世紀もテルマリスを守ってきた

巨大な城壁が一望できる。


彼女の隣には、ひとりの若い男がいた。


背が高く、

品があり、

いつもどこか余裕ある笑みを浮かべている――


テルマリスの第二王子、エヴァンダー。


エヴァンダー

「ヘランドラ王妃。

 あなたが歩くだけで、この城壁は美しく見える。」


ヘランドラは眉をひそめるが、距離は取らなかった。


ヘランドラ

「エヴァンダー……お前はいつもそんなに軽口を叩くの?」


エヴァンダーは微笑み、軽く頭を下げた。


エヴァンダー

「目が眩むほどの美があれば、自然と口も軽くなります。」


王妃は視線を落とした。

若い頃から甘い言葉に惑わされぬよう教えられてきた。


だが、エヴァンダーの言葉は甘くない。


危険で、

強くて、

そして……誘惑的だった。


エヴァンダーはバルコニーの縁で立ち止まった。


エヴァンダー

「アガメトスはあなたの息子を連れて旅立った。

 今、王国のすべてはあなたの手にかかっている。」


ヘランドラは深く息を吸う。


ヘランドラ

「……そうね。

 私が誤ればイリアンドロスは崩れる。

 私が倒れれば、民は死ぬ。」


エヴァンダーは彼女を真剣に見つめた。


エヴァンダー

「だからこそ、あなたは魅力的なんです。」


ヘランドラは横目で彼を見る。


ヘランドラ

「“魅力的”?

 既婚の王妃にそんなことを言う理由は何?」


エヴァンダーは一歩近づく。


エヴァンダー

「――檻の中の強い女ほど、男の目を引くものはない。」


ヘランドラは反射的に後ずさった。


ヘランドラ

「エヴァンダー、そんなこと言わないで。」


エヴァンダー

「なぜ? 真実でしょう。」


沈黙。

風だけが大壁に響く。


エヴァンダーは声を低くした。


エヴァンダー

「王国はあなたにかかっている。

 家族は遠く離れた場所にいる。

 そしてあなたは――

 “孤独”だ。」


ヘランドラは唇を噛む。


胸の奥が痛む。

否定できなかった。


エヴァンダー

「もしアガメトスが死ねば……

 もしハルトに敗れれば……

 あなたの運命は一変する。」


ヘランドラ

「……死なないわ。」


エヴァンダー

「本当に?」


王妃は目を閉じた。


本当は、確信などない。

ハルト・アイザワは“帝国を滅ぼした怪物”。


エヴァンダーがさらに一歩近づく。

その体温が触れそうな距離で囁いた。


エヴァンダー

「ヘランドラ……

 もし、味方が必要になった時。

 逃げ場が欲しくなった時。

 あるいは――

 “女”として扱われたいと思った時は……」


彼はそっと彼女の手を取った。


エヴァンダー

「私を頼ればいい。」


ヘランドラは目を見開く。

鼓動が速すぎて苦しい。


ヘランドラ

「エヴァンダー……私はあなたの同盟王の妻よ。

 あなたの“兄”の盟友なのよ。」


エヴァンダーは口元をゆるめる。


エヴァンダー

「イリアンドロスの同盟など、風次第で変わる。

 ――心も同じだ。」


ヘランドラは震えながら後ずさった。


ヘランドラ

「危険よ……これは。」


エヴァンダー

「価値あるものは、いつだって危険です。」


エヴァンダーはわずかに身を傾けた。


キスではない。

抱擁でもない。


――それより恐ろしい、“予告”だった。


エヴァンダー

「ハルトは来る。

 アガメトスでは止められない。」


ヘランドラの顔が青ざめる。


エヴァンダー

「この国が落ちれば……

 誰が生き残るかは明白だ。


 テルマリスの壁は決して崩れない。

 そして――

 その頂点に立つのは私だ。」


ヘランドラは言葉を失う。


エヴァンダーは手を差し出した。


エヴァンダー

「その時……

 あなたは私の隣を歩くのか?」


王妃は何も返さなかった。


だが――

その手を、拒まなかった。

その時、ひとりの衛兵が

汗だくで駆け込んできた。


衛兵

「ヘランドラ王妃っ!

 緊急の知らせです!!」


ヘランドラは即座に振り返る。


衛兵

「こ、巨大なゴーレムが……

 国境を越えました!

 しかも……“アカシ”と署名された伝言を携えて……!」


エヴァンダーはゆっくりと笑みを浮かべた。


エヴァンダー

「どうやら――

 あなたの運命は、思ったより早く近づいているようだ。」


ヘランドラの背筋に、冷たい震えが走った。


―章 終―

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