「レヴィウムの空に輝く太陽 ― 帝国を変えた演説」
帝都は静まり返っていた。
普通の静けさではない。
深く、重く、まるで世界そのものが息を止めているような沈黙。
城壁は崩れ、
緋色の帝国旗はもはや風になびかず、
帝国軍は武器を投げ捨てていた。
しかし最後の宣告だけは、
まだ誰にも知らされていなかった。
そのとき──
ゴォォォォン……!
ゴォォォォン……!
ゴォォォォン……!
紅の宮殿の鐘が鳴り響いた。
数千、数万の市民が中央広場へと集まる。
恐怖、困惑、希望、震え――
帝国の運命が決まる瞬間を誰もが理解していた。
宮殿の扉が大きく開く。
まず姿を現したのは仲間たちだった。
赤いマントを揺らすカオリ。
武器を構えたままのマグノリア。
誇り高く歩くアウレリア。
静かな覚悟を宿すアヤネ。
左右を固めるクララとアイリス。
民衆がざわめく。
「……太陽の従者たち……」
「隣国の英雄たち……」
そして――
彼が現れた。
ハルト。
大階段の頂点に立ち、
黄金のマントを光らせ、
揺るぎない静かな気配を放つ男。
世界そのものが彼を王として認めたような存在。
広場は完全に沈黙した。
ハルトは片手を上げる。
その瞬間──
ざわめきは消えた。
◆ 演説
ハルトは一歩、前へ。
その声は静かでありながら、
帝都全体に響き渡るほど強かった。
ハルト
「レヴィウム帝国の市民たちよ。
汝らの皇帝、アウレリアーノ五世は……
自らの剣と自らの過ちによって倒れた。
今日をもって、
恐怖と血で築かれた統治は終わりを迎える。」
広場が息をのむ。
ハルト
「帝国は世界に戦争を仕掛けた。
我が大地にも刃を向けた。
民を捨て、兵を犠牲にし、
ただ己の誇りのために破滅へと進んだ。」
彼は手を広げる。
ハルト
「だが、私は汝らを滅ぼしには来なかった。
私は失われたものを取り戻しに来た。
奴隷を求めに来たのではない。
貢物を要求しに来たのでもない。
復讐のために剣を掲げたのでもない。」
沈黙が、さらに深く落ちた。
ハルト
「私は、ハルト・アイザワ。
ここに宣言する。
レヴィウム帝国は解体される。
そして、新たな『自由の国』がこの地に生まれるのだ。」
人々がどよめき、涙が溢れ、膝をつく者もいた。
しかしハルトはまだ終わらない。
ハルト
「皇族は拘束した。
戦争犯罪に関わった貴族も同様だ。
だが、市民よ。
お前たちには罪はない。
暴君の選択の責任を負う必要はない。」
嗚咽があちこちで響く。
アウレリアが前に出る。
アウレリア
「聞きなさい!
ハルトは征服者ではない。
彼は、この大地に光をもたらす者だ!」
歓声が、泣き声が、祈りが入り交じる。
ハルトは空を見上げ、
そして民へと視線を戻した。
ハルト
「今日、圧政は終わる。
今日から、子供たちは奪われない。
今日から、血筋で人生が決まることはない。
レヴィウムは沈んだ国ではなく、
『太陽が昇る新しい未来の始まり』として記憶されるだろう。」
黄金の光が彼の背に広がった。
ハルト
「私が導こう。
太陽の名のもとに。
新たな時代へ。」
広場は爆発した。
歓声、嗚咽、祈り、
生まれ変わった帝国の息吹が、
空へと昇っていった。
少年の声と、帝都に生まれた希望
群衆の奥で、
ひとりの少年が震える声で叫んだ。
少年
「ハルト様!
ぼ、僕たちを……守ってくれますか!」
ハルトはその声に気づき、
ゆっくりと少年の方へ視線を向けた。
そして――
とても優しい微笑みを浮かべた。
ハルト
「この世界に光がある限り……
私はお前たちを守ろう。
それが、私の約束だ。」
その言葉を聞いた瞬間――
母親たちは涙を流し、
兵士たちは槍を地面に落とし、
市民たちは全身で拍手を贈った。
荒れ果てた帝都。
燃え尽きたはずの街。
しかしその中心で――
何年ぶりかの希望が、生まれた。
―続く―




