「継承の剣 ーー 黄金の太陽が進む道」
帝国レヴィウムの首都の空は、不吉な深紅に染まっていた。
警鐘は乱れ、街全体が狂気に沈んでいくようだった。
◆ 帝城・緋宮殿 地下回廊
アウレリアーノ五世は、誰にも知られていない秘密の通路をゆっくりと歩いていた。
足取りは重く、
瞳は虚ろ。
手にはまだ、リリアーネの置き手紙が握られている。
アウレリアーノ
「……リリアーネ……
ロガン……セリアンヌ……
なぜ……私を置いていった……?」
青い炎が灯る古き回廊。
血筋のみが反応する〈禁断の扉〉が彼の前に立ちはだかる。
アウレリアーノが手のひらを触れた瞬間──
金属が脈打ち、扉がゆっくりと開いた。
そこにあったのは。
◆ 初代皇帝の遺剣
緋陽の剣《アル=セリオン》
魂を焼き尽くす代償と引き換えに、
“神威”を授けると伝わる禁断の武器。
アウレリアーノは震える手で柄を握った。
腕を黒い炎が駆け上り、皮膚が焼ける。
だが、彼は手を離さなかった。
アウレリアーノ
「……ハルト。
貴様は私から軍を奪い……
誇りを奪い……
国を奪い……
妻を奪い……
子どもたちまで……」
瞳が、血のように赤く染まる。
アウレリアーノ
「もう……私には何も残っていない。
残るのは、この剣と……
憎悪だけだ。」
剣の炎が彼の寿命を喰らい、
髪は白く、顔は老い、
しかしその魔力は暴風の如く膨れ上がった。
アウレリアーノ
「死ぬならば……
貴様も道連れだ。
黄金の太陽よ……
**“皇帝の最終形態”**に挑むがいい!」
剣が獣のように咆哮した。
◆ 帝国西門 —— 崩壊する防衛線
城壁が、巨人に殴られたように粉砕された。
黄金太陽軍が進撃する。
カオリが先陣を切り、
アイリスが弓で空を制し、
クララが城壁を凍らせ、
アヤネが魔導兵を倒す。
そして──
ダイヤの巨神シャル=ダリオンが戦場を踏み進む。
その中心へ、
ゆっくりと歩みを進める一人の男。
黄金の外套。
太陽のような気配。
ハルト・アイザワ。
帝国兵たちは絶望の叫びを上げた。
帝国兵
「か、彼だ……!
黄金の太陽だ……!
もうダメだ……!」
ハルトは立ち止まらず、まっすぐ前を見つめた。
カオリ
「ハルト……
この街はもう落ちるわ。
残りの英雄たちは私が──」
ハルト
「いい。
ここから先は……俺ひとりで十分だ。」
アイリス
「ひとりで?
宮殿全部を相手に?」
ハルト
「王との決着は、
王だけでつける。」
アヤネが震える声で言った。
アヤネ
「ハルト様……
皇帝は決して侮れません。
皇族の血には古代魔法が……」
ハルトは静かに首を振る。
ハルト
「もう遅い。
彼の中に残っているのは、
“空虚”だけだ。」
アヤネは唇を噛む。
カオリは剣を掲げた。
カオリ
「行きなさい、ハルト。
後ろは任せて。」
ハルトは頷き、
崩れ落ちた大門を一人でくぐった。
◆ 緋宮殿・大広間
巨大な扉が風に押されるように開いた。
その奥──
瓦礫と赤光に照らされた広間の中央に、男が立っていた。
焦げた肌。
白く変わった髪。
燃え盛る禁断の剣《アル=セリオン》。
皇帝アウレリアーノ五世。
ハルトは十五歩先で足を止めた。
アウレリアーノは、狂気と悲哀を混ぜた笑みを浮かべた。
アウレリアーノ
「ハルト・アイザワ……
ついに来たな。
我が宿敵……
我が破滅……
我が“運命”。」
ハルト
「アウレリアーノ。
今すぐ剣を捨てろ。
それ以上進めば……戻れなくなる。」
アウレリアーノは咆哮した。
アウレリアーノ
「戻る場所など、もう無い!
妻は逃げた!
子どもたちは私を見捨てた!
民は恐れ、軍は消えた!
すべて、貴様のせいだッ!」
ハルトはゆっくり一歩前へ出た。
黄金の光が広間を満たす。
ハルト
「お前を壊したのは俺じゃない。
お前自身だ。
戦を選んだのも、
民を捨てたのも、
敵を作って隠れたのも──
全部……お前だ。」
アウレリアーノ
「黙れぇぇぇ!!
私は緋陽の皇帝だ!
貴様はただの“成り上がり”!」
ハルト
「なら見せろ。
お前の“太陽”とやらを。」
空気が震える。
禁断の剣が灼熱の咆哮を放ち、
ハルトの足元には黄金の魔方陣が広がる。
ハルト
「終わりだ、アウレリアーノ。
慈悲はない。
情けもない。
あるのは……光と、静寂だけ。」
アウレリアーノが絶叫して切りかかる。
ハルトは黄金の輝きをまとって迎え撃つ。
帝国の運命を決める戦いが──
ついに幕を開けた。
ーーつづくーー




