「科学者の再誕:黄金の太陽の綾音」
黄金の光の輪がゆっくりと消えていく。
空気が静まり返り、
まるで世界そのものが息を止めたようだった。
綾音は目を開けた。
もう震えていない。
もう逃げていない。
罪悪感に潰された、あの壊れた光は——消えていた。
代わりに宿ったのは、
決意。
春斗はゆっくりと手を下ろす。
春斗
「……気分はどうだ。」
綾音は深く息を吸い、ゆるりと微笑んだ。
綾音
「……やっと……目を覚ました気がする。」
儀式の力は魂だけでなく、
彼女の肉体にも影響していた。
過去の重荷を浄化したかのように。
少女たちは息を呑んだ。
綾音の髪は整い、
毛先にはかすかな金色の輝きが差していた。
震えていた瞳は、
今やまっすぐで、光を宿している。
姿勢はまるで別人のように凛として、
白と金の簡素な制服が、その新しさを象徴していた。
マルガリータが口笛を吹く。
マルガリータ
「おお……これでやっと私たちの横に並ぶ資格ができたじゃない。」
香織は思わず目を細める。
驚きと——言いたくない感情が胸に広がった。
香織(心の声)
「……本当に綾音なの……?」
アウレリアは隠そうともせず評価するように見つめた。
アウレリア
「太陽のエネルギーを纏っている……。
春斗、あなたは再調整どころじゃない。
完全に浄化したのよ。」
綾音は春斗の前に進むと——
膝をついた。
そして胸に手を当て、心臓の上にそっと置く。
綾音
「藍沢春斗……
黄金の太陽の王……
今日より、私の魂も、手も、知も……すべてあなたのものです。」
香織・アウレリア・マルガリータの肩が同時に跳ねる。
香織
「なっ……それは——!」
だが綾音は続ける。
綾音
「誓います。
何でもします。
私はあなたの科学者として生き……
あなたの命で死にます。」
春斗はじっと彼女を見つめる。
春斗
「俺は、お前に死んでほしいとは思わない。」
綾音は顔を上げ、瞳を輝かせた。
綾音
「……なら、あなたのために生きます。」
空気が震えた。
その一言が、場の緊張を爆発させる。
マルガリータは吹き出す。
マルガリータ
「ハッ!
科学者、こんなに火花持ってたのね!」
香織が前に出る。
頬がわずかに赤い。
香織
「春斗、本当に……信じられるの?」
綾音は静かな足取りで立ち上がり、
部屋の中央へ進む。
綾音
「信じられないなら、証明します。」
まっすぐ立ち、胸を張って言う。
綾音
「何でも聞いてください。
どれだけ疑ってくれても構いません。」
「私は、過去の自分を全て分解して見せます。」
香織はその強さに驚く。
香織
「……どうしてそこまで?」
綾音はわずかに視線を落とし、
静かに言う。
綾音
「……ずっと、隠れて生きてきました。
もう逃げたくない。
春斗について行くなら……
正しく生きたいんです。」
マルガリータは楽しそうに笑い、
アウレリアは満足げに頷く。
アウレリア
「いいわ。見せてもらおう、綾音。」
綾音は深く息を吸う。
黄金の光が、髪先で揺れた。
綾音
「春斗——」
彼の目の前へ歩み寄る。
ほんの一歩。
近い。
近すぎる。
香織は拳を握りしめ、
マルガリータは眉を上げ、
アウレリアは腕を組む。
綾音は胸に手を置き、静かに言った。
綾音
「私の知はあなたの武器です。
そして私の人生は今日……始まりました。」
春斗は彼女を見つめ——
綾音は一歩近づき、静かに頭を垂れる。
綾音
「必要なことを命じてください。
必ず果たします。」
春斗は彼女の額に指先を触れた。
春斗
「……いいだろう。」
黄金の光が二人の間で灯る。
春斗
「最初の任務だ。
“暁司がどこにいるのか”——」
「そして“最高位核をどう破壊するのか”を教えろ。」
綾音の瞳が開く。
恐れはある。
だがそれより強いものが宿っていた。
意志。
綾音
「……やります。」
綾音が下がると同時に、
香織は息を吐き出した。
香織
「……近すぎるのよ、あれは。」
マルガリータが笑い転げる。
マルガリータ
「私、あの“あなたのために生きます”ってとこ、好きよ。
あれ、心臓に刺さったわ〜!」
アウレリアはため息をつく。
アウレリア
「春斗……また一人、あなたを神みたいに見る子が増えたわ。」
春斗が口を開きかけた瞬間、
マルガリータが肘で小突く。
マルガリータ
「どうなの、王様?
問題児を引き寄せる才能でも持ってるわけ?」
香織が鋭い目を向ける。
香織
「覚えておいて。
もし綾音があなたに刃を向けたら……
私が止める。」
綾音はそれを聞いて——微笑む。
綾音
「春斗のことを心配してくれて、ありがとう。
私も……守ります。」
香織は真っ赤になり、そっぽを向く。
香織
「なっ……そういう意味じゃないってば!」
マルガリータはまた大笑いした。
新しい綾音は春斗へ歩み寄った。
まっすぐ、彼の瞳を見つめる。
綾音
「……明日、暁司について知っていることを全部まとめ始めます。」
春斗は静かに頷く。
春斗
「いいだろう。」
綾音は深く息を吸った。
綾音
「春斗……
その……やり直す機会をくれて……ありがとう。」
春斗は綾音の肩に手を置いた。
春斗
「やり直しではない。
これがお前の“本当の姿”だ。」
綾音はゆっくりと笑った。
綾音
「……なら、必ず意味のあるものにしてみせます。」




