「黄金の太陽の夜:誓い、嫉妬、そして燃える影」
月は青白い光を放ち、
聖域の石の回廊を静かに照らしていた。
松明の炎が、微かにパチパチと揺れる。
彩音は、感情の崩壊に疲れ果て、
離れの部屋で眠っていた。
春斗は彼女に悪夢を防ぐための柔らかな結界を張り、
しかし彼女自身の“自由”までは奪わなかった。
今日は——
彩音が「保護された人質」として過ごす最初の夜。
第一幕 — 春斗、塔のテラスにて
高い塔の上。
春斗は王国を見下ろしていた。
金色の光が街全体に灯っている。
風がゆるやかに彼のマントを揺らす。
春斗(心の声)
「……世界の動きが速すぎる。
だが俺は、立ち止まるわけにはいかない。」
その背後で、小さな光が揺れた。
静かな足音。
香織が近づいてきた。
軽い訓練服、ほどけた髪。
香織
「……春斗。」
春斗は振り返りきらずとも、彼女を感じ取った。
春斗
「休まなくていいのか?」
香織は彼の隣に立つ。
香織
「あなたこそ。
彩音を捕らえてから一睡もしてないじゃない。」
春斗はわずかに微笑む。
春斗
「王はな、世界が動くときに眠れはしない。」
香織は手すりに寄りかかった。
その瞳は優しく、しかし痛みも含んでいた。
香織
「全部を一人で抱えないで。」
春斗はようやく彼女の方へ向き、
香織の頬にそっと手を触れた。
香織は小さく震えた。
春斗
「俺は一人じゃない。」
香織の鼓動が跳ねる。
十五歳の頃に戻ったように。
香織
「……春斗。」
春斗が顔を寄せる。
唇が触れ合う寸前——
カンッ
拍車の音が響いた。
マルガリータ・アルバレスが
アーチ状の出口に寄りかかるように現れ、
いたずらっぽく笑っていた。
マルガリータ
「邪魔した?
それとも、いいタイミングで来ちゃった?」
香織は眉をひそめる。
春斗は微笑むだけ。
春斗
「どうだろうな。何の用だ、マルガリータ。」
マルガリータはゆっくり歩み寄り、
鎖を身体の一部のように揺らした。
マルガリータ
「会いに来たのよ。
あなたが無茶していないか確かめに。」
香織は腕を組む。
香織
「私がすでにそばにいる。」
マルガリータ
「へぇ?
じゃあ守り手は二人いた方が強いってことでしょ?」
春斗は一歩前へ出て、二人の間に立つ。
そして——
片手を香織の肩に、
もう片方をマルガリータの肩に置いた。
二人とも黙り込む。
月光の中、春斗の金の瞳が静かに輝く。
春斗
「香織。マルガリータ。
競う必要はない。」
低く、優しく、しかし王の声で続ける。
春斗
「……俺には、二人とも必要なんだ。」
香織は真っ赤になり、顔を背けた。
マルガリータは満足そうに微笑む。
マルガリータ
「じゃあ、ここにいるわ。私の王。」
香織はわずかに傷ついた表情を浮かべたが、
静かに言った。
香織
「……なら、いればいい。
ただし忘れないで。あなたの言葉を。」
マルガリータは楽しそうに笑う。
マルガリータ
「もちろん。
春斗が倒れたら——
真っ先に手を取るのはあなたでしょ?」
春斗は香織の顎を、指先でそっとすくう。
香織は目を閉じた。
春斗
「香織……」
続けて、マルガリータの手を取る。
春斗
「マルガリータ……」
そして低い声で告げた。
春斗
「今夜は……
二人とも、俺と一緒にいてほしい。」
二人の息が同時に吸いこまれた。
空気が熱を帯び、張りつめる。
だが——
ビリッ
魔力の警報が震えた。
春斗の表情が引き締まる。
春斗
「……彩音が目を覚ました。」
香織が一歩下がる。
マルガリータはため息をつく。
マルガリータ
「はいはい……せっかくのいい雰囲気が。」
香織は春斗を見て力強く言う。
香織
「私も行く。」
マルガリータ
「私も。
あの科学者がまた余計なことしたら困るし。」
春斗は頷いた。
春斗
「来い。」
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