叫びがゴーレムになった日
部屋には沈黙が満ちていた。
ミヤコが視線を落とす。
震えていたのは寒さのせいではない。
――思い出が、彼女を壊していた。
カオリはその乱れた呼吸に気づき、
アウレリアは最悪の予感に目を細め、
ハルトだけが静かに彼女を見つめていた。
待っていた。
事実を。
やがて、ミヤコが口を開く。
ミヤコ
「……一人で来たわけじゃないの。」
声が途切れる。
ミヤコ
「私と……ハナ。
二人で逃げたの。」
その名前は、石のように重く落ちた。
イリス
「ハナ……? もう一人の学生……?」
ミヤコは頷く。
ミヤコ
「同じクラスの子。いつも笑ってた……
アカシに便利に使われてても、笑ってた。
ある夜……研究室で、悲鳴がしたの。」
息が乱れる。
ミヤコ
「私たちは見てしまったの。
ハナが……宙に浮かされていて……」
クララが一歩後ずさる。
セレネは哀れみとも愉悦ともつかない笑みを浮かべ、
カオリは歯を食いしばった。
ミヤコ
「アカシとアヤネが……
彼女を“供物”にしていたの。」
部屋の光が震えた。
ハルトは表情を崩さない。
ただ、黄金の瞳が怒りで燃える。
ハルト
「……続けろ。」
ミヤコ
「彼女を……魔法陣に閉じ込めたの!
ハナは叫んで……
怖いって……助けてって……
私の名前を呼んで……!」
ミヤコはその場に崩れ落ち、涙を床に落とす。
ミヤコ
「魂を……吸われたの。
そして……闇から立ち上がった“それ”は……」
沈黙。
ミヤコ
「ハナだった。
中から叫んでたの……助けてって。」
カオリは口を手で塞ぎ、
クララは震え、
モモチは静かに目を伏せ、
アウレリアは拳を握り潰しそうだった。
ミヤコ
「助けようとしたの。
でも……アヤネが私を刺した。」
脇腹に残る深い傷跡を押さえながら震える。
ミヤコ
「倒れた私の耳に……
ハナの絶叫が消えていく音だけが残った。
そこで……気づいたの。」
顔を上げる。
涙と絶望が混ざった目で。
ミヤコ
「アカシもアヤネも……正義なんて望んでない!
誰も救おうとしてない!
欲しいのは……ただ“力”だけ!
あのゴーレムは……墓標なのよ!」
ハルトはゆっくりと視線を落とす。
悲しみではない。
――怒り。
歩み寄り、ミヤコの顎にそっと手を添える。
だがそれは優しさではなく、帝王の握る冷たい支配。
ハルト
「……聞いた。」
ミヤコは震えながら彼を見上げた。
ハルト
「アカシが何をしたのか……ようやく理解した。」
ハルトは仲間たちに振り返る。
ハルト
「儀式を準備しろ。
召喚者を集めろ。
ガンマとアルファの遺物を整えろ。」
カオリが前に出る。
カオリ
「ハルト……何をするつもり?」
ハルトは冷たい笑みを浮かべる。
ハルト
「アカシが始めたことを……」
ゆっくり呼吸し――
ハルト
「俺が終わらせる。」
ミヤコは泣いた。
恐怖ではない。
救われた実感で。
ハルトはそっとミヤコの肩に手を置いた。
ハルト
「……ハナのためにも。
必ずアカシを――
“死を乞うほど”追い詰めてやる。」
ミヤコの呼吸が止まる。
その誓いは、静かで――
だが世界を揺るがすほど残酷だった。
――続く




