『第三の駒──疑念の覚醒』
爆発の余韻はまだ消えていなかった。
夜は落ち着くどころか、
〈暁の都〉は煙と瓦礫と血の匂いで震えていた。
ハルトはセレネ、カオリ、アウレリアと共に
破壊された地区を調査していた。
その時――
BOOOOM。
大地が大きく揺れた。
アウレリアが空を見上げる。
アウレリア
「ハルト! 北の国境で……何か巨大なものが動いてる!!」
すぐに二度目の爆音が響く。
先ほどよりも大きい。
カオリが槍を握り締める。
カオリ
「アカシ……また?」
ハルトは眉をひそめた。
ハルト
「いや……違う。
これは……別の何かだ。」
地面が裂けた。
紫の光が地平線に網のように広がっていく。
その魔法陣は帝国のものでも――
アカシのものでもない。
セレネが首をかしげた。
セレネ
「不安定な魔術……未完成ね。」
アウレリアが低く呟く。
アウレリア
「ハルト……たぶん、あなたのクラスメイトよ。」
ハルトは歯を噛みしめた。
◆1.アカシの“仲間”の出現
紫の魔法陣から、少女が姿を現した。
肩までの淡い紫髪。
破れた制服。
疲れ切った、悲しげな瞳。
震える手に古い魔導書。
如月ミヤコ。
前世では優秀な魔法使いだった少女。
セレネは即座に大鎌を構えた。
だが、ハルトが手を上げて止める。
ハルト
「味方だ。」
その声を聞いた瞬間、ミヤコの目が揺れた。
ミヤコ
「……ハルト君……?」
カオリが目を見開き、
アウレリアもゆっくりと武器を下ろす。
ミヤコは震えながら一歩前へ。
ミヤコ
「あなた、本当に……
王国なんて作ったの……?
都まで……?」
その声には怒りはなかった。
ただ――恐怖。
◆2.アカシからの“声”
(遠隔で届く本当の目的)
ハルトが近づこうとした瞬間。
紫陣から“声”が響いた。
低く、冷たい声。
アカシの声だ。
アカシ(反響)
「ミヤコ。
ハルトに近づくな。」
ミヤコの体が震える。
ミヤコ
「アカシ、もうやめて!
説明して……!
どうして都市を……意味もなく破壊するの!?」
大地が震えた。
魔法陣の奥で“何か”が目を開けたような気配。
アカシがため息をつく。
アカシ
「ミヤコ……理由?」
「この世界に理由なんて必要ない。」
「必要なのは――“修正”だ。」
ミヤコは魔導書を抱きしめる。
ミヤコ
「もう“修正”なんて言えないよ!
あなたは……ただ殺してるだけ!!
前の世界で言ってたことと違う!!」
沈黙。
そして――
アカシの声が低く響く。
アカシ
「まだ分からないのか。」
「ハルトは“誤差”だ。」
「世界そのものが“誤差”だ。」
「誤差は排除しなければならない。」
紫の光が強くなり、
ミヤコは恐怖で後ずさった。
ハルトの黄金のオーラが夜を照らす。
ハルト
「アカシ……」
アカシ(反響)
「ハルト。」
空気が凍る。
そして――
アカシは無感情に告げた。
アカシ
「ミヤコはまだ“完成”していない。」
「だが――お前はもう“準備ができている。”」
空が赤く染まった。
超大型ゴーレムが
次々と次元裂け目から落ちてくる。
ビルほどの大きさ。
赤い目はエンジン音のように脈打っている。
アカシ
「第二段階を始めよう。」
「どれだけ守れるか――試す。」
光が途切れ、
アカシの気配消失。
ミヤコはその場に崩れ落ちた。
涙を流しながら。
◆3.ミヤコへ歩み寄るハルト
ハルトが歩み寄る。
セレネは殺気を放ち、
カオリとアウレリアは構え、
マグノリアは双銃を抜き、
イリスとクララも駆けつける。
ミヤコは涙をこぼしながら顔を上げた。
ミヤコ
「ハルト……私……」
「アカシは言ったの……
あなたは暴君で……
偽りの王で……
みんなを支配するつもりだって……」
クララが怒りで叫ぶ。
クララ
「ハルトは誰も支配してないわ!」
イリス
「私たちは自分の意思で彼に仕えてるの!」
アウレリア
「彼こそがこの世界に必要な皇帝だ!」
セレネ
「そして彼は“私のもの”。」
イリスとクララが同時に睨む。
ハルトはそっとミヤコの肩に手を置いた。
柔らかく。
優しく。
ハルト
「嘘を吹き込まれただけだ。」
ミヤコは泣き崩れた。
◆4.ゴーレム襲来**
大地が――爆ぜた。
BOOOOOOOM。
最大級のゴーレムが、
わずか百メートル先に着地した。
その姿は巨大。
まるで生きた塔。
カオリは槍を構え、
アウレリアは翼を広げ、
マグノリアは銃を装填し、
セレネは大鎌をくるりと回す。
ハルトはゆっくりと立ち上がった。
その瞳は、昇る太陽のように輝く。
ハルト
「ミヤコ。」
ミヤコは顔を上げる。
ハルト
「後ろに下がっていろ。」
「ここから先は――俺がやる。」
ゴーレムが金属の咆哮をあげた。
ハルトが手を掲げる。
指先から金色の光があふれた。
ハルト
「アカシ……」
「これは、始まりにすぎない。」
ゴーレム軍が一斉に動き、
〈暁の都〉を踏み潰そうと迫る。
ハルトはその手を――
ゆっくりと、しかし確実に――
下ろした。
戦いが始まった。
――つづく――




