「暁は退く――そして最後の一撃へ」
評議の大広間は、ハルトと皇帝の圧に震え続けていた。
誰も息をしない。
誰も声を出さない。
誰も一歩も動けない。
まるで見えない刃で“時間そのもの”が切り裂かれたようだった。
ハルトは皇帝の理をすべて聞いた後、
一言も返さず踵を返した。
大臣の一人が震える声を漏らす。
戦略大臣
「な、なに……?
こ、これで……帰るとでも……?」
ハルトの声が、静かな雷鳴のように響いた。
ハルト
「勘違いするな。」
「今日は殺しに来たわけじゃない。」
「お前の帝国が――すでに終わったと告げに来ただけだ。」
破壊された扉の前で立ち止まる。
セレネが後ろから歩み寄り、
大理石の床を鎌で引きずりながらついていく。
皇帝が歯を噛みしめ叫んだ。
オーレリアノ
「臆したか! 逃げるのか!」
ハルトは振り返らない。
その必要すらなかった。
ハルト
「逃げる? 違う。」
「――奪いに行く。」
「お前たちが守れると信じているすべてを、な。」
黄金の風が彼の周囲を渦巻く。
大臣たちは悲鳴とともに後退。
壁が軋み、机が震え、空間が歪む。
セレネが笑う。
セレネ
「あなたたちの帝国は……もう死んでる。」
そしてハルトは宣言した。
ハルト
「これは訪問ではない。」
「――警告だ。」
大広間が光に飲み込まれた。
光が消えた時――
ハルトとセレネの姿は消えていた。
残されたのは、
彼が立っていた場所に焼きついた黒い影。
それは印だった。
それは裁きだった。
それは宣告だった。
◆ 皇帝の絶望
評議は完全に沈黙していた。
財務大臣
「こ、これは……も、もう……終わりだ……」
魔導大臣
「彼がここまで入れるなら……安全な場所など……!」
一人が泣き崩れる。
皇帝は拳を握りしめ、血を滴らせながら怒鳴った。
オーレリアノ
「黙れ!!」
広間は一瞬で静まり返る。
皇帝は床の“影”を見つめた。
そして、生涯で初めて――
本物の恐怖 を感じた。
オーレリアノ
「……あの男は……王ではない。」
「――“力”だ。」
戦略大臣が青ざめながら近づく。
戦略大臣
「ど、どうされますか……陛下……?」
皇帝は目を閉じた。
震える声で、
生まれて初めて口にする言葉を呟く。
オーレリアノ
「……わからぬ。」
◆ 同時刻――帝国の外、黒山脈にて
ハルトは一度も振り返らず歩いていた。
セレネが静かに口を開く。
セレネ
「本当に……行ってしまうの?」
ハルト
「ああ。」
セレネ
「でも……皇帝を生かして帰した。」
ハルトは小さな微笑を見せる。
ハルト
「あの男には見せる必要がある。」
「……自分の帝国が、
一片ずつ崩れていく姿を。」
セレネが目を見開く。
セレネ
「では……どうして今、仕留めなかった?」
ハルトの声は淡々としていた。
ハルト
「生きている皇帝ほど、
帝国を乱す存在はいない。」
セレネが息を呑む。
セレネ
「つまり……」
ハルトは夜空を見上げる。
黄金の瞳が、
二つの太陽のように輝いた。
ハルト
「――征服の時間だ。」
空が爆ぜる。
大陸全土に光の柱が立ち昇り、
魔法陣と召喚紋が走り、
地平線まで“暁”の光が広がる。
アウレリア。
カオリ。
マグノリア。
アイリス。
エリーゼ。
エイルリス。
デイヴィッド。
フロスト。
エルフィラ。
セレル。
すべての仲間が気づいた。
――これは“戦の号砲”だと。
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