「暁の二つの選択肢」
レヴィウム帝国・最高評議会。
怒号と紙の散乱、冷や汗の匂いが渦巻いていた。
武装大臣
「リリアナを失ったとしても問題ない!」
「アカシとアヤネが造ったゴーレムがあれば――!」
戦略大臣
「皇帝陛下がすぐ戻られる。
防衛陣を立て直さねば――」
――ドォン。
大広間の扉が、何の前触れもなく爆散した。
衝撃波がすべての松明を吹き消す。
評議員たちは凍りついた。
煙の中から――
ハルト・アイザワが歩み出る。
まるで、
ここが“自分の家”であるかのように。
その背後には、液状の影をまとい、
大鎌を肩に乗せた セレネ。
ひとりの大臣が悲鳴を上げる。
大臣
「ど……どうやって……入った……?」
セレネが代わりに答えた。
セレネ
「入りたかったから。――それだけよ。」
帝国兵が二人、叫びながら突撃する。
セレネは動かない。
ズバッ。
床から生えた影の槍が兵士二人を貫き、
声を上げる間もなく倒れた。
セレネは議場の中心へ行き、
空いていた椅子に腰掛け、脚を組む。
まるで――ここを支配する女王のように。
評議員たちは息を呑んだ。
ハルトは卓の中心へ歩み、
片手を置いて、静かに口を開く。
その声は穏やかで――
この世で一番、恐ろしかった。
ハルト
「こんばんは。」
「最初に……一つだけ、はっきりさせておく。」
彼はゆっくりと背もたれに寄りかかり、
一人一人を見つめる。
ハルト
「選択肢は――二つだけだ。」
評議員全員が固まる。
ハルトは指を二本、立てた。
ハルト
「皇帝、艦隊、兵士、そしてそのオモチャのような兵器をまとめて――」
「消えろ。」
「植民地も、領土も、交易路もすべて捨てて。」
身を乗り出し、冷たく告げる。
ハルト
「そうすれば……生きられる。」
凍りつく静寂。
そして――
ハルトは帝国を砕く笑みを浮かべた。
ハルト
「ここに残るというのなら……」
「俺が遊んであげるよ。」
「一人ずつ――潰していく。」
セレネが大鎌を肩に乗せ、
にやりと笑う。
セレネ
「そっちの方が、壊しがいがあるわね。」
ハルトは続ける。
ハルト
「交渉はしない。」
「外交もない。」
「慈悲もない。」
「お前たちに残されたのは……この二択だけだ。」
科学大臣が耐えきれず叫ぶ。
科学大臣
「お、お前の脅しなど――!」
ハルトが手を上げる。
大臣の身体が宙に浮き、
何かに握り潰されるように歪む。
メリメリ……バキッ。
床に叩き落とされた時には、もう死んでいた。
他の大臣たちは恐怖で飛び退く。
ハルト
「俺の決意はもう固まっている。」
「次は――お前たちが選ぶ番だ。」
「逃げるか……」
「戦うか。そして、安っぽい玩具みたいに壊されるか。」
セレネは嬉しそうに笑った。
セレネ
「私は二番目が好きだけどね。」
ハルトは評議会を見下ろし、静かに告げる。
ハルト
「さあ――賢く選べ。」
横の扉が開き、衛兵が叫びながら駆け込んだ。
衛兵
「こ、皇帝陛下が!
陛下がこちらに――!」
しかし、ハルトを見た瞬間、
衛兵は動きを止めた。
ハルトはゆっくりと振り向く。
黄金の瞳が、超常の夜明けのように光を放つ。
ハルト
「ちょうどいい。」
「待っていたところだ。」




