「太陽の調伏――紅刃の崩壊」
暁の宮殿の聖なる地下が、轟音とともに閉ざされた。
封印陣の中心には、鎖に縛られたまま荒い息を吐くリリアナ・ヴァエルの姿。
その瞳は怒りに燃え、
恐怖という言葉は一片も存在しなかった。
上層の闇から、カオリの低い声が落ちる。
カオリ
「ハルト……彼女、簡単には折れないよ。」
ハルト
「折れるとは思っていない。」
彼は階段を一段ずつ下り、
リリアナの目の前に立った。
リリアナは血を吐き捨てるようにして笑った。
リリアナ
「さあ、やれ。
拷問でも何でもしろ。
“紅刃”は折れない。」
ハルトはわずかに口元を上げた。
ハルト
「拷問などしない。」
「ただ──お前を“倒す”。」
鉄のような沈黙。
◆ 精神儀式の発動
ハルトは床に手のひらを置いた。
―《黎明の陣:精神領域アルファ》―
黄金の光が部屋を飲み込む。
ハルトとリリアナの身体が震え──
二人は“心の領域”へ引きずり込まれた。
そこは巨大な戦場。
何もないが、何もかもがある。
存在するのはただ二人の魂と力のみ。
精神世界では、
リリアナの鎖は消えていた。
もう囚人ではない。
戦士だった。
リリアナ
「……私の精神世界で戦うってわけ……?」
「思ったより危険な男ね。」
ハルトは精神体の黄金の槍を構える。
ハルト
「この儀式の目的は痛みじゃない。」
「お前の“力の正体”を暴くことだ。」
リリアナが咆哮し、突進する。
◆ 精神戦闘:ハルト vs リリアナ
武器が衝突し、虚無を震わせる。
ガァァアアアン――!!
黄金と深紅の火花が宇宙のようにぶつかり合った。
リリアナは獣のように速く、鋭く、正確だ。
だがハルトはすべてを“見て”いた。
外界では、儀式の波動を感じたカオリがつぶやく。
カオリ
「……動きのパターンを解析してる。」
闇に潜むモモチが頷く。
モモチ
「感情の弱点を突いているんだ。」
◆ 弱点①:奪われた人生
リリアナが獣のように斬りかかる。
スオォッ!!
ハルトはすれ違いざま呟いた。
ハルト
「お前は“従うため”に育てられた。」
その言葉で、リリアナは一瞬硬直する。
ハルト
「第一の弱点。
“人生を自分で選んだことがない。”」
リリアナ
「黙れぇぇ!!」
衝撃がハルトを直撃する──
だが彼は一歩も動かない。
リリアナは後ずさる。
リリアナ
「……あ、ありえ……ない……
何者……なの……?」
◆ 弱点②:隠された恥
ハルトが一歩踏み出す。
精神世界が震える。
ハルト
「その“紅刃”……誇りの象徴じゃない。」
リリアナの肩が跳ねる。
ハルト
「“お前は足りない”──
皇帝からそう刻まれた印だ。」
その言葉は刃より鋭く、
リリアナは心臓を刺されたようにのけぞる。
リリアナ
「やめろ……やめろ……!」
◆ 弱点③:孤独
ハルトが進む。
リリアナの背後に、
倒れた兵士たちの影が次々と現れる。
生気のない顔、崩れ落ちた手足。
ハルト
「お前はずっと一人だった。」
「理解できない命令に従い、
愛を求め、力しか返されなかった。」
リリアナは膝をつき、震えた。
リリアナ
「黙れって……言ってる……!!」
ハルトは槍を彼女の心に向ける。
ハルト
「黙らせたいんじゃない。」
「“救われたい”だけだ。」
リリアナの叫びが虚無に反響した。
◆ 崩壊
黄金の亀裂がリリアナの精神体を走る。
肉体ではなく──
意志の崩壊。
初めて流れる涙。
リリアナ
「……どうして……
私……ここで……泣けるの……?」
ハルトはそっと手を差し伸べた。
ハルト
「これは俺の力じゃない。」
「お前が背負ってきた人生そのものだ。」
紅刃の剣が砕け、光の破片となる。
リリアナは震えながら自分の手を見る。
リリアナ
「……力が……ない……
今の私は……空っぽ……」
ハルトは額に指を当てた。
ハルト
「では……」
精神世界が黄金に染まる。
ハルト
「――書き換える。」
リリアナの絶叫が光に溶けて消える。
◆ 現実世界へ
目を開くと、地下室の天井があった。
リリアナの瞳はもう鋭くなかった。
怒りも誇りもなく。
ただ──長い悪夢から目覚めたような震え。
リリアナ
「……ハルト……アイザワ……」
ハルトが見下ろす。
ハルト
「言え。」
リリアナはゆっくり頭を下げる。
リリアナ
「……私は……あなたのもの……。」
場が凍る。
カオリは唇を噛み、
モモチは興味深げに目を細め、
アウレリアは深い息を吐き、
エミリスは顔を真っ赤にする。
リリアナは静かに言った。
リリアナ
「知りたいことを……全部話すわ。」
ハルトはゆっくりと身をかがめ、
リリアナの顔のすぐ近くで囁いた。
ハルト
「すべてだ、リリアナ。」
「俺が知りたいのは……
お前たちの帝国を“完全に滅ぼす”方法。」
リリアナは、どこか悲しげに微笑んだ。
リリアナ
「……なら、教えるわ。」
「最後の秘密まで……全部。」
レヴィウム帝国の崩壊は、
いま――静かに幕を開けた。
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