「黎明の鍛錬:一日目」
太陽がようやく顔を出し始めた頃、エミリーズは激しいノック音で目を覚ました。
ドンッ── ドンッ── ドンッ──
ルナリアが許可もなく部屋へ入ってきた。
ルナリア
「お嬢様。始めます。」
エミリーズは慌てて起き上がり、震える手を握りしめた。
エミリーズ
「は、はい……準備できてます。」
ルナリア
「どうかしらね。まあ、見させてもらうわ。」
◆ 06:00 ― ミナセ・カオリの剣術訓練
中庭は金属のように冷え切っていた。
カオリはすでに木剣を二本持って待っていた。
カオリ
「まずは――基本の構え。」
エミリーズは見様見真似で構えるが……
五秒で膝から崩れ落ちた。
カオリは深いため息をつく。
カオリ
「……これは、長くなるわね。とても。」
最初の一時間でエミリーズが受けたもの:
— 脛への打撃
— 絶え間ない修正
— 容赦ない叱責
— そしてまた脛への打撃
カオリ
「頭を下げない!」
「足はしっかり!」
「そんな体勢じゃ戦えない!」
「まだ泣くな!」
エミリーズ
「な、泣いてません! ただ……すっごく痛いだけ……!」
カオリは残酷な誇らしさで微笑んだ。
カオリ
「ふん。思ったよりは弱くないみたいね。」
エミリーズは驚く。
カオリ(小声)
「ハルトが見込んでるんだから……私が否定する理由はない。」
エミリーズの胸に、何かが揺れた。
◆ 08:00 ― 黒きカウガール・マグノリア(ガチャ武装)
マグノリアは鎖を歌うように回しながら笑った。
マグノリア
「よし、お姫様! アンタの“狙い”を見せてもらおうか!」
エミリーズはベータ級のガチャ銃を構え…
空へ向けて誤射した。
マグノリア
「ちょっと!? どこ狙ってんのよ!!」
エミリーズ
「わ、わかりません! 手が勝手に!」
マグノリア
「まったく……
引き金に触れるなって言ったでしょ!
次、私に向けたら丸坊主にすんぞ!」
エミリーズはごくりと唾を飲んだ。
三十発外して、ようやく一発命中。
マグノリアは満足げに頷いた。
マグノリア
「悪くない。
いや、相当ひどいけど……想像よりはマシ。」
エミリーズ
「そ、それ褒めてます……?」
マグノリア
「ここでは褒め言葉よ。」
◆ 10:00 ― モモチ(隠密・生存術)
宮殿内の暗い簡易迷路に連れてこられたエミリーズ。
気配もなく背後から声がした。
モモチ
「規則その一。
“私の声が聞こえたら、すでに死んでいる”と思いなさい。」
エミリーズ
「えっ、ちょ、え──?」
シュッ、と縄が動き……
エミリーズは逆さ吊りになった。
エミリーズ
「きゃあああああっ!!」
モモチ
「……五歩で捕まるとは。最低記録更新ね。」
エミリーズ
「おろしてぇぇぇ!!」
モモチは優雅に彼女を降ろした。
モモチ
「敏捷性はゼロ。でも……諦めなかったわね。」
そっと顔を近づけて。
モモチ
「面白い子。」
エミリーズは真っ赤になり、心に誓った。
――絶対に上達する、と。
◆ 12:00 ― エリーズ・ダルクレンヌ(姿勢・武の所作)
エリーズは優雅な風のように現れた。
エリーズ
「まずは姿勢。
次に呼吸。そして重心。」
エミリーズは五回つまずいた。
エリーズは決して怒鳴らない。
だが失敗のたびに、柔らかく「まぁ……」と言う。それが一番刺さる。
エミリーズ
「ごめんなさい……」
エリーズ
「倒れたことを謝らないで。
立ち上がるとき、前より美しくなればいいの。」
エミリーズの胸に温かい光が灯る。
◆ 14:00 ― アイリス&クララ(連携訓練)
アイリス
「もっと速く!」
クララ
「方向転換で姿勢が崩れてるよ!」
エミリーズ
「ご、ごめんなさい! い、今直しま──!」
アイリスが軽く背中を押した。
アイリス
「ハルト様が信じてる。
だから……私も信じる。」
クララも頬を染めて頷いた。
エミリーズに新しい火が灯る。
◆ 17:00 ― ルナリア(体術)
夕日が落ち始めた頃。
ルナリア
「倒れるまで続けるわよ。」
エミリーズ
「た、倒れる……まで……?」
ルナリア
「ええ。“倒れるまで”。」
五秒で倒される。
十秒でまた倒される。
十五秒でさらに倒される。
だが──
二十回目のとき、エミリーズは初めて一撃を受け止めた。
ルナリアの目がわずかに見開かれる。
ルナリア
「……今のは、わざと?」
荒い息の中、エミリーズは頷く。
エミリーズ
「強く……なりたい……です。」
ルナリア
「なら、鋼に鍛えてあげる。」
◆ 夕刻 ― ハルトの視線
高いバルコニーの上から、ハルトは静かに眺めていた。
カオリの怒号。
モモチの気配。
マグノリアの銃声。
アイリスとクララの走り声。
ルナリアに何度も投げられるエミリーズ。
それでも――
エミリーズは立ち上がる。
傷だらけで、汗まみれで、震えながら……
それでも笑っていた。
ハルト(小声)
「……いい。こうして戦士は生まれる。」
◆ 夜 ― 決意の涙
自室へよろけるように戻るエミリーズ。
ルナリアが腕を支えた。
ルナリア
「お嬢様……お休みになりますか?」
エミリーズは首を振った。
エミリーズ
「いいえ。……ハルト様に会いたい。」
ルナリア
「……承知しました。」
王の間に着くと、ハルトが驚いた表情で振り返る。
ハルト
「エミリーズ……寝ていなきゃいけない時間だ。」
エミリーズはそのまま膝をついた。
エミリーズ(涙)
「今日、わかりました……
わたしが、どれほど弱いか……
どれほど役に立たなかったか……
でも……気づいたんです。」
顔を上げる。
エミリーズ
「わたし……あなたのために戦いたい。」
ハルトは静かに彼女を見つめ──
そっと頬に手を添えた。
ハルト
「なら──共に戦おう。」
エミリーズは堪えきれず泣き崩れた。
扉の影で見ていたカオリは奥歯を噛む。
カオリ(小声)
「ほんと……この男は……」
突然、城壁から角笛が鳴り響いた。
ブオオオォォ──ン
衛兵が駆け込んでくる。
衛兵
「て、敵国の使者です!
白旗を掲げていますが……
馬が血まみれで……!」
ハルトが立ち上がる。
ハルト
「……リリアナ・ヴェイルだ。」
想像よりも早く──
戦火は迫っていた。




