黄金の太陽に挑む刃の夜
夜は静かに──しかし欺くように──《暁の宮殿》を包み込んでいた。
月は細い銀糸のように空へ掛かり、松明の炎はいつもより低く揺れている。
不自然なほどに、低く。
エミリスの部屋の隅で、ルナリア・ヴェルモントが静かに目を開いた。
──何かがおかしい。
窓辺をかすめた、ごく微かな“音”。
刺客だけが聞き分けられる気配。
ガラスを滑るスティレットの擦れ。
ルナリア(低く)
「……エミリス様。起きてください。今すぐ。」
エミリスは息を呑んで目を開いた。
エミリス
「な……何が……?」
ルナリア
「動かなければ、私たちは殺されます。
……すでに侵入しています。」
震えながら身を起こすエミリス。
その瞬間──
バルコニーを横切る影が一つ。
もう一つ。
そして三つ目。
レヴィウム帝国の刺客が送り込まれたのだ。
◆ 宮殿内部・分割戦闘
静かな警報が発動した。
カオリ — 東翼
カオリは剣を抜き放ち、目を輝かせる。
カオリ
「やっぱり今夜は面白いことになると思ってた……」
梁から飛び降りた帝国の剣士。
攻撃は無駄がなく、殺意だけで研ぎ澄まされている。
カオリはその刃を軽く弾き返し、挑発的に笑った。
カオリ
「二刀流? ふふ、古典的ね。」
鋼がぶつかり合い、雷鳴のような音が廊下を震わせた。
マグノリア — 西翼
月明かりの廊下で、マグノリアはチェーンガンを優雅に回した。
三人の刺客が包囲する。
マグノリア
「まぁ、なんて礼儀知らず……
レディは先に撃つものよ?」
BANG— BANG— KLAK—
閃光が夜の空気を裂く。
背後から襲いかかった刺客を、マグノリアは鎖で絡め取り、そのまま壁に叩きつけた。
マグノリア
「一人終了。次は誰かしら?」
モモチ — 宮殿屋根
忍びは瓦の上を、影そのもののように走る。
塔へ向かう二人の刺客。
モモチ
「……甘い。」
一人の背後に現れる。
一閃。
短い息。
そして沈黙。
二人目が気づいた時にはもう遅い。
モモチ
「エミリス様には……触れさせない。」
アイリスとクララ — 中庭
アイリス
「クララ、右から三人来るわ。」
クララ
「任せて。あなたは上を狙って。」
アイリスが銃を大地へ突き立てる。
魔法陣が輝き──
《月撃・深紅牽引》
光の弾丸が闇を貫く。
クララは槍で突進し、敵陣を切り裂いた。
二人は戦いの中で、より息が合っていく。
アイリス
「ハルト様……見てくださるかしら……?」
クララ(赤面して)
「し、集中しなさい! あとで話すの!」
◆ 致命地点 — エミリスの部屋
ルナリアはエミリスを本棚の影へ押し込んだ。
ルナリア
「私の後ろに。」
──ドンッ。
扉は一撃で砕け散る。
刺客が四人入り込む。
一人は黒仮面をつけていた。
帝国“処刑班”の指揮官の証。
指揮官
「裏切り者を確保しろ。
皇帝陛下の命は絶対だ。」
エミリスは息を押し殺し、震える。
ルナリアは二本の漆黒の短剣を構える。
ルナリア
「私の死体を越えなさい。」
刺客が一斉に襲いかかる。
CLANG— SHH— CLANG—!
ルナリアは竜巻のように動いた。
だが──数が多い。
一人が刃をかわし、エミリスへ跳ぶ。
刺客
「標的確保──」
CRACK。
何かがその腕を握り潰した。
刺客が膝をつく。
◆ 太陽の王、降臨
部屋に踏み込んだのは──
ハルト・アイザワ。
その瞳は、純金の炎。
ハルト
「……俺の仲間に触れた時点で──」
「お前の命運は尽きた。」
刺客が何か言おうとした瞬間、
ハルトの拳が締まる。
THUD。
沈む刺客。
他の三人が後退した。
ハルトが手を掲げると、黄金の結界が部屋を吞み込む。
ハルト
「……逃げられると思うな。」
ルナリアは跪いた。
ルナリア
「陛下……間に合ってくださいましたか。」
エミリスは衝動のままハルトへ駆け寄り、抱きついた。
エミリス(涙声)
「もう……死ぬかと……!
お父様も、お母様も……わ、私を……!」
ハルトはそっと彼女の頭に触れた。
ハルト
「大丈夫だ。
もう君は一人じゃない。」
扉の残骸から現れた仲間たちは──
その抱擁を見て、一斉に顔をしかめる。
カオリは眉を寄せ、
モモチは片眉を上げ、
マグノリアは頬を膨らませ、
アイリスとクララは同時に固まった。
七人の視線がハルトへ突き刺さる。
カオリ
「……ハルト。今週は何人抱きしめる気?」
ハルト(悪びれず)
「必要な分だけだ。」
◆ 取り調べ
モモチが黒縄で縛った指揮官を引きずってきた。
モモチ
「生かしておいた。」
ハルトは視線を落とし、問う。
ハルト
「使命を言え。
……一度だけチャンスをやる。」
指揮官は悔しげに口を開いた。
指揮官
「レヴィウム帝国は……
“紅蓮作戦”を発動した……!」
カオリ
「……何よ、それ?」
指揮官
「“暁の征服者”を排除せよ……。
全軍は、一人の女に従う……」
その名を聞いた瞬間、アイリスが息を呑む。
指揮官
「……総司令官──
《深紅の剣姫 リリアナ・ヴァエル》だ。」
部屋の空気が、凍りついた。
大陸の果て──
風が荒れ狂う断崖の上で、ひとりの女が静かに地平線を見据えていた。
燃える熾火のような赤髪。
乾いた血のように輝く軽装甲。
リリアナ・ヴァエル。
レヴィウム帝国・総司令官。
その瞳は鋼より冷たく、戦場より熱い。
リリアナ
「……ハルト・アイザワ。
次に会う時──
お前の首を、私が取る。」
吹き上がる風が彼女の真紅のマントをはためかせる。
その背後では、圧倒的な兵列が次々と整列していく。
大地を震わせる足音。
槍の林。
旗が揺れる。
──こうして、“本当の戦争”が始まった。
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