「エミリスの仮面」
すべての“味方”が、
列をなして進むわけではない。
中には――
もはや従わぬ影の中を、
ひとり歩く者もいる。
──戦略会議室──
ハルト、カオリ、モモチ、そしてエミリス。
机いっぱいに広がる地図。
赤く印された地域は、いまだ帝国レヴィウムの支配下、または貴族の影響が残る地。
ハルトはある場所を指差す。
ハルト:
――ヴェルグラッセ。
大陸北部の文化の都。
芸術と商業の中心……
そして、帝国の“宣伝機関”でもある。
だが同時に、
すでに亀裂が走り始めている場所だ。
──極秘任務──
ハルトはエミリスをまっすぐ見て言う。
ハルト(静かに):
――君に行ってほしい。
兵士としてではなく。
私の使者としてでもない。
――“エミリス・ヴィレモン”として。
カオリ(眉をひそめて):
……つまり、仮面をかぶらせるの?
ハルト:
――仮面を使って、
“真実を偽りの中に忍ばせる”。
──使命の意味──
エミリスはすぐに理解する。
それは長い任務になる。
数か月――それ以上かもしれない。
彼女がやるべきことは:
・帝国に懐疑的な貴族たちと再接触すること。
・文化の中心に“疑念”を流し込むこと。
・表では優雅に、裏では揺らぎを育てること。
ハルト:
――君の任務は、
帝国を壊すことじゃない。
芽を蒔くことだ。
ヴェルグラッセで思想が芽吹けば――
帝国は、その魂から燃え上がる。
エミリスは静かにうなずく。
それがどれほど危険で、どれほど孤独か――わかっている。
だが今の彼女は、
恐れではなく、“意志”で歩んでいる。
出発の朝。
ハルトは転移門まで彼女を見送る。
ハルト:
――戻る覚悟はあるか?
もう、君の居場所ではない世界へ。
エミリス(初めて心からの微笑みで):
――戻るんじゃないわ。
中から壊しに行くの。
転移門が光を放ち、起動する。
エミリスは振り返らずに進む。
――帝国のスパイは、もう存在しない。
ここから始まるのは、
彼女自身の、本当の戦い。




