「それを選んだのは――お前だ」
戦いは“旗”で始まる。
だが、“自由”は――たった一つの本音から生まれる。
「ただ残った」では足りない。
なぜ逃げなかったのか、それを語らねばならない。
──呼び出し──
襲撃の翌日。
ハルトは、エミリスを静かに呼び出した。
衛兵はいない。
ただ一つの部屋。
一つの机。
二杯の温かいお茶。
ハルト(率直に):
――襲われたことは知ってる。
そしてお前が“誰なのか”も。
昨夜――逃げることもできたのに。
お前は、残った。
エミリスは視線を落とす。
最初の声は、かすかに震えていた。
エミリス:
――私は……任務で来たの。
諜報活動。
情報の漏洩。
この“暁の王国”を崩すための準備。
──告白──
だが、ハルトの顔に動揺はない。
ハルト:
――では、なぜ今こうしてここに座っている?
なぜ、それを自分の口で語る?
エミリスは立ち上がる。
その瞳は揺れていない。
エミリス:
――だって、私は見てしまったの。
帝国では教わらなかった光景を。
――崩れた村が再建されていくのを。
農民が貴族と肩を並べて学ぶのを。
兵士が笑い、
指導者が“耳を傾ける”姿を。
そして――
あの子供に抱きしめられたとき。
“貴族”でも“敵”でもなく、
ただ「助けてくれた人」として。
そのとき気づいたの。
帝国は私に嘘のつき方を教えた。
でも、本当に誰かのために立つことを――
一度も教えてくれなかった。
──選択──
ハルトが立ち上がる。
歩み寄る。
その黄金の瞳は、鋭くない。
夜明けのように、静かでまっすぐだった。
ハルト:
――では、教えてくれ。
エミリス――
お前は、何を選んだ?
今度は迷わない。
エミリス:
――私は残ることを選んだ。
スパイとしてではなく。
囚人としてでもなく。
――この国のために戦うことを。
なぜならここには、
すべてを賭ける価値があると思えたから。
──王の言葉──
ハルトはゆっくりとうなずく。
そして手に取るのは、小さな紋章。
暁を象徴する印。
魔法と鋼が交わる“陽”のマーク。
ハルト:
――ならば、お前はもう客人ではない。
帝国の影でもない。
ようこそ――
暁のエミリス。
彼女は、迷いなくその印を受け取った。
両手で、強く、まっすぐに。
その夜、エミリスは最後の一文を日記に記す。
「手紙を焼いた。
刃を向けられた。
でも今日――私は“紋章”を受け取った。」
「そして、それを震えずに握りしめた。」
この章で、エミリスがついに“自らの意志”を語った瞬間に心を打たれましたか?
彼女の成長に共感したなら、ぜひ評価を。
今の彼女を“ハルトの真の仲間”として見ているなら、お気に入りに追加して。




