「選択の重さ」
剣を持たぬ瞬間がある。
だが、それでも心を斬る。
呪われた手紙
夜明けとともに、エミリスの部屋に一通の手紙が届く。
使用人の手ではない。
公印もない。
ただ、黒いインクで書かれた上質な羊皮紙。
封を切ると、胸が凍りついた。
「報告が途絶えた。」
「お前が誰に属しているか、忘れたのか。」
「三日以内に、次の戦略案を送れ。」
「さもなくば――裏切り者がどう死ぬか、教えてやろう。」
署名:M・ヴィルモン。
彼女の母。
真実を手に
エミリスは庭園を歩いていた。
手には震える手紙。
頭には、見た地図、聞いた作戦、ハルトの言葉、
そして――暁の王国で聞いた子どもたちの笑い声。
すべてが重い。
エミリス(心の声):
「ただ、いくつかの名前と…道筋を書けばいい。」
「それだけで“任務達成”。」
でも、ふと思う――
「それで私は…何になるの?」
焔の前で
その夜、彼女は「夕陽の間」へ向かう。
魔法の火鉢が灯る、監視のない静かな部屋。
机の上には:
インク壺。
清らかな羊皮紙。
母からの手紙。
ヴィルモン家の魔法の印章。
彼女は腰を下ろし、ペンを手に取る。
エミリス(ささやくように):
――また一つの裏切りか…
でも――誰への?
そのとき、背後に気配を感じる。
カオリだった。
言葉はない。
ただ、彼女を見ていた。
カオリ:
――誰も見張ってなんかいないわよ。
――売るつもりなら、さっさとやればいい。
でも、ここに残るなら――
カオリ(腕を組んで):
――“恐れて”じゃなく、“選んで”残って。
沈黙。
そして、カオリは立ち去る。
選択
エミリスは炎を見つめる。
母の手紙を手に取り…
火鉢へと落とした。
紙が焼け、印章が溶け、
その瞬間、帰る道は永遠に閉ざされた。
エミリス(静かに):
――もし私が死ぬなら…
信じたもののために、死にたい。
その後――
誰もいない部屋で、エミリスは新たな手紙を書く。
それは母へのものでも、
帝国への報告でもない。
「私は、ここに残ることを選んだ。」
「もし――あなたたちが彼を奪いに来るなら…」
「私は、その前に立つ。」
そして彼女は、生まれて初めてその名をこう記す。
暁のエミリス




