二つの世界の貴婦人
帝国は姓を与える。
だが、自らの決断だけが――名を与える。
街に広がる噂
エミリスが「外交巡行」の一環として市民区を訪れていたその時、東地区の通りで魔法の爆発が起こる。
禁じられた起爆のグリフが、エネルギー源の近くで起動されたのだ。
人々は逃げ惑い、悲鳴が響く。
一人の少年が、転覆した荷車の下に閉じ込められ、魔力の火花に囲まれている。
エミリスは考えるよりも先に動く。
エミリス:
――下がって!
帝国貴族しか知らぬはずの術式で魔法を解除する。
煙の中を駆け抜け、
少年を引き寄せる。
彼女のドレスは焼け焦げる。
少年は泣いている…だが、無事だ。
その代償
目を開けると…
モモチが屋根の上から彼女を見下ろしている。
モモチ:
――そのルーンを無効化できるのは、帝国の者だけ。
――お前はあの国のスパイか…それとも、裏切り者か?
エミリス(息を切らしながら):
――もしかしたら…私はただの人間よ。
沈黙。
モモチ(跳び降りながら):
――見ていた。
迷いはなかった。
――真のスパイは…子供を救ったりはしない。
疑念の目覚め
暁の宮殿で、ハルトは報告を受ける。
カオリは厳しい顔つき。
モモチは沈思する。
カオリ:
――彼女は偽装を破った。
帝国の者が任務を捨ててまで子供を救うなど、あり得ない。
ハルト:
――つまり、味方として来たわけではないが…
敵として帰るとも限らない。
日記と傷
その夜、エミリスは鏡の前で魔法の傷を癒やしていた。
日記を取り出し、震える手で書き始める。
「今日、ある少年が私の名を叫んだ。」
「彼は私を『スパイ』とは呼ばなかった。
『お姉さん』と呼び、抱きついてきた。」
「初めて思った…
……帰りたくないと。」
窓辺から、モモチは彼女を静かに見つめている。
モモチ(心の声):
「もしかして…彼女も仮面をかぶらされてきたのかもしれない。」
「見張るべきだ…だが、剣ではなく。」
この章で、エミリスが初めて自分の意思で決断を下したことに心動かされた?
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