異国の地に咲く花
Émilise Viremont、黎明王国の土を踏む――そして、
その心に何かが…芽生えはじめる。
「影で育った者は――
光を知らない。
だが光を見たとき、
それは眩しくて…痛い。」
◆ 王国への入場
黎明の都・シタデルの大門が静かに開く。
黄金の街路が、異国の使者を迎え入れる。
エミリス・ヴィルモンは、帝国の外套をまとい、
魔術監視の護衛とともに第一歩を踏み出す。
だが、彼女の目に映ったのは――
壮麗さではなく、**“恐れの欠如”**だった。
「角ごとに兵士はいないの…?」
「なぜ、子どもたちが隠れずに遊んでるの?」
街路は清潔で、
商人たちは怒鳴る代わりに歌う。
貴族が民衆の上に君臨してはいない。
人々が、“自由に”歩いている。
エミリス(心の声):
「これは本当に王国なの?
それとも…
ただの美しい幻?」
◆ 案内人の登場
蒼髪に鋭い眼差し、
姿勢の崩れぬ女性がエミリスを出迎える。
カオリ・ミナセ:
「カオリよ。黎明王国の将軍。
あなたの護衛であり――影でもある。
この国を案内するわ。
……報告書には書けない“現実”も、ね。」
エミリスは連れられて回る。
公立魔法学校:
貴族、魔法使い、農民の子どもたちが、同じ机で学ぶ場所。
治癒院:
治癒師と医師が、無料で誰でも診る施設。
魔具ガチャ施設:
貧しい者でも、運と希望で魔具を手に入れられる場所。
カオリ(横目で):
「炎の道と戦の詩でも期待してた?」
エミリス(わずかに困惑しながら):
「……正直、
“宣伝の舞台”だと思ってた。
でも――
これは、本物のように見える。」
◆ 疑念、芽吹く
その夜。
太陽宮殿の一室。
エミリスは静かに日記を開く。
「今日、公園で義足の少年が走っていた。
聞けば、彼の村はかつて焼かれたが――
今では再建され、彼は“再生の第一の子”と呼ばれている。」
「我が帝国なら、彼は隠されたはず。
でも、ここでは誇りとして語られる。」
「もし、これがすべて偽りだとしても――
……どうして私は、
“信じたくなる”のだろう?」
◆ 思わぬ出会い
月下の宮殿庭園。
池のほとりに、ひとりの影があった。
黒髪に、金の瞳。
威圧ではなく――
静かに、存在そのもので燃える者。
ハルト・アイザワ。
彼は視線を動かさず、言った。
ハルト:
「で、どうだった?
この国は“理想”に足りてるか?
……それとも、もっと演じた方がよかったかな。」
エミリスは一歩、足を止める。
エミリス:
「あなたは――“仮面の悪魔”だと聞きました。」
**「でも、
文字を教える悪魔なんて、聞いたことありません。」
ハルトは、わずかに口元を緩めた。
ハルト:
「使節が“交渉”だけで来るとは限らない。
けれど――
来た者が、心を変えることもある。」
その夜、エミリスの中で、何かが確かに揺れた。
それは任務ではない。
命令でもない。
――ひとつの“芽”だった。
そしてその芽は、
いつか異国の土でも、
静かに、しかし確かに…咲こうとしていた。
その夜、エミリスは眠れなかった。
星々は宮殿の天窓から降り注ぎ、
その光の下で――
帝国の首飾りが、ひとつ…ふたつ…と、ひび割れはじめていた。
魔法で“心”を隠すはずだったその護符は、
静かに、
彼女の“迷い”に呼応していた。
彼女は荷物の中からその首飾りを取り出し、
冷たい月光の下で見つめる。
その手の中で脈打つように、
小さく軋む音を立てながら、
首飾りは――砕けようとしていた。
エミリス(心の声):
「お母様… お父様…
もしこれが全部、“偽り”だとしても――
なぜ私は、こんなにも…
この嘘に、
惹かれてしまうの?」
「私たちの“真実”よりも、
この偽りの方が、どうして…
こんなに美しく見えるの?」
そして、ひび割れた首飾りを、彼女は胸に抱き寄せた。
その夜――
彼女の“心”を守ってきた魔法は、
静かに終わりを迎えようとしていた。
だがそれは、崩壊ではない。
始まりだった。
“自分の目で、見るための旅”が
今――ようやく始まったのだ。




