太陽の鏡(たいようのかがみ)
―ハルトがその治世の下で変わりゆく世界を見つめる―
真の勝利とは…
それは戦場ではなく、
“明日”を恐れなくなった人々の心にこそ宿るもの。
生きた地図の間
ハルトは一人、純光の間にいた。
そこには、王国の情景をリアルタイムで映し出す魔法の遺物――
**暁の鏡**が掛けられている。
彼は右手で呪文を起動させる。
鏡が輝きはじめ――
王国の民の姿が、次々と映し出されていく。
第2部:王国の光景
基礎魔法学校 ― 西地区
農村出身の子どもたちが、読み書きと魔力計算を学んでいる。
教師:
「レベル1のマナ結晶は、いくつの単位を蓄えられますか?」
子ども:
「7つ!満月にまいた種と同じ数!」
子どもたちが笑う。
教室は質素だが、新しい本で満たされている。
中央市場 ― 暁の都
食料の屋台は活気に満ちていた。
空腹の叫びはなく、代わりに笑い声が響く。
売り子:
「甘い麦のパンだよ〜!谷のバターもたっぷり!」
銅貨を握りしめた老婦人がパンを買いながらつぶやく。
老婦人:
「ハルトが来たとき…怖かったよ。
でも今じゃ…孫たちがパンを食べてる。」
職人区 ― 南部の街
かつての奴隷たちが今や鍛冶屋や織工、錬金術師の見習いとして働いている。
若き鍛冶師:
「昔は文字も読めなかった…
でも今は、自分の名を刻んだ刃を打てる。」
錬金術の見習い:
「昔は食うために盗んだ。
今は兵士や恋人たちに薬を売ってる。」
清水の泉 ― 海辺の村
新たに建てられた魔法の泉で、子どもたちが水遊びをしている。
それを見守る老人が、しみじみとつぶやく。
老人:
「前は泥水だった…。
今じゃ、まるで太陽そのものが祝福してるみたいだ。」
鏡はさらに映し出す。
誇らしげな農民たち。
元兵士たちが教師となり、
小さな劇場では――
ハルトに捧げられた詩が朗読されていた。
ハルト(心の声):
「これは、名声のためにやったことじゃない…
…でも――彼らの笑顔を見ると、
戦での勝利よりも…この胸の痛みは、少し和らぐ。」
そこへカオリが、書類の束を持って入ってくる。
カオリ:
「税収も安定しました。
食料も、滞りなく配られています。」
ハルト:
「反乱を起こした貴族たちは?」
カオリ:
「適応した者もいれば――
かつて見下していた畑で、いま土を掘ってる者もいます。」
二人は、どこか通じ合うように微笑んだ。
鏡が映し続けるのは、
ありふれた日々の中に咲く――
ささやかな奇跡の数々。
その光景を背に、
ハルトは静かにその場を離れていく。
ハルト(小さくつぶやく):
「崇められたいわけじゃない。
ただ…
もう二度と、
玉座の前で飢えて死ぬ者が出ませんように。」




